2023年5月に、17thアルバム『ひみつスタジオ』をリリースするロックバンド・スピッツ

デビューから30年以上経った今も、活動を休止することもなく、アルバム制作や全国ツアーをコンスタントにこなしています。

ボーカル・草野マサムネが作るポップな楽曲群と、どこか浮世離れした詩的な歌詞が魅力的ですよね。

また、ベテランならではの安定感のある演奏や、気取らない、ハイクオリティーなライブパフォーマンスにも定評があります。

映画やドラマのタイアップ… 常に第一線を走り続ける彼らは、まさに国民的バンド
ベテランながらも、どこか控えめな姿勢も人気のひみつです。

近年では、朝ドラ『なつぞら』や、大人気アニメ『名探偵コナン』の主題歌を手掛ける他、「サブスク」で誰でも手軽に音楽を聴くことができる便利な時代も相まって、新規のファンも多く獲得しています。
「親が好きだから」というのも若者が知る一因になっているみたいですね!

しかし!

いかんせん活動期間が長く、楽曲数も多いため「どれから聴き始めればいいのかわからない!」という方も少なくないはず。

サブスクで聴く場合は「初心者向けのプレイリスト」を聴いてもらえればいいのかな、なんて気もしますが…
音楽ファンとしては、やっぱりアルバムで聴いて欲しい

今回は、スピッツファン歴10年の音楽オタクが、「これからスピッツを聴こうと思っている人」にオススメのアルバムをランキング形式で5枚紹介したいと思います!

「ファンに人気の作品」と「初心者にオススメの作品」は結構違ったりもしますからね。

リリース済みのアルバムは16枚!

2022年までにリリースされた、ナンバリング付きのオリジナルアルバムは全16枚。
その他にスペシャルアルバムが数枚と、シングル集が存在します。

デビュー当時は、短いスパンで多くのアルバムをリリースしていましたが、ここしばらくは「3年に1枚」のペースでの制作を行っていました。
なんでもツアーと楽曲制作を無理なく行うには自然とこのペースになるのだそう…

今回はこの16枚のオリジナルアルバムの中から、「初めて聴くならコレ!」というものを厳選してみました。

番外編『CYCLE HIT』

…と、その前に

「できるだけ知ってる曲がたくさん入っている方が良い!」
「スピッツってどんな曲があるの??」

と、スピッツについてあまり知らない方には…

シングルコレクション『CYCLE HIT』をお聴きいただきたいです。

こちらは、デビュー15周年を記念してリリースされた作品。

デビューシングル「ヒバリのこころ」から、2005年の30thシングル「春の歌」まで。
それまでに発表されたシングルが収録された、スペシャルなアルバムです。

代表曲の「ロビンソン」「チェリー」「空も飛べるはず」「楓」…その他90年代を彩る名曲たちが、もちろん全て収録されていますよ!!

タイトルを知らなくても、「あ、これどっかで聴いたことある!」みたいな曲もあるはず…
何かのテレビ番組とか、親が車で昔流してたとか…

シングルなだけあって、クセの無い耳馴染みの良い曲ばかりなので、普段それほど音楽を聴かないというような人でも楽しめること間違いなしです。

また、スピッツの15年間の「変化」も楽しめるのが良いところ。
変わらない良さが魅力のバンドではありますが、それでも時期によってちょっと毛色が違ったりもします。

個人的には、「夢追い虫」や「惑星のかけら」など、世間のイメージからは乖離したちょっとハードな楽曲を是非聴いていただきたい!

バラエティに富んだ「スピッツ」を味わうことが出来るという点でもオススメです。

ファンとしてはディープな魅力を知って欲しい…なんて思ったりもしますが、「入口」としてはやっぱりベストですね。

ちなみに2017年には、結成30年を記念して、『CYCLE HIT』の第二弾も発売されています。

こちらには、2006年から2017年までのシングルが収録されていますよ。

サウンドやアレンジが「現代的」になっているので、「昔の曲は音の感じが苦手…」という方には一度コチラを試してみて欲しいです。
ちょっと、マニアックな話をすると90年代の作品は「音圧」が低く、今の音楽に比べるとちょっとパンチが弱かったりもするんですよね…

「ロビンソン」「チェリー」レベルの爆発的なヒット曲はないかもしれませんが、成熟した彼らならではの味わい深く深みのある音楽を楽しむことが出来ます。

オススメは、「タイム・トラベル」

実はこの曲、シングルではないんですよね。というかカバー曲です。
元は1978年にリリースされた「原田真二」の楽曲。作詞は、松本隆さん!

原曲もカッコいいんですけど、このカバーも負けていない。
ピアノ主体のポップスを、スピッツらしいギターロックに仕上げたアレンジが魅力的。

原曲を知らなくても楽しめる、そんな一曲だと思います(もちろん原曲も聴いて欲しいです)。

第5位『三日月ロック』(2002)

まず最初に紹介するのは、2002年にリリースされた『三日月ロック』

ファンから絶大な支持を得ている作品ですね。

時期としては、「ロビンソン」や「チェリー」といった絶頂期より少し後…
良くも悪くも、人気が落ち着いてきた頃のアルバムですね。

この作品は、プロデューサーに東京事変のベーシスト・亀田誠治を迎えた初めてのアルバムです。
このタッグは現在も続いており、今のスピッツにとって彼の存在は、無くてはならないものとなりました。

「亀田×スピッツ」の特徴は、力強いサウンドでしょう。

それまでのスピッツは、歌謡曲をベースにしたフォークミュージックのようなアプローチが中心でしたが、彼を迎え入れた後は「ロックバンド」としての姿をより色濃く魅せる方向へと動いていきました。

このアルバムのオススメ楽曲は、27thシングル『水色の街』

ギターのストロークから始まる、静かな出だしが特徴的です。

シンプルで余白のあるバンドサウンドが、なんとも言えない哀愁を醸し出しています。

ラララ~だけで構成されたサビも印象的ですよね。
透き通る歌声がなんとも心地よい。

ゆったりとしたビートの楽曲ではありますが、タイトなドラムやメロディアスなアルペジオが、スピッツらしいロックを演出しています。間違いなく、ロック。

特にライブでの演奏がカッコいいんですよね。静と動が共存する、張り詰める様な独特な空気が痺れるんですよ~

切ないけれど、力強さも兼ね備えた、情緒あふれる一曲です。

他にも、人気曲「夜を駆ける」や、ライブで定番の「エスカルゴ」「けもの道」といった楽曲も収録されています。

このアルバムは…とにかくカッコいい!!

「ロック」と名の付くだけあって、ロックな楽曲が多いですね。

熱く、盛り上がるような曲はもちろん、クールなロックチューンまで…スピッツのカッコいいところを思う存分味わえる1枚です。

20年以上続く亀田さんとの初タッグ作品。
ある意味スピッツの「第二の原点」とも呼べるアルバムですね。

特に「ロックが好き!」という方はきっと気に入ってもらえるのではないでしょうか?

第4位『見っけ』(2019)

次に紹介するのは、2019年にリリースされたアルバム『見っけ』

現時点での最新作ですね。

ブレイクしたのが20年以上も前なので、やっぱりスピッツに対して「昔のバンド」という印象を持たれている方も少なくないと思うんですよね。

これに関しては、まぁ、仕方ないかな…と。

ただ、ひとつ言うとしたら「昔からいるバンド」と呼んであげて欲しいところ!

スピッツは今でもバリバリ現役だし、日々進化しています。

彼らの凄いところは、新曲が出るたびに「この曲いいな」「こんなこともできるのか!」
と、新たな魅力を見せてくれるところです。

そんな、新発見をたくさんくれたのが、この『見っけ』なんですよね~

このアルバムの代表曲といえば、「優しいあの子」

朝ドラ『なつぞら』の主題歌ですね。
この曲でスピッツを知った…というか、「なつぞらの主題歌を歌っているのが、チェリーと同じ人」であるということを知った人も案外多いのかな、と。

ここでバンドの名前を初めて知った、みたいな。

スピッツらしい、可愛らしくポップな楽曲ですね。
夏の空が似合う、開放感のある爽やかなナンバーです。

50代のおじさんたちの曲とは思えない、透明感だ…

他のオススメ曲は…「YM71D」とかですかね。

スピッツとしては珍しい、ファンキーな楽曲。
とにかくゴキゲンで踊れるリズムと、スピッツらしい柔らかで心地よいサウンドが、独特なオーラを醸し出しています。

やっぱり、ファンとしてはいつだって「最新作」を聴いて欲しい

「最近の曲で好きになったとか」「昔はたまに聴いてたけど、今はどんな感じなの?」とか…

「今のスピッツ」に興味がある方には、この『見っけ』がオススメですね。

第3位『とげまる』(2010)

3枚目に紹介するのは、2010年発売の『とげまる』

ひょっとすると、ちょっとマニアックかもしれません

ファンの方からしても「え?とげまる??」といった感じでしょうね。

でもその一方で、「あぁ!とげまるか~!確かにね」とも思ってくれているはず。

さて、この作品…

個人的には、いちばん初心者に向いているのではないか、なんて思ったりも。

その前に
私が、どういった基準で選んでいるかというと…

①スピッツというバンドがどういったバンドか知らない人でも魅力に気付ける
②スピッツがどんなバンドかを知ってもらうことができる

この2点です。

そして、『とげまる』はこの2つにとてもよく当てはまる作品なのでは…と。

実は本作は、「シングル曲がもっとも多く収録されているアルバム」なんですよね。

シングル曲は、ある種、バンドの「表の顔」というか、名刺的な部分があるので…
スピッツを知らない人でも聴きやすい、いわば「親切な音楽」なのです。

というわけで、とげまるは非常に親切です。
「スピッツの音楽」というのをわかりやすく、丁寧に教えてくれます。

その一方で、アルバム曲は個性的なナンバーが並んでいます。

「こんな曲はどう?」「じゃあ、こういうのは?」と。

シングル曲はもちろん、アルバム曲に関しても、絶対に刺さる曲が1つはあるだろうという、スキのないラインナップですね。

オススメは、「シロクマ」

癒しソングです。素朴で、それでいて壮大な歌詞が、シンプルなバンドサウンドによく合います。

あまり、名の知れた作品ではありませんが、是非聴いていただきたい一枚です。
「スピッツ」というのがどのようなミュージシャンなのか、というのをじっくり体感することが出来ますよ。

第2位『さざなみCD』(2007)

第2位は、またも2000年代の作品から。

2007年にリリースされた12thアルバム『さざなみCD』です。

上述の『三日月ロック』から続く「亀田×スピッツ」における、ひとつの到達点のような一枚。

スピッツの「ロック」な一面と「ポップ」な面の両方を追求した本作は、スピッツ史上最高レベルのバラエティに富んだ作品となっています。

シンプルなバンドサウンドを基軸としながらも、アクセントとしてシンセやエフェクトを用いたボリューミーなアレンジが、ポピュラーミュージックとしての馴染みの良さを生んでいます。

この辺は、スピッツ4人とプロデューサー・亀田誠治が培った、センスの賜物と言えるかもしれません。
そしてこのアプローチは、以降の「スピッツ」というバンドのひとつの特徴となっているのかなぁ、と思ったり。

「さざなみ」の名の通り、収録されている楽曲はどれも、初夏の海辺のような爽やかさを感じられるものばかり。
この「爽やか」というのも、以降の「スピッツ」には欠かせないキーワードです。
バンドサウンドが、草野さんの歌声が作り出す爽やかなロックミュージックは、ひとつの「スピッツらしさ」とも言えるでしょう。

このアルバムの代表曲といえば、「魔法のコトバ」
爽やかで、素朴なラブソングです。温かいサウンドと歌詞が心地よい。
ライブでの力強い演奏もギャップを感じられて素敵です。

個人的にオススメなのは、「桃」という曲。
ファンの間で人気の楽曲ですね。印象的なイントロのフレーズと、みずみずしいポップなサウンドがなんともフレッシュ!

『さざなみCD』はですね…本当にハズレが無い。

王道ポップスはもちろん、激しい楽曲や、ゆったりとしたバラードまで、さまざまなスピッツを味わえる、非常に満足感の高いアルバムですよ!

『さざなみCD』についてはコチラでレビュー記事も上げています。あわせてどうぞ

第1位『ハチミツ』(1995)

1位はやっぱりコチラですかね~

1995年にリリースされた、『ハチミツ』!!

これは、誰もが認める名盤ですね。

ファンによって「好きな1枚」っていうのはそれぞれ違ってくるかもしれませんが、
スピッツの「代表作」として1枚選ぶなら? と訊かれたら『ハチミツ』を選ぶ方は多いはずです。

「定番」ってやつですね。

レストランだと「オススメと定番は違う」…なんて言ったりしますけど、
このアルバムに関しては、「定番」だし、「人気」だし、「オススメ」です。間違いない。

発売当時の人気や、売上を無視したとしても、やっぱりこのアルバムは良いアルバムですよ。

理由は色々ありますが…

なんといっても「ロビンソン」が収録されていますからね。

その他にも、代表曲の1つである「涙がキラリ☆」や、ファンに大人気の「愛のことば」などが入っています。

この時期のスピッツには、今とは違う魅力がありますね。
フォークや歌謡曲の要素が強く、どこか「懐かしい」感じ。

それは、今聴くから…というわけではないんですよ。
なんというか…もっとこう、遺伝子レベルの…懐かしさ…??

また、人気絶頂期ということもあり、とにかく大衆的で…いわゆるJ-POP的な仕上がりです。

誰もが口ずさめる、誰もが心地よく聴ける、誰もが好きになる…そんな良さがあります。
なんというか、わかりやすい!!

本当に、誰が聴いても「あ、いいな」と思えるような曲ばかりなんです。

そんなわけで、文句なしの1位。

「みんな」のためのスピッツという感じですね。

誰もが受け入れられる、そんな音楽。
国民的ロックバンド・スピッツの代表作であり、象徴的アルバムです。

『ハチミツ』の全曲レビューはコチラから

まとめ

というわけで、これからスピッツを初めて聴く人向けのオススメアルバムを5枚紹介してきました。

どれも、魅力的なアルバムなので、まずはサラッと聴いてお気に入りの曲を見つけてみて欲しいですね。

さてさて、結果はコチラ↓

1位 ハチミツ(1995)
2位 さざなみCD(2007)
3位 とげまる(2010)
4位 見っけ(2019)
5位 三日月ロック(2002)

こう見ると、少し2000年代以降の作品が多い気が…
初期の頃は良くも悪くも「クセのある」楽曲が多かったですからねぇ…

世間のスピッツに対するイメージから、それに即した、さらにその中でも耳馴染みの良い「大衆性」のある作品を選んだつもりです。

逆に言えば、スピッツの魅力の一部でしかないということ!

今回紹介したアルバムを聴いてスピッツに興味を持った方は、是非他のアルバムも聴いてみて欲しいです!
アルバムによって毛色が少し違ったり、スピッツの更なる魅力を、どんどん発見していって欲しいです。
音楽というのはそうやって、広げていくのが楽しいんですよね~

これからのみなさんの音楽ライフが、より楽しいものになりますように♪

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