今回紹介する一枚は、大滝詠一の『A LONG VACATION』

大滝詠一といえば2021年3月にストリーミング配信が開始。彼が発表した全177曲が解禁されました。

日本音楽史に多大な影響と功績をのこした彼。中でも1981年リリースの『A LONG VACATION』は、40年が経った今でも「名盤」と称されています。

CDを収集するようになって「やっぱりこれは手元に持っておきたい」と思い購入したのを覚えています。

『A LONG VACATION』とは

1981年3月にリリースされた、大滝詠一のアルバムです。

彼の代表曲である「君は天然色」をはじめ、ハズレなしの名曲10曲が収録されています。

大滝詠一はもちろん、作詞を手掛ける松本隆の名を広く世に知らしめた作品でもあります。
松本隆さんといえば80年代以降、作曲家・筒美京平とのタッグの印象が強いですが(木綿のハンカチーフや、Romanticが止まらない‥)、バンド「はっぴいえんど」から続く「大滝×松本」コンビも負けず劣らずですよね。

また、本アルバムはLPとCDでリリースされたのですが、日本(邦楽)で初めてリリースされたCD作品と言われています。

音楽的にも、リリーススタイル的にも日本の音楽界にとってまさに大きな意味を持つ一作です。

そんな『A LONG VACATION』の収録曲たちを1曲ずつじっっっっくり聴いていこうと思います。

収録曲

1.君は天然色

いわずもがなの名曲。

最近では久米田康治原作のアニメ『かくしごと』のテーマソングにも使われていましたね。選曲の経緯などが気になります。そして良いアニメでした。

あとは、サントリー「金麦」のCMに使われていたり… 
ダイハツ「ムーヴ キキャンバス」のCMでは藤原さくらさんがカヴァーしていますね。

とにかく40年経った今でも、様々な場面で使われていて、聴いたことがない人がいないのではないか…と思ってしまうほどです。

これだけでもこの曲のスゴさがよくわかりますが、曲の中見もしっかり見ていきますよ。

まずはイントロですね。
80年代の名曲は、イントロが魅力的なものが多いですね。

近年ではサブスクが主流になり、その影響から(本当にそうなのかはともかく)イントロの無い曲が人気になったと言われています。というか、イントロがさほど重視されなくなったという感じでしょうか…

とにかく、壮大でキャッチーなイントロというのが当時の音楽を象徴する要素なのです。

そして歌い出し。
なんというか、大滝詠一さんの声っていいですよね。

落ち着いていて、ちょっぴり大人っぽい。 伸びやかなのにちょっと気だるい感じ…

唯一無二であり、何と言っても、日本の歌謡曲、J-POPにマッチした声だと思っています。
結構クセは強い方だと思うんですけどね…惹かれます

そして歌詞が美しいんですけど、著作権的にグレーなのでここでは扱いません。
他の方(アメブロとか)のレビューなんかをご覧ください。

次にサビです。言わずもがなですね。
軽快なドラムス、リズミカルでポップなオケに乗せたシンプルで伸びやかなメロディーがたまりません。

私は、この曲がこれほどまでに歌い継がれている理由は、そのキャッチーさにあると思っています。

楽曲構成は「Aメロ→Aメロ→サビ→Aメロ→サビ→(間奏)→Aメロ→Aメロ→サビ」と、とにかくシンプルです。
少ないメロディーをとにかく繰り返す。そりゃあ耳にも残りますよ。

Bメロも無ければ、Cメロもない。とにかく覚えやすい。

名曲の条件は、ひとつに「覚えやすさ」があると思っています。近年は音楽の複雑化が進みそういった人気曲もたくさん出てきました(King Gnuとかね)。
それでも、”広い世代”に”歌い継がれる”名曲というのはやっぱり「わかりやすいメロディー」がひとつのキーなのではないでしょうか(髭男の「Pretender」とかね)。

従来の歌謡曲やフォークソングに、海外的なポップなエッセンスを加えたこの音楽。

「君は天然色」は、日本人のDNAに響く色褪せない名曲です。

2.Velvet Motel

ノスタルジックなサウンドのイントロが印象的な2曲目。

英語ではじまるオシャレな歌詞も素敵です。

大滝詠一…そしてこの「ロンバケ」は’80sシティーポップの代表作として取り上げられることが多いと思うのですが、そのひとつの所以がこの曲だと思います。

きらびやかなサウンドと、洗練された都会的でディープな雰囲気が、いわゆる「シティーポップ」らしいです。

荒井由実とかSUGAR BABEとか…70年代のオシャレポップスを彼なりに昇華させた一曲かなぁなんて思います。

あとはタイトルですね。

「ベルベット」「モーテル」という、なんとなくシティーポップなワード。

月明かりに照らされた、ちょっとゆったりとした空間が目に浮かびます。

モーテルって、日本だと馴染みがないですよね。
街道沿いの低層の宿泊施設ですよね…イメージ的には。

近年人気のシティポップバンド・never young beachにも「motel」という曲があるんですけど、勝手なイメージでは…

海沿いの、ヤシの木が並ぶ長~い一本道沿いにある、ちょっと小さめの2階建てくらいの宿…って感じなんです、モーテル。
(たぶんロンバケのジャケットアートに引っ張られている)

そんなわけで、なんか「海外」な雰囲気を醸し出してる曲です(雑)

3.カナリア諸島にて

南国を思わせる爽やかなアレンジが心地よい本曲。

先ほどのVelvet Motelもそうなんですけど、ジャケットの影響あってか「南国」な印象の曲が多いです。

南国というか、夏? しかも海外の。

シティポップにとって夏という季節は切っても切り離せない存在ですよね。
海沿いをドライブしながら聴きたいです(でも日本海は違う気がする)

この曲のタイトルにもなっている「カナリア諸島」ですが、どうやら北西アフリカ…つまり北大西洋にあるみたいですね。

…なんだろう、イメージ的にはアメリカ西海岸か地中海だったなぁ…

地中海と中米を足して2で割ったくらいの感じでしょうか? ちょっと行ってみたい。

さて、この曲の一番の聴きどころは、やはりサビでしょう。

シンプルなメロディーを歌い上げる大滝詠一のゆったりとして気だるい声が、心地よい。

当時はこの言葉が使われることは、あんまりなかったんじゃないかと思うのですが…
いわゆる「CILL」ですね。

never young beach(本日2回目)とか、Yogee New Waveみたいな、現代にも続く一つの「夏の歌い方」といった感じがします。

4.Pap-pi-doo-bi-doo-ba物語

前2曲とは打って変わって、イケイケでノリノリなナンバー。

この曲の作詞は、松本さんではなく…大滝詠一さんご本人です。

なんというか、大滝さんらしい歌詞といった感じがします。

英語と日本語の境目がわからないような、エキゾチックでグルーヴ感強めな歌い方もしびれます。

また、アレンジ面でも結構”攻めてる”というか、尖っているというか…
ちょっとゴチャっとした感じが、より一層楽しいですよね。

シンプルなバンドサウンドも良いけど、J-POPらしさあふれるゴチャゴチャしたアレンジも好きです。
なんだろう…ピチカートとか、ヒャダインとか…

バンド・はっぴいえんど時代はシンプルなアレンジが多かったので、ここがソロの一番の特徴かなぁという気がします。

あとは、ベースラインがカッコいいです、ファンキーな感じで。
ベースというくらいですから、楽曲の下地的な意味が大きいですが、使い方次第では良いアクセントにもなりますよね。
結構、可能性に富んだ楽器だと思います。

個人的に、このアルバムで一番好きな曲です…いや、やっぱり選べない。

5.我が心のピンボール

陽気なポップミュージックから、少し変わってロックなナンバー。

エレキギターの音色が、少々暑苦しい。
…というかボーカルが暑苦しい。

同じ南国でも炎天下の雰囲気です。ギラギラしてますね。

この曲の歌い方、ちょっと「はっぴいえんど」っぽくないですか?

高音への上がり方とか、アクセントが強めでちょっとぶっきらぼうな感じとか…

ボーカリスト・大滝詠一の、凄さはやっぱり表現力とリズム感ですよね。
このアルバムは全体的に結構アレンジが強烈だと思うんですけど、それに負けないパワーがあります。

個人的に彼の裏声が好きなんですよ。地声のちょっと渋い感じとはまた違う味わいがあります。

歌に関して言うと、前曲とこの曲で顕著なのが、アクセントの置き方と発音ですね。
なんというか、「子音」が強い

しっかり発音する音とそうでない音の強弱が大きい気がします。
だから英語っぽく(というか日本語じゃない感じ)に聴こえるのかな?

6.雨のウェンズデイ

ちょっと歌謡曲っぽい6曲目。
レコード的にいうと、B面の1曲目ですね。

サウンドとか、メロディーとか…すべてにおいてちょっと懐かしい感じがします。

そして、非常に日本的な楽曲だと思います。言葉の入れ方とか、音数とか…
多分ですけど、松本さんも結構意識しているんじゃないかなぁという気がします。

前半は結構洋楽的なエッセンスが多かったので。やっぱり落ち着きますよ、日本人的には。
なんとも馴染み深い。

それに伴ってか、歌い方も比較的シンプルで、一つ一つの言葉を丁寧に発音している印象を受けます。

この感じは、槇原敬之さんとか、スピッツ、BUMP OF CHICKINなんかが近いかもしれません。

個人的にはサウンドなんかよりも、メロディーに対する言葉の当てはめ方というものが、日本っぽさ・海外っぽさを決める一番の指標になるのではないかなぁと思っています…なんて。

ところで「曜日」を歌った曲って他にもいろいろありますけど、何曜日の歌が一番多いんですかね?
やっぱり日曜日かな?

週末には楽しいイメージがありますけど、個人的には水曜日にはなんともいえない、ちょっとネガティブな印象を受けます。
なんだろう…「中だるみ」というやつでしょうか?

7.スピーチ・バルーン

ゆったりとした楽曲が続きます。

雨のウェンズデイ同様、歌謡曲的な印象が強いです。なんなら演歌…?

そう、これはまさに「バンドサウンドの演歌」

柔らかい歌声が心地よいですね。

あとは、特徴として「コーラス」があります。コーラスというかスキャット…?

これが歌謡曲っぽさの一因だと思います。
歌謡曲というか、フォークミュージックというか…

山下達郎の「クリスマス・イブ」なんかもそうかもしれません。
あれはクリスマスということもあって、賛美歌的な印象を受けますが…

意外と賛美歌と歌謡曲(あるいは、童謡)の相性っていい気がするんですよね…

バンドサウンドのポップスにスキャットを乗せるというやり方が、両者に共通する味かなぁ、なんて思ったりします。「おやすみ、ロージー」とか良いですよね。

ルーツとしては、どこになるんでしょうか?

8.恋するカレン

聴き馴染みのあるイントロで始まるこの曲。
大滝詠一の代表曲のひとつでしょうか?

きらびやかなピアノのサウンドと、リバーブ強めのドラムが…なんとも80年代らしい!

この曲のアレンジに影響を受けている楽曲って少なくないと思うんですよ。
メロディーとか、歌詞とかも間違いなく良いんですけど、アレンジの曲といった印象です。

なんというか、空間の広さを感じさせますよね。
ボーカル含めて非常に伸びやかで、開放的です。

「君は天然色」といい、この曲といい、やっぱり大滝詠一ってこの開放的で色鮮やかで「豊か」な感じが良いですよね。

都会的でスタイリッシュな感じと、のびのびとしたカジュアルさ、みたいなところのバランスが丁度いい。
なんですかね…「キレイめカジュアル」というか、着心地は良いけどだらしなく見えないというか…

シティーポップって洗練された都会感の中にある、ちょっとした「ラフさ」みたいなところが魅力だと思うんですよね。

9.FUN×4

「スタイリッシュ×カジュアル」が顕著なのがこの曲。

…まぁ、どちらかというとカジュアルが勝っていますが。

いわゆる「四打ち」のダンサブルな楽曲なんですけど、なんかゆる~い雰囲気

まったくもってイケイケな感じがしないというか…
なんか、その辺の大学生が適当にフラフラ踊ってる感じがします。

気だるい感じとか、気の抜けた感じのダンスナンバーというと…個人的には相対性理論なんかを思い浮かべます。あとは、サニーデイ・サービスの「青春狂走曲」とか…

この路線の草分けとなったのが実はこの曲なのかもなぁなんて思いつつも、あんまり適当なことは言えませんね…
あ、ビートルズの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」とかかな?

この曲もスキャットが魅力的ですね。ひらがなで「どぅびどぅび」なイメージです。

最近も四打ちの曲が流行ってますが、まぁなんと真逆な…
四打ちってシンプルなビートですけど、けっこう無限の可能性がありますね。

この曲も本作の中のお気に入り楽曲です。まぁ、全部好きなんですけど。

10.さらばシベリア鉄道

前曲とは一転、クールでスタイリッシュなイントロがかっこいいこの曲。

アルバムの最後を飾る、名曲ですね

もとは太田裕美さんに提供した曲で、セルフカバーという位置づけです。
太田さんバージョンも良いですね~。彼女の歌声と案外合っているんですよ。聴いたことがない方は是非お聴きになって下さい。

アルバムを通じて「夏」っぽい曲が多いこのアルバムですが、この曲は冷たい…というか極寒な感じがします。「シベリア」ですし…

歌詞も動的というか、せわしない印象ですね。

日本国内でもそうなんですけど、北に行けば行くほど、音楽も激しくなる…といいますか…
わかりやすいのが、沖縄の「三線」と青森の「津軽三味線」でしょうか?

なんですかね…過酷な環境だから、たくましく育つのかな…
料理の味付けも、北日本は塩辛いイメージです。九州の醤油とか甘いですよね、旅行に行ってお刺身を食べたとき驚きました(なんの話だ)

前曲から雰囲気がガラッと変わることから、おまけというとぞんざいな感じがしますが、エクストラトラックというか、アンコールというか…そういった印象です。

実際、このアルバムは「1~9曲目+この曲」という構成を意図的に行っているんですよね。
だから、「FUN×4」の最後に「拍手」があるわけです。

ということは、やっぱりアンコール…?

放課後ティータイムⅡ』の記事でも書いたんですけど、私はこういった「流れ」を意識したアルバムが好きです。やっぱり一枚通しての作品ですからね。

総括

以上、今回は大滝詠一『A LONG VACATION』の10曲を見ていきました。

このアルバムは、J-POP史における特別な一枚ですよね。存在感があります。

なんといっても、リリースから40年以上経った今聴いても、まったく古臭い感じがしない。
近年のブームからもわかるように、80年代シティポップの魅力は薄れることを知りません。

むしろ80年代というきらびやかな時代に対する「憧れ」が、より鮮やかな存在にしています。
音楽の流行りは変わっていくものですが、「良い音楽」は何年たっても良い音楽であり続けるのだと思います。

音楽を聴く上で古い、新しいはそんなに重要ではない気がします。
好きな音楽を聴く、それが一番ですよね。

というわけで、今回はここまで。
次は何を聴こうかな。

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