2022年、代表作『日常』の続編がスタートし、大注目の漫画家・あらゐけいいち氏。

その裏で2021年からゲッサン、およびYouTubeで始動したのが雨宮さん

月間連載で描かれる、あらゐ先生のニューワールド。

2024年4月、ついに待望の単行本第2巻が発売されました。

以前、第1巻のレビューを上げたので、今回もやっていきます。

ネタバレありとなっていますので、まだ読んでいないという方は
是非ご自身で読んでからコチラの記事をご覧になってください!

高級感のあるハードカバーの特別版も、ポップなイラストがオシャレな通常版も
どっちもいい~

17.不死鳥の如くチャック

HAPPYなコーヒータイム(珈琲オレオレ?)を楽しむ雨宮さん。

しかし、なんと

砂糖と塩を間違えていた!
よく見るとオノマトペも「ソルソルソルソル」となっていますしね。

しまった、とシュガーケースを持って小走りの雨宮さん。

しかし、ここで

テーブルの脚に、足の小指がHIT!!

これはイタイ…

涙を流しながら、浜辺を歩く雨宮さん。

岩礁のイソギンチャクに指をキュッとし、ご満悦。「全部許す」

と、まぁ
一発目からワールド全開。
こと突飛な展開は、CITYを髣髴とさせますね。

それにしても、描き込みが凄い。

日常のミニマル感と、CITYの開放感…どちらのテイストも織り交ぜた、新機軸といった具合。
『雨宮さん』のスタイルが整ってきた感じがします。これは楽しみだ。

18.夢と仕事

高校生のリアルな悩み。それは、「進路」

かつて、日常のゆっこは「エリマキトカゲ」になりたいと語っていましたが…

雨宮さんも、それはまぁ、悩んでいるようで。

好きなことを仕事にする… 世の中のすべての人の憧れです。
が、そう簡単にはいかないもの。

そばがらの枕に頭をうずめる仕事…あったらいいですね。

悩んだ末に辿り着いたのは…

「全ての好きを詰め込んだ『何かを』作り出す仕事」

どころがどっこい、それを目指すにも障壁はたくさん。

お金になるかもわからない、というセリフを
あらゐ先生が言わせるのが、なんとも新鮮。

ちょっと衝撃でしたね。あらゐ先生のメタ的なアプローチ…
タイトルも、ファンタジーには少しアンマッチな「仕事」。

もしかしたら、あらゐ先生にもこういった葛藤があったのかも、あるのかもしれない…

今までの作品ではほぼ見られなかった、心の内が少しだけ見えた気がしました。

この作品、何かが違うぞ。

19.おねーちゃん

新キャラ登場。9つ上のおねーちゃん

実の姉ということではなく、近所に住んでいたおねーちゃん。

昭和を感じるセーラー服とヘアスタイルのおねーちゃん。

おねーちゃんとの、輝かしい日々を切り取ったエピソード。

カラーで描かれた、鮮やかな世界が愛おしい。

雨宮さんのポリシーである「なんか好き」は、
おねーちゃん譲りの価値観だったみたいです。

名前をつけると、自分だけのものじゃなくなる

この考え方、なんか好き。

そんなおねーちゃんの夢は、

“すべての「好き」を詰め込んだ、「なんか」を作る”こと。

雨宮さんはずっとずっとおねーちゃんの背中を追い続けてきたんだろうな…

20.鉄壁の防御

久しぶりの登場、ホーランドロップさん。

高校のクラスメイト、ホーランドロップさん。

秘められた「趣味」を持つ、ホーランドロップさん。

そんな「趣味」に探りを入れる雨宮さん。

両者の関係をまとめると、

ホーランドロップ:
フツーな雨宮さんに憧れている。友達になるためには、自分の癖(へき)を知られてはならない

雨宮さん:
実はホーランドロップと似たような癖を持っているが、ホーランドロップはそれを知らない

とまぁ、こういうわけです。
二人の戦いは、いつまで続くのか。

コミカルな表情が、いいですね。
某水木先生や、某赤塚先生を彷彿とさせるレトロ感。

あらゐ先生の絵柄って、普遍的なポップさがありますよね。

21.オバケの個性

そんな二人のクラスメイト、オバケと天狗のお話。

オバケの布を被った人間と、天狗のお面を被った人間。

メドゥーサや「うさぎびと」が蔓延る「島」の、フツーの人間。

没個性な自分たちを励まし合い、堅い友情で結ばれた二人。

ところがどっこい、

ふいに、オバケは道端の伝説の剣を引き抜き始め!

更にはキングコブラの毒も効かず!

実は体は「はんぺん」で出来ていて!(ハニー黒糖ミルクしば漬け味)

…そう。実はオバケは…オバケの殻を被ったオバケだった!!

やっぱりこの島…へんな奴しかいないのか…?(天狗以外)

個性豊かな仲間に囲まれ、けっこう苦労も多そうだなぁ、天狗。
どんどん彼のことが愛おしく感じられる、そんなエピソードでした。

ちなみに石化すると美少年になります、オバケくん。

22.雨の日

直球なタイトル、「雨の日」。

“大雨と小雨の間くらいの音”

うん、わかる。いいよね。

こんな日に雨宮さんがレコードで流すのが

『People Time』。

サックス奏者のスタン・ゲッツと、ピアニスト、ケニー・バロンの共作アルバム。

雨宮さんは、ジャズが好きなのか…それとも雨の日のジャズが好きなのか。

なんとなく、音楽に対するこだわりも強そう。

あらゐ先生も音楽通のイメージがあります。自作もしますし。
山下達郎のラジオを流しながら作業をする動画が上がっていましたね。

なんだろう、あらゐ先生のキャラクターって、ラジオ好きが多そうですよね。
麻衣とか、わことか。

レコードに、万年筆に…
雨宮さんは、クラシカルなものが好きなんですね。やっぱりラジオ好きそう。

流行にとらわれず、自分の好きな物にじっくり向き合う姿勢、なんとも美しい。

今回はここまで

第2巻の前半を見てきましたが、長くなってきたので一旦ひと区切り。

2巻も変わらずのユーモアあふれる世界観ですが、

おねーちゃんが登場して、雨宮さんの人間性がグッと露わになりましたね。

それと同時に、あらゐ先生の心境も。

勢いのあるギャグが爽快の日常から、
少しドラマチックな、ストーリー漫画チックなCITYを経て

より一層、人間らしさが浮き彫りになった作品ですね。

2巻の後半には、前中後からなる長めのエピソードも2つ収録。

こちらも楽しみに、今日はお開きといたしましょう。

『雨宮さん』と並行して連載中の漫画『日常』。

ついに「11巻」が発売されました!

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1~10巻はコチラ!!

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