2024年SNSを中心に最も注目されているといっても過言ではないバンド「テレビ大陸音頭」。
北海道の現役高校生バンドで、高校生とは思えないテクニカルな演奏と、高校生らしい爽やかさを両立した魅力的なバンドです。
そんな「テレビ大陸音頭」ですが、インタビューで80年代付近の「ポストパンク」の影響を公言しています。
ポストパンク… あまり聴きなれないジャンルですよね。
しかし、日本にはこの「ポストパンク」とよばれるような音楽がたくさん存在しています!!
今回は、日本のポストパンクバンドをいくつか紹介しながらその音楽性について紹介していきます。
もくじ
0.そもそも「パンク」って??
ポストパンクの話をする前に、まずは、「パンク」という音楽ジャンルについて軽くお話しましょう。
パンクロックは1970年代に登場した音楽ジャンルで、今なおロックのカテゴリーにおいてポピュラーな存在となっています。
特徴としては、シンプルなエイトビートに乗せたシンプルなコード進行(いわゆる3コードのようなもの)が見られます。
パンク開拓時代の有名なバンドとして、ラモーンズ(米)、セックス・ピストルズ(英)などが挙げられます。
上のテレビ大陸音頭の演奏動画にも壁にタペストリーが貼られていますね。
日本でも有名なバンドなので「聞いたことある!」という方も少なくないと思います。
「ポスト・パンク」は、その名の通り、パンクの流れを組みながら新しい要素を取り入れたような音楽性を指す言葉です。
といわれると「結局どんなジャンル?」という気がしてしまいますが、音楽ジャンルというのはぶっちゃけかなり曖昧なものです。明確にこれがポストパンクだ!というのは難しいですね…
そんなわけで今回紹介するバンド達についてはあくまでも私の目線から見て、のものになります。
ご了承ください。
1.日本は「パンク」大国?!
そもそも日本という国は、世界でも類を見ないほどのパンクロック大国でもあります。
この要因はいくつかあると思いますが、もっとも影響を与えたのは80年代の「バンドブーム」と、
2000年代の「メロコア/青春パンクブーム」でしょう。
次はこの二つのブームから、日本におけるパンクロックについて見ていきましょう。
1-1. 80年代バンドブームとTHE BLUE HEARTS
80年代、それまでのフォークミュージックや、グループサウンズに代わる存在として、数多くのロックバンドが登場し、大衆的に聴かれるようになりました。
当時のバンドブームの中で人気となったのが、ユニコーンやJUN SKY WALKER(S)、BACK TICKといったパンクの要素を持つロックバンド達でしょう。
中でも「パンク・ロック」を前面に押し出し絶大な支持を得たのが「THE BLUE HEARTS」です。
それ以前にも、「LAUGHIN’ NOSE」や「ザ・スターリン」といったパンクバンドは存在していましたが、
彼らのヒットを機に、日本では「ロック=パンク」のようなイメージを持たれることが多くなっていきました。
それだけパンク・ロックの存在は、ポピュラーなものへと変わっていったのです。
1-2. メロコア / 青春パンクブーム
バンドブームから20年近く経った頃、HIP-HOPやR&Bといった新ジャンルと並行して、バンドシーンでは「メロコア」や「青春パンク」と呼ばれるようなジャンルが流行しました。
「メロコア」はメロディック・ハードコアの略で、
メロディーラインに重きを置いた歌謡的なパンク・ハードコアのことです。
日本ではメロディー主体のロックが親しまれていたため、ブームとなったのも納得です。
さて、このブームの草分け的存在が「ハイスタ」こと「Hi-STANDARD」です。
99年に発表した「STAY GOLD」が大ヒット…のちのブームの先駆けとなります。
これに影響を受けて、2000年代には「ロードオブメジャー」や「10-FEET」、「銀杏BOYZ」といったバンドが登場し、人気を集めました。
中でもブームの象徴的な存在となったのが「MONGOL 800」です。
代表曲「小さな恋のうた」は、ロックの垣根を超え国民的ヒットを記録しました。
元来、パンクというジャンルはメロディーを重視した「歌謡曲」との相性が良く、J-POPという角度から見ても、日本でのヒットが頷けますね。
2.日本の「ポスト・パンク」バンド
さて、ここからが本題。
パンクロックの影響を受けながらも独自の進化を遂げたポスト・パンクの世界を見ていきましょう。
今回は、誰もが知っている有名なバンドから、コアな人気を誇る隠れた名手まで、代表的な作品とともにあらゆる音楽を紹介しますよ。
1.BOØWY「MARIONETTE」
80年代初頭に登場し初期のバンドブームを牽引した伝説のバンド・BOØWY。
あまり、ポスト・パンクバンドとして紹介されることはありませんが、個人的には日本で最も有名なポスト・パンクバンドでは無いかと思っています。
特にキャリアの後半ではエレクトロの要素や、複雑なビートを取り入れユニークな音楽性を見せていました。
そんな後期の代表曲がラストアルバムに収録されている「MARIONETTE」です。
シンプルなエイトビートに乗せた特徴的なギターリフが印象深い名曲ですね。
日本では「ニューウェイブ」と「ポスト・パンク」が混同して語られがちですが、その最たる例と言えるでしょうね。
独特な進化を遂げた日本音楽の中では、もはや音楽ジャンルというのは意味をなさないのかもしれません…(元も子もない)
2.INU「フェイドアウト」
日本のポスト・パンクの始祖とも呼べる存在が、町田康さんがボーカルを務めるバンド「INU」。
今回紹介する「フェイドアウト」は、
1981年にリリースした唯一のアルバム『メシ喰うな』の1曲目に収録されている楽曲。
81年というと、前述のTHE BLUE HEARTSやBOØWYがデビューするより前の作品ですね。
日本でパンクロックが広く受け入れられる前…
にも関わらず、既に「ポスト・パンク」としての存在感を放っています。
サイケデリックなギターサウンドに乗せた、文学的…というか不思議な世界観の歌詞。
(ボーカルの町田さんは後に作家として、芥川賞を受賞していたりします)
「テレビ大陸音頭」を初めて聴いたとき、「INU?!」と思った音楽ファンは少なくないはず。
具体的なバンド名は公表していませんが、間違いなくINUの影響を受けていると思いますよ。
世代的に彼らの親御さんですらまだ小さかった頃のはずなのに…
バンド唯一の作品と言うこともあって、『メシ喰うな』はコレクターに人気の一枚です。
それゆえ今となっては相当なプレミアム品ですね…
高圧的でありながら、芸術性の高いジャケットも魅力的です。
サブスクでも配信されていますので、まずはそちらで視聴してみることをオススメします。
リリースから40年以上経った今でも通用するセンスでしょう。
3.JUDY AND MARY「そばかす」
さて、80年代のポスト・パンクの代表格がBOØWYだとすると、
90年代はジュディマリでしょう!
…とはいえ、相変わらず彼女たちも「ポスト・パンク」として扱われることは少ない気がするけど…
そもそもJ-POP的な側面も強いバンドですからね。
ただ、よくよく聴いてみるとわかる…
このバンド、あまりにもぶっ飛んでる。
件の「そばかす」はアニメ「るろうに剣心」の主題歌に起用され、全国的な大ヒットを記録し、カラオケでも大人気の楽曲なわけですが…
まぁ、ドエライ曲ですね。なんなんだあのイントロは…
リズムはシンプルな8ビートで、まさしくパンク・ロック!といった感じなのですが、
サウンドやアレンジがあまりにも個性的。
当時のJ-POPらしい色鮮やかでギラギラとしたアレンジが見て取れますね。
パンクの枠組みには収まりきらない、エキサイティングな音楽です。
誰もが知っている曲ですが、じっくり聴いてみると新たな発見があって面白いと思いますよ。
ライブバージョンも必見!!
当時聴いていた人も、今の若い世代にも是非見て頂きたいですね。
4.放課後ティータイム「GO! GO! MANIAC」
さて、日本におけるバンド人気を支えた、という意味ではあまりにも偉大過ぎる存在…
それは、アニメ『けいおん!』です。
女子高生たちがバンドを結成する…というもはや現代において定番となりつつある「バンドもの」アニメの象徴的な存在です。
当時、社会現象にもなったこのアニメ。
作中で使われているものと同じモデルのギターやベースが、通販で飛ぶように売れたそうですね。
(登場人物のベーシストが左利きなのですが、ベースの売上ランキングで左利き用のモデルが1位を記録したという逸話も…)
作中に登場するバンド「放課後ティータイム」は、5人組のバンド。
女子高校生らしいキュートな歌詞とポップなサウンドが魅力的ですが、
その根幹にはパンク・ロックがあったりします。
放課後ティータイムは「パンク」である…というのは公式でも挙げられていることですね。
具体的に言うと、2000年代のアイドルソングやアニソンといった、渋谷的な「サブカルポップス」に「パンク・ロック」を融合したような音楽性です。
これは結構「発見」ですね。
アニソンとあなどるなかれ!
はじけたようなパンクサウンドに、キーボードやカッティングギターが色どりを添える…これは日本的な本格派ポスト・パンクと言えるでしょう!
劇中でも様々な楽曲が登場し、どれも魅力的なパンクミュージックですよ。
5.Cymbals「午前8時の脱走計画」
けいおん!よりも前にサブカル的なパンクサウンドを響かせていたバンドが存在します。
それが、1997年に結成された「Cymbals(シンバルズ)」という3ピースバンド。
90年代に流行した「渋谷系」的な音楽性を基軸に、独特なバンドサウンドを展開しています。
言ってしまえばジャズやCITY POPとパンクを掛け合わせたような世界観。
渋谷系の側面では「ポスト渋谷系」と呼ばれ、パンクの文脈では「ポスト・パンク」と呼ばれる…
非常に個性的な位置づけをされています。
当時としてはかなり斬新な音楽性でしたが、2000年代以降は、けいおん!を筆頭にCymbalsの流れを組んだような音楽が数多く登場しています。
特に、やはりアニソンやアイドルソングの界隈で、ですね。
実際、Cymbalsのメンバーである沖井礼二さんは、さまざまなアイドルや声優さんに楽曲を提供しています。サブカルミュージックの影の立役者ですね。
近年のポップスシーンとも通じるところが多い、Cymbals。
昨年にはYouTubeの公式チャンネルが開設されるなど、
今だからこそ聴いて欲しいパンク・バンドですね!
今回紹介した「午前8時の脱走計画」。
なんとサブスクでは視聴することが出来ないんですよね。
サブスクで他の曲を聴いてピンと来た方は是非CDを手に取ってみて下さい。
まとめ
今回は、「テレビ大陸音頭」のブレイクで注目が期待される「ポスト・パンク」について、代表的なバンドとともに紹介してきました。
何度も言うように、音楽ジャンルというのは曖昧なもので一口に「ポスト・パンク」といっても様々な音楽が存在します。
パンク・ロックは、日本において40年以上にわたって幅広く愛されている存在です。
今後も「テレビ大陸音頭」のように、オリジナリティ溢れる魅力を持ったバンドが数多く登場することでしょう。
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