なぜ若者の間でシティポップが流行っているのか”若者”が考えてみた【音楽語り】

音楽語り

近年、日本の若者の間で「大滝詠一」や「山下達郎」といった80年代シティポップが流行し、世界的にも再注目されています。

※大滝詠一さんは、サブスク解禁でも話題になりましたね!

ちまたの情報番組では、このブームが「なぜシティポップが若者の間でブームになっているのか?!」と驚くべきことであるかのように扱われているのです。

しかし、私はこの「令和のシティポップブーム」は、十分起こりえたことであろうと、感じています。

それでは、なぜ令和の時代に80年代シティポップが流行しているのか。
また、どうして私がこのブームを「妥当」と感じているのか。

これについて少し考えてみたいと思います。

0.「シティポップ」って?

そもそもシティポップとはどのような音楽を指すのでしょうか。

代表的なアーティストといえば大滝詠一や山下達郎、荒井由実(松任谷由実)…などでしょうか。

「シティポップ」は和製英語で、その音楽ジャンル自体も日本独自のものです。

その原型は当時、海外から持ち込まれ日本独自の発展を遂げつつあったロックやフォークミュージックだと言われています。

代表格は60年代後半に登場したバンド「はっぴいえんど」です。海外から来た音楽を、日本語で、日本らしくアレンジしたその新しい音楽は、後に大きな影響を与えました。

それまでに存在していたロックやフォークから、より「都会的」で「オシャレ」な要素を強めた日本独自のニューミュージックこそが「シティポップ」なのです。

また、「オシャレ」さを演出するために取り入れられたのが、ファンクやジャズなどのいわゆる「ブラックミュージック」です

そのためシティポップの楽曲ではカッティングギターが用いられることが多々あります。
代表的なものといえば、山下達郎の「SPARKLE」ですね。

シティポップという音楽ジャンルは定義が曖昧です

が、「シティポップ」と呼ばれる音楽はどれも、都会的で大人びた雰囲気を味わうことが出来ます。

1.令和、それは空前のオシャレブーム

「シティポップとは何か」と訊かれると答えに困ります。上で述べたようにシティポップの定義は非常に曖昧です。

ただ、そのすべてに共通するのが「オシャレ」であること。

そして、令和で流行りの音楽、つまり「令和のJ-POP」

「髭男」に「米津玄師」、「YOASOBI」、「King Gnu」…

どれも、オシャレじゃないですか??

ちなみに今から10年前に流行した音楽は…

「AKB48」、「GReeeeN」、「ファンモン」、「EXILE」…あたりでしょうか。

あれ?やっぱり、今流行ってる音楽って、オシャレじゃない???
10年前に比べると、落ち着いていて、大人っぽい曲が流行っている気がします

もちろん10年前だって、オシャレな楽曲はたくさんありましたよ?
「相対性理論」とか「cero」とか…

彼らが若者からも評価されていたのは間違いありません。

ただ、今の「オシャレJ-POP」ように「誰もが聴く、誰もが知っている音楽」であったかと言われると、そうではなかったと思います。

これらのオシャレバンドは「オシャレな曲が好きな奴が聴く音楽」でしかなかったのです。

こう考えると、日本の「大衆音楽」が、格段に(一時的かもしれませんが)オシャレ化しているのです。

つまり、令和は「オシャレな音楽が流行る時代」なのです!!

2.J-POPはなぜオシャレ化したのか

2.1.このオシャレ、どこから?

それでは、なぜJ-POPのオシャレ化が進んだのでしょうか。

そもそもこのオシャレな音楽たちはどこから来たのでしょう?

このオシャレブームをもたらしたと思われる要素について、私なりに2つ考えてみました。

ひとつは、「ネオ渋谷系」の存在。

もうひとつは「ロックの多様化」です。

これらについて、私なりの考えを書いていきます。

2.2.最先端カルチャー「ネオ渋谷系」

「若者の街」と聞いて思い浮かべる場所と言えばどこでしょう?

原宿、表参道… そう、「渋谷」!!

渋谷と言えば、90年代には「渋谷系」と呼ばれる音楽が若者の間で流行しました。

2.2.1「渋谷系」とは?

「渋谷系」とは、90年代に若者の間で流行した音楽ジャンル。

代表的なアーティストに「フリッパーズ・ギター」「ピチカートファイブ」などがいます。

フリッパーズ・ギターは、小山田圭吾小沢健二を中心としたギターポップユニットです。

小沢健二さんは近年日本での活動を再開し再注目され、小山田さんは「コーネリアス」として長く日本の音楽シーンを盛り上げています。

また、ピチカートファイブの小西康陽さんは「慎吾ママのおはロック」など、グループ解散後にも沢山の名曲を世に送り出しています。

彼らに影響を受けたミュージシャンは多く、「渋谷系」という呼び方がされなくなった今でも、その音楽性は強く受け継がれています。

2.2.2「渋谷系」を継ぐものたち

2000年代には、渋谷系に影響を受けたミュージシャンが数多く登場し、今の音楽シーンを支えています。

3ピースバンド「Cymbals」のボーカル・土岐麻子さんはCMソングや、アニメのオープニングなどを担当し、
ベーシストの沖井礼二さんは現在「TWEEDEES」や「RYUTist」の楽曲プロデュースをしています。

※土岐麻子さんについてはコチラの記事もチェック!!

また、「ももクロ」のプロデュースなどで知られる「ヒャダイン」こと前山田健一さんは、ピチカートファイブから強い影響を受けており、AppleMusicには『とても陽気なピチカート・ファイヴSelected byヒャダイン』というプレイリストも存在しています。

ここで私が注目するのは、ゲーム音楽界です。

2001年にナムコ「太鼓の達人」が登場し、「音ゲー」が浸透するきっかけとなりました。

「太鼓の達人」は非常に大衆的で、人気アーティストの楽曲でプレイできるのが魅了でしょう。

しかし、人気の秘訣は豊富なオリジナル楽曲にもあると思っています。
太鼓の達人のオリジナル楽曲って、とにかく個性的で中毒性が高いんですよね。

そして、2000年代のナムコのサウンドクリエイターは、渋谷系の系譜を引く方が多いように感じます

その代表ともいえるのが「ことばのパズルもじぴったん」の音楽を担当した神前暁(こうさきさとる)さん。

神前暁さんと言えば、『涼宮ハルヒの憂鬱』の「God knows…」や『<物語>シリーズ』の楽曲で知られる、2000年代以降のアニソン界を牽引する一流音楽家ですよね。

本作「もじぴったん」は彼の出世作であり、同作のテーマソング「ふたりのもじぴったん」は初期の代表曲と言えるでしょう。

「ふたりのもじぴったん」をはじめ、「わーずわーずの魔法」「クッキー&クリーム」など、「もじぴったん」のBGMは渋谷系の要素を取り入れた楽曲群が目立ちます(ピチカートやカジヒデキなカンジですかね)。

神前さんを筆頭に、田中秀和さん(アイドルマスター他)や広川恵一さん(Wake Up, Girls!他)などの「MONACA」が手掛ける複雑かつオシャレでポップなサウンドは、渋谷系の血を引きつつ独自の進化を遂げ現在のゲーム・アニメ音楽業界に多大な影響を与え続けています。

2.2.3「KAWAII」の立役者

また、「渋谷系」を語る上で外せないアーティストがもう一人。

それは、「ふたりのもじぴったん」のアレンジも手掛た名プロデューサー・中田ヤスタカさんです。

彼は2000年代に「ネオ渋谷系」ミュージシャンとして音楽シーンに登場し、「capsule」「Perfume」「きゃりーぱみゅぱみゅ」を世に送り出しました。

彼の作る、従来の渋谷系ミュージックをより近未来的に昇華させた、いわゆる「KAWAII」サウンドは、日本国内のみならず世界中で絶大な支持を得ています。

近年では「フューチャーベース」「KAWAIIベース」として、Snail’s houseさんや、Yunomiさんなどのミュージシャンが登場し共に盛り上げている印象です。
HipHopやEDMなんかとも相性が良い気がしますね(というかHipHopの1ジャンル?)。

また、この辺りの音楽はポップアートやカートゥーンとの親和性も良く、アートワークも含めて「KAWAII」という文化が構成されていると思います
漂うサブカル感が、ジャパニーズ・カルチャーを感じさせてくれます。

そんなわけで、80年代に流行した「シティポップ」は、90年代以降「渋谷系」として姿かたちを変えながら若者のカルチャ―を支えてきたのです。
「オシャレな音楽」は、いつの時代も若者とともにあるんですね。

近年の渋谷系ムーヴメントについてはコチラでも!

2.3.ミクスチャーロックの台頭

「はっぴいえんど」や「キャロル」などが登場した70年代以降、日本には数多くのロックミュージシャンが日本の音楽を支えてきました。

THE BLUE HEARTSやユニコーンなどのバンドが流行した(いわゆるバンドブームと呼ばれた)80年代。
スピッツやミスチルなどより大衆的で馴染みやすいポップなロックバンドが人気を博した90年代。
ナンバーガールやハイスタなど、フェスやライブで活躍するシンプルなロックやパンクが流行った2000年前後。

2000年代は、アジカンやバンプなどの国民的ロックバンドが登場したり、モンパチ、エルレなどのメロコアブームがありましたね。

では、現在、具体的には2010年代以降のJ-ロックの特徴はなんでしょうか。

ここでキーとなるのが「ミクスチャーロック」というワードです。

「ミクスチャーロック」とはその名の通り「融合したロック」という意味で、HipHopやジャズなどの音楽とロックミュージックを混ぜ合わせたような音楽のことを指します。

90年代のオルタナティブロックの流行を受け、2000年以降のロックはよりバラエティーに富んだものが主流となってきました
この辺のムーブメントが「日本のロックは死んだ」なんて言われる原因だったりもするのでしょうが…

なにはともあれ、ロックはより複雑化し、それでいて自由度の高いものになっていったわけです。

2010年代には、それを体現する代表的なバンドがいくつか登場しました。

2.3.1.ダンスミュージック×ロック

2010年代に入り「EDM」という言葉をよく耳にするようになった印象があります。「エレクトリック・ダンス・ミュージック」ですね。

海外のダンサブルなHipHopやハウスミュージックを総称してそう呼んでいる、といった感じでしょうか。

とにかく、ダンスミュージックを聴く人が非常に多い。というか、HipHopが大流行しているイメージがありますね。ノリの良さが今の若者には刺さるのでしょうか??

技術の向上やハイレゾの登場により、「音質」にこだわる人が多くなったのも理由の一つかもしれません。
HipHop…というか電子音楽はそこに重きを置いたものが非常に多いからです。

さて、そんな中で瞬く間に人気アーティストの地位を獲得したのが、我らが北海道出身のバンド「サカナクション」です。
サカナクションはエレクトリックなダンスミュージックを得意とするロックバンドです。

そう、サカナクションはロックバンドです。彼らのやっていることって極めてロックなんですよね(語彙力)。

基本的には電子音が中心の、EDM要素の強い音楽ですが、その中でバンドのアナログなサウンドが光ります。
バンドサウンドの良いところを残したまま、時代を先どるかのような新鮮な音楽が魅力的です。

ダンサブルなロックというのは前から存在していますが(TRICERATOPSとかアジカンとか)、現代的なサウンドが新しい。今の時代だからこそ生まれたニュースタイルのロックという感じがします。

そして、サカナクションの魅力といえばそのオシャレさですよね。
どこがオシャレかというと、何度も言うようにその洗練された「サウンド」がオシャレなのですが…
同時に、楽曲自体の構成とかメロディーにもオシャレさを感じます。

最小限の楽器編成によるバンドサウンド、シンプルで力強いコード進行やベースライン…
ロックは基本的に、シンプルな構成が一般的なんですよね。

対するサカナクションは、様々な楽器を用いたバラエティに富んだサウンドに、複雑なコード進行や曲の構成。
でもやっぱり、根本的な部分にはロックの要素もあって…

非常にユニークなんですよね。それでいて現在のメインストリームの存在であるというのが面白い。

2.3.2.日本的プログレッシブロック

サカナクションとともに、現在の音楽シーンに多大な影響を与えているのが「ゲスの極み乙女。」

ゲスの極み乙女。といえば、ボーカル・川谷絵音を中心とした4人組バンドです。

ジャズやファンク、クラシックなど、様々な要素を取り入れた実験的でありながらポップな音楽が特徴ですが、
その根源たる音楽は、やはり「ロック」だと思います。

彼らは基本的に4人編成のバンドサウンドを軸としていますしね。
その演奏のハイレベルさから4人とは思えない非常に密度の濃いサウンドとなっているわけですが…

実験的でクラシックなロックは「プログレ=プログレッシブロック」と呼ばれたりもしますね。
ピンク・フロイドキング・クリムゾンなんかが有名です(日本だと…ゴダイゴ???)。

そういう意味では、ゲスの極み乙女。(略し方がわからない…ゲス乙女かな?)も「プログレ」なのでしょうが、従来のプログレと比べて彼らの新しいところはやはり…

その日本らしさでしょう。J-POPらしさ、というか…

彼らの奏でる音楽には、日本の音楽には欠かせない「歌謡曲」や「フォーク」の要素が数多く取り入れられている気がします。
筒美京平さんを思わせる「キャッチーでインパクトの強いイントロ」であったり。

そして、「シティポップ」です。
川谷さんの作る音楽は(主にコード進行に)シティポップの要素が非常に強いと思います。「indigo la End」は尚更ですね。

実験的でマニアックで複雑なことをやっているのですが、そういった日本人が「馴染みやすい」要素がふんだんに取り入れられているのが彼らの人気の秘密な気がします。

2.4.自由さが生み出した複雑さ

以上のように私は、「渋谷系」と「ロックの複雑化」によりJ-POPのオシャレ化が進んだと考えています

ジャズやファンクなどのブラックミュージックと、従来のフォークやロックの要素を掛け合わせる。

その自由で新鮮な音楽は、やがて複雑化を生む

自由な世界では、様々な人が生まれ、様々な解釈が登場し、それがぶつかり合う…そしてそれが基本的には認められます。
これは音楽でも同じというわけですね。

3.現在の音楽シーンを見てみよう

では2021年現在、どのような音楽が流行しているでしょうか。

現在の音楽の流行を、代表的なアーティストとともに今回は3種類に分類してみました。

3.1.ノスタルジックなフォークミュージック

令和のJ-POPシーンの代表的な女性シンガーソングライター・あいみょん

彼女の音楽の魅力はその「馴染みやすさ」でしょうか。

非常にキャッチーなメロディー。シンプルなコード進行。

非常にポピュラーで、王道な音楽といった感じです。それを作れるって本当にすごいことなんですよね。
個性的な音楽っていくらでも作りようがあるんですけど、王道でかつ新しい音楽というのは非常に難しい…

ポップで現代チックなサウンドなので「いまの音楽」という感じがするのですが、メロディーとコード進行だけ見ると、昔ながらのシンプルなフォークやロックという印象を受けます。

それこそ70年代の。

それは今流行しているフォーク系のシンガーやバンドにも共通して言えることだったりもします。

優里であったり、カネコアヤノであったり、Homecomingsであったり…ちょっと前だと秦基博とか高橋優とか…

シンプルでわかりやすい音楽というのは、やっぱり「受け入れられやすい」ですよね。わかりやすいし、歌いやすいし、弾きやすい。「歌ってみた」や「弾いてみた」といった二次創作的な発信が多い現在では尚更です。

3.2.令和版渋谷系

フォークミュージックやシティポップを軸に、ブラックミュージックの要素を取り入れた爽やかな音楽、みたいなもの…それが渋谷系、のようなもの!!

いいんです…音楽は曖昧なのが良いんです

令和の音楽界にも「渋谷系」のような印象をもったアーティストがいます。

まずは星野源さん。
ポップな楽曲が魅力的ですが、結構マニアックですよね。HipHopの要素を取り入れてみたり。ちょっと懐かしさを感じるファンキーなサウンドであったり…

そのサブカル感と、オシャレな音楽…これはもう「渋谷系」と呼んでも良いのではないでしょうか?(個人の見解です)
彼自身、スチャダラパーの影響を受けているなんて言っていたりもしますし。

あとは、Awesome City Clubnever young beachでしょうか??

彼らの音楽も根源には渋谷系であったり、シティポップであったりネオアコであったり…そんな要素がある気がします。近年では両バンドともHipHopの要素が強くなりつつありますが、それも含めてですね

3.3.実験的なポップ・ロック

近年、サカナクションやゲスの極み乙女。のみならず実験的で新しい「ミクスチャーロック」アーティストが数多く登場し、第一線で活躍している印象があります。

例えば米津玄師さん。
彼は、アジカンやバンプなど2000年代のロックに影響を受けたほか、平沢進などのテクノにも影響を受けており、非常に個性的で、それでいてポップな音楽で人気を博していますね。
あれだけ尖った音楽性で、これだけ支持されているというのは本当にすごいことです

あとはYOASOBI、ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。のいわゆる「夜系」アーティスト。
米津さん同様ボカロにルーツを置くグループ達ですが、彼同様、2000年以降のロック(こちらは主にRADWIMPSやゲスの極み乙女。でしょうか)から多大な影響を受けているように感じます。

ピアノを中心としたバンドサウンドにエレクトリックな要素を加えていたり、ブラックミュージック的なコード進行を用いたり… 現在の音楽の1ジャンルといっても良いほどの確立ぶりです。

そして最後に紹介するのが、King Gnu
クラシックの要素を取り入れた、音大出身ならではの実験的で、かつ洗練されたロックが素晴らしいですね。
正直、新しいことをやっていて少々とっつきにくい印象がありましたよ、最初は。

ところが、蓋を開けてみれば案外馴染みやすかったりもするんですよね。代表曲「白日」とかやっぱりすごいですよ。展開が読めないミステリアスな部分もあれば、サビ前から急に馴染みのポップスになったり…

共通して言えるのが、「複雑さ」と「馴染みやすさ」の共存です。絶妙なラインを攻めているからこそ人々の耳に、しっかりと刺さるのでしょうね…すごいなぁ…

4.令和音楽と80’sシティポップの共通点

前述のように、現在の音楽シーンの特徴は、
・「ノスタルジック」な魅力
・新しい「渋谷系」のカタチ
・「複雑さ」と「馴染みやすさ」の共存

がキーワードとなっている気がします。

となると、シティポップの流行ってやっぱり必然な気がしませんか??

80年代の音楽、ということでそれ自体がノスタルジックな魅力でありますし、
渋谷系は元をたどればシティポップをルーツとしています。

また、シンプルで馴染みやすい「歌謡曲」や「フォークソング」をより、都会的でオシャレに複雑化させたものが「シティポップ」なのですから。

つまり、令和で流行りの音楽と80年代のシティポップというのは、
サウンドこそ違えど、聴き手が感じる印象や、イメージ、さらに言うと音楽的なルーツにも通づるモノがあるのです。

令和世代を生き、令和の音楽を聴く、令和の若者にとって、
シティポップは案外、馴染み深いものなのかもしれませんよね…

5.懐古ムーブメントとあの言葉

シティポップの流行は、音楽的なものだけでなく、もっと広い要因があると考えています。

それが「昭和レトロ」ブームです。

フィルムカメラや昔ながらのクリームソーダなど、ここ数年、時代を感じるレトログッズが流行を見せています。

トレンドというのはときに若者が前の世代に「懐かしさ」とともに「新しさ」や「あこがれ」を抱く「懐古」的なブームが発生するものです。
ファッションやアイテム、食べ物など、様々なものが流行ります。もちろん、音楽も。

今回の「シティポップブーム」も言ってしまえば「昭和レトロブーム」の一環であることは間違いないでしょう。

では、この「昭和レトロブーム」がここまで大きなトレンドになっているのはなぜでしょう?

私は、とある一つの言葉の存在がキーになっていると思っています。

その言葉とは、「エモい」です。

「エモい」とは、元来エモーショナルに由来した「何らかの感情が極まったとき」を表す言葉でした。

が、現在では中でも哀愁漂う「ノスタルジック」な魅力を感じたときに使われることが多いです。

そう、フィルムカメラや喫茶店のクリームソーダ…あるいはシティポップ。
これらは”エモい”存在なのです!

この「エモい」という言葉。人によってはあまり良い印象を持たない方もいますよね、それも結構多いですし。
その気持ちも正直分かりますよ。なんかどこか安っぽいというか、簡単に片づけている感じがする、というか…

略語やこういう言葉の流行って、どうしても「表現力の衰退」みたいな印象を受けてしまうんですよね。

…でも、それって本当なんでしょうか??

昔を懐かしむ…懐古的でノスタルジックな感情。
こういったものは昔からあったはずです。

そして、この感情は「得も言われぬ感情」だった。

ところが現在、この感情が「エモい」という言葉で表現可能になったのです

誰もが持っていた、でも言葉で表現できなかった感情…それを誰もが使いやすい短いキャッチーなワードで表現するようにした。
これって相当、表現力が豊かな気がしませんか??

それぞれの言葉がある時代から、それぞれに言葉の解釈がある時代へと変化してきたのかもしれません…

とにかく、この「エモい」というキャッチーでインパクトのあるたった3文字のワードが、「昭和レトロブーム」そして、「シティポップブーム」を大きなものへと発展させていったのではないでしょうか??

6.結論(のようなもの)

以上のように、私は現在の「シティポップブーム」に対して十分起こりえた納得できる現象であると感じています。

もっと言ってしまえば、イマだからこそ起こりえたものなのではないか、と。

「昔を懐かしむ」という考えと、「最先端のカルチャー」という相反した要素によって発生したと思うと面白いものです。
案外、トレンドというのはそういうものだったりするのかもしれませんよね。そんな気もします。

今回は「シティポップ」を中心に「音楽」の流行について考えてみました。

今後はどのような音楽が流行するのでしょうか?
「オシャレ音楽時代」はまだまだ続きそうな予感がしますね。

近頃話題の、藤井風や、MOTOR HOTEL…いわゆる次世代アーティストたちは、どんな音楽シーンを見せてくれるのでしょうか??

また「シティポップ」に影響を受けたレトロかつ斬新な音楽が登場することにも非常に期待しています。楽しみです。

何が起こるかわからない。けれども起こったからにはそれなりの理由がある。
それが流行、そしてカルチャーの魅力なのです。

コメント

  1. バク より:

    ごめん、何だか全然伝わってこない。
    オシャレ化?何がオシャレで何がオシャレじゃないのでしょうか?
    1980年代と平成末期・令和の音楽の違いは、1980年代はメロディー、いろんな楽器の音が、表現がバラエティーがある。グループそれぞれがそれぞれで他とは違う固有の色がある。
    2020年あたりは皆同じ調子のメロディーで短調でそのアーティスト、グループ、バンドのファンたち以外の人たちにとってはみんな似たり寄ったりに聞こえる。

    メロディーは2000年初頭あたりからバラエティ感がなくなってきたが、それでも、まだ歌詞は味わい深いものがあった。
    ところが2020年あたりは、歌詞においても浅いストレートな単純なものが多くなった。

    逆に1980年代より今の音楽シーンの褒めるべきところは、今は1980年代の人たちより平均して音痴の人が少ない、皆そつなく上手に歌う。アイドルでさえも今の方がだいぶマシ。1980年代の
    おニャン子は正直舐めてんのか?ってくらい音痴で今時の小学生より下手な歌であった。他方、個性的なスタイル、すぐ誰だとわかるシンガーが多かった。個性が良い方にも悪いほうにも両極で存在した。
    今はそつなくみんな上手にこなすが、量産型の特徴のない、その時代に消費されていき、20年後には人々の記憶に残らない歌。

    とにかく違いすぎて、若い人はその違いに新鮮さを感じたのでは?

  2. バク より:

    1980年代の歌、曲
    2020年代の歌、曲

    オルゴールにして歌詞無しで聴いたら、
    1980年代の曲の多くは歌詞無しでも、誰のどんな曲かメロディーだけでわかる。

    2020年代の曲の多くはオルゴール化したら、全部とは言わないが多くは似てしまうように思える。

    令和の歌はオシャレなんですね?私はオシャレな歌は各時代にあるんじゃないかと想像します。ただ昭和と共通性は感じません。
    だからこそ新鮮なんじゃないんでしょうか?