音楽雑誌『MUSIC MAGAZINE』2024年8月号の特集
「2000年代Jポップベスト・ソングス100」。
平成のど真ん中、2000年代にリリースされた楽曲の中から
ライター38名がそれぞれ25曲を選出。
各人のリストを合算して全体でのランキングを発表…という企画。
これにあわせて、私も自分なりに50曲を選出してみた。
蓋を開けてみると、50曲中31曲が100位以内にランクインという、まずまずの結果。
雑誌内での評価も交えつつ私が選んだ50曲をコメント付きでざっくり紹介していこう。
(雑誌の内容に関して多少のネタバレもありますので、ぜひ雑誌をお読みになった上で
こちらのランキングをお楽しみください!!)
もくじ
50~26位
50. さくらんぼ / 大塚愛
トップバッターはこちら。
曲調やキャラクターから、なんとなくアイドル歌手的なイメージを持ちがちだが、
れっきとしたシンガーソングライター。
ポップなアレンジや歌謡的なメロディーは多くの若者を虜に。
「もう一回!」の掛け声で繰り返されるサビの展開は、カラオケで盛り上がることなし
派手でゴキゲンな雰囲気は、まさに平成のポップスといった印象だが、
雑誌のランキングでは圏外という結果に。
49. Fantasista / Dragon Ash
90年代に浸透したオルタナティブロックと、ヒップホップの要素を2000年代的に再構築した楽曲。
日本の2000年代ミクスチャーロックを代表する曲、アーティストだと思う。
ロックファンもヒップホップファンもカッコいいと思える上、
サブカルミュージックの枠を越え、堂々とメインストリームとして君臨する風格がある。
以降の音楽シーンに与えた影響は大きい。
これが20年以上前の楽曲だというのだから驚き。
雑誌内でも高評価
48. One Night Carnival / 氣志團
ビジュアルやキャラクターから、コミックバンド的なイメージの強い氣志團。
…というか、本人たちもそう自負していそうだが。
その人気は決して、その突飛なパフォーマンスや派手な見た目によるところだけではない。
ハードなロックンロール・ギターリフが炸裂したかと思うと、
パラパラ…どころかバブルの空気すら感じるディスコ・ミュージック風のフレーズ…
そこに乗せたメロディーは、非常にキャッチー。
ヤンキーバンドが繰り出したこの曲もまた、唯一無二のJ-POPを響かせている。
雑誌ではまさかの…いや、納得のTOP20入り。
47. 能動的三分間 / 東京事変
モンスターバンド・東京事変が2000年代の最後に生み落とした名曲。
ジャスト3分という、現在の音楽シーンにおいては丁度いい長さに収められた緻密な音世界。
180秒の中に一切のスキなく、ぴったりと埋め込まれた東京事変らしさ。
エレクトロ・ロック的な音楽性でありながら、生演奏の躍動感がより強調されている。
スタイリッシュながら溢れんばかりのエネルギーを感じる、同バンド屈指の名曲。
なのだが、雑誌のほうではランク外。1アーティスト1曲とすると、確かに他を選ぶかも…
それでも票は割れると思ってたなぁ
46. 美しく燃える森 / 東京スカパラダイスオーケストラ
ゲストボーカルに奥田民生を迎えた、スカパラの名作歌モノ。
個人的には歌モノこそがスカパラの、魅力だと思う。
いかんせん、心地よいブラスバンドに乗せたメロディーが、どれもこれも美しい。
中でもこの曲は、軽快なリズムに乗せた、ゆったりとどこか淡々としたメロディーが得も言われぬ奥深さを演出している。
「歌謡曲」のバックグラウンドとしてのブラスサウンドとは違い、歌も演奏も両方が前面に押し出されたアレンジが何とも新しく個性的。
奥田民生というボーカリストは、他の人が作った曲ですらも自分のものにしてしまう。
どんなものにでもマッチする柔軟さと、圧倒的な個性を持ち合わせた存在。
もっと高い順位でも良かった気がする…
45. Can You Keep A Secret? / 宇多田ヒカル
90年代の終わり、彗星の如く現れた新時代の女王・宇多田ヒカル。
2000年代最初のアルバム『Distance』の先行シングルとなった本作は、
より成熟したサウンドと歌を響かせている。
日本語詞の在り方をガラッと変えてしまった彼女だが、
本作では英語と日本語を気の向くままに織り交ぜたような、カジュアルな歌詞が印象的だ。
飾らない英語の使い方が、バイリンガルならではの「自然体」をもたらしている。
21世紀初のミリオン作は、堂々の30位という結果に。
44. Honeycom. Ware / 100s
個人的には2000年代で最も印象的なバンドといっても過言ではない存在、100s(ひゃくしき)。
90年代後半、突如登場し日本のオルタナシーンで唯一無二の地位を築いたミュージシャン、
中村一義を中心とした6人組バンド。
90年代はフォーキーでラフな楽曲が多かった中村が、エレクトロ期を経て辿り着いたステージ。
6人という編成が厚みのあるサウンドを生み出しながらも、
非常にスタイリッシュにまとまった、不思議な一曲。
独特な言語感覚もまた、魅惑的だ。
収録アルバム『Oz』は、ファーストアルバムながら貫禄の仕上がり。
ランク外の結果が惜しまれる。
43. je t’aime ★ je t’aime / Tommy february6
硬派なロックを歌う姿が印象的だったthe brilliant greenのボーカル・川瀬智子の
ひと味違った魅力を楽しめるソロプロジェクトの代表曲。
キラキラとした80年代風のシンセサウンドに、マイナー調の哀愁漂うメロディー。
ポップでありながら、ちょっと気だるげ。
アイドルとは違った可愛さを追求したビジュアルや世界観。
とにかく、今までにはいなかったタイプだと思う。
この曲はサンリオのキキララとコラボしていたのだけれど、
現在サンリオが行っている「I.CINNAMOROLL」的なオトナっぽい可愛さを感じる。
20年以上前にこの世界観…雑誌でも高い評価を得たアーティストの一人。
42. ふわふわ時間 / 桜高軽音部
平成のアニメシーンにおいて大きな話題を呼んだ『けいおん!』。
その影響は音楽シーンにも。
けいおん!を見て楽器を始めた若者たち。
その多くが最初に鳴らしたのは、たぶんこの曲。
シンプルながら印象的なイントロのリフ。
このイントロを聴くだけで、誰でも物語の一員になれる。
近年では、「ぼざろ」や「ガルクラ」が流行しているが、
やはりバンドアニメの金字塔は、けいおん!そしてこの曲だ。
雑誌ではランク外ながら、選出しているライターも。きっとアニメファン。
41. 有心論 / RADWIMPS
2000年代は、アイドルソングも、ヒップホップもメロコアなんかも流行った時代だが
ロック好きの私にとっては、やっぱり変わらずロックバンドの時代だ。
とはいえ、80年代のパンクやシティポップ、90年代のオルタナともまた違う、
2000年代ならではのロックがそこには存在していた。
ミクスチャーロック…その言葉を体現するかのようなバンド・RADWIMPS。
繊細で具体性のある言葉づかい…それでいて全貌は結構ファンタジー。
独特な世界観と巧みなサウンドには、後に映画音楽を担うことになるのも納得だ。
雑誌でも代表作である本曲がランクイン。
40. ココロオドル / nobodyknows+
アニソン×ヒップホップ。
どちらもメインカルチャ―となった今ですら、意外と類を見ない曲。
この曲の凄いところは、たとえアニメを観ていなくても、ヒップホップを聴かない人でも
何故か知っていること。
かくいう私もいつどこで知ったのか、あんまり覚えていない。
そして早口のラップの曲なのに、意外と歌える。
一個一個のフレーズが非常にキャッチーで、歌謡的なメロディーだ。
近年のサウンド重視のヒップホップとは一線を画す、歌に注力した日本的ヒップホップだ。
39. Drifter / キリンジ
キリンジといえば、やっぱりエイリアンズなんだろうし、
想像通り、このランキングでも最後の方に登場するのだけど
個人的には、「キリンジ⇒エイリアンズ」の構図に寂しさも感じる。
90年代のフレッシュな楽曲も魅力的だし、「KIRINJI」の曲も捨てがたい。
そしてやっぱり「Drifter」。
美しくも難解な歌詞と言われがちなキリンジだが、
この曲にはストンと身に入ってくる言葉が多い。
ゆったりとしていながら力強い。
名作なのは、選者みな承知の上なんだろうけどね…
38. ロストマン / BUMP OF CHICKEN
2000年代のロックシーンの中心とも言えるのが「バンプ」の存在だ。
トップランナーでありながら、なんというかアングラ感を出し続けているのも魅力の一つだと思う。
特に2000年代の楽曲は、泥臭い、根暗なロックを鳴らしている。
前に押してくれるというよりかは、後ろからそっと支えてくれるような、
そんな応援歌が多くみられる。バンプはいつでも弱い者の味方だ。
その最たるものが「ロストマン」だろうか。この曲を拠り所としているロックファンは少なくない。
関ジャムでは絶大な支持を集めたこの曲であるが、今回の企画ではランク外。
やはり1ミュージシャン:1曲だと選ばれづらいのか…
37. スケアクロウ / the pillows
北海道のロックスター…だと、個人的には思っている。
ロック好きからしてみれば外せないバンドだが、どうも一般での知名度と乖離を感じる。
そんな彼らだが、2000年代はメインストリームに最も接近していた時期だったと思う。
中でも「スケアクロウ」をはじめとする2007年あたりは。
歌っていて気持ちの良い楽曲が目立つ。
山中さわおの言葉はストレートでありながら、スペシャルだ。
日本語ロックの良さを存分に味わうことが出来る。やっぱり名バンドだ。
この曲を選んでいるライターもいたが、全体ではランク外…でもいいや。
36. 赤黄色の金木犀 / フジファブリック
人生で初めて、ロックミュージックにおけるキーボードの重要さを感じた曲。
キーボード…言ってしまえば何でもできる楽器ではあるのだが、
フジファブリックのキーボードは、当たり前だが「人間が演奏している」という印象が強い。
間奏のソロは勿論だが、ボーカルの裏で鳴り響く音にこそ人間臭い存在感を感じる。
Gt.山内さんにも言えることだがフジファブリックは、主旋律以外のサブメロを作るのが達者だ。
キーボード・金澤ダイスケの存在はあまりにも大きい。
5人が作り出すアンサンブルは、華やかながら儚い色気を放っている。
35. WORLD’S END SUPERNOVA / くるり
時代によって姿かたちを変える流動的な存在だが、くるりにはくるりにしかない良さがある。
それまでエレクトロミュージックをほとんど聴いていなかったのもあり、初めて聴いたときには衝撃を受けた。
いわゆるEDMではあるのだけど、ノリの良さよりも心地よさが目立つ。
前作『TEAM ROCK』で取り入れたエレクトロの要素を、より深めたような作風の『THE WORLD IS MINE』。
バンドサウンドは身を潜めているものの、しっかりとロックを感じるのは「くるり」らしいところ。
キャリア全体で見ると、エレクトロ期はごく一部の期間だが、この時期に残した楽曲はどれも色褪せない。
最多3曲ランクインのくるり、もちろんこの曲も。
34. カルマ / BUMP OF CHICKEN
くるりには敵わないかもしれないが、バンプもまた時期によって姿を変える多彩なバンドだろう。
初期の荒々しさを残しつつも彩り豊かなアレンジが目立つ名作『ユグドラシル』(ロストマン収録)。
エレクトロ要素を本格的に取り入れた2014年の『RAY』。
その狭間で変遷を感じつつも、独特な空気感を放っていたのが2007年『orbital period』。
そして代表作がシングル「カルマ」だろう。
幾重にも重なる、嵐のようなギターサウンドと、空間の広がりを感じさせる音響。
RPGのタイアップということもあってか「セカイ」系な雰囲気の歌詞も厨二心をくすぐる。
この曲でバンプの虜になった当時のティーンも少なくないのではなかろうか。
選者にはその世代が居なかったのかも…
33. LAST SCENE / スーパーカー
アルバム『HIVISION』である種一つの到達点に達した伝説のバンド・スーパーカー。
オルタナティブロックシーンのニュースタンダードになりつつあった彼ら。
そんな最中にリリースされたこの曲は、独特なオーラをまとっている。
のちの終焉を思わせる、愛想尽かしたような空虚感。
ゆらゆら帝国の「空洞です」は言うまでもないが、
この曲も「無」の中に存在する美しさを体現した芸術作品の一つと言えるかもしれない。
あまり注目されることのない後期作品だが、個人的には印象深い一曲だ。
この曲はランクインしなかったが、雑誌内でもスーパーカー人気は凄まじい。
32. Sugar!! / フジファブリック
志村ボーカル期のシングル曲で最もポップな楽曲だと思う。
2000年代のJ-POPシーンを牽引していたエース・亀田誠治をプロデューサーに迎えた本曲は、
WBC(ワールドベースボールクラシック)のイメージソングに起用されるなど、
メインストリームとしてのフジファブリックの在り方を体現したような内容。
爽やかなサウンドと、前向きで疾走感あるドリーミーな歌詞。
それまでのフジファブリックとは一味違った魅力を備えてはいるものの、
随所のフレーズに彼ららしさが光っている。
以降のキャリアにも繋がる重要な一曲だろう。
この曲がランクインしなかったのは非常に惜しまれる。
31. RIVER / AKB48
ポップでキャッチーでガーリー… 平成アイドルのど真ん中を突き進んでいたAKB48。
春にはノスタルジックな卒業ソング、夏には爽やかなキラーチューン。
季節に合わせた楽曲のプロデュースも魅力の一つで、オールタイムで寄り添ってくれる身近さを感じられる。
さすがは「会いに行けるアイドル」といったところか。
そして当時のAKBは、秋に「カッコイイ」曲をリリースするのが定番となっていた。
これらが毎度毎度、ため息が出るほど見事なもので…
中でもアイドルらしからぬ、いや、戦国時代を生き抜く彼女達にはふさわしい「泥臭い」カッコ良さが光る楽曲がこの「RIVER」である。
AKBの格好良さは乃木坂や欅坂のスタイリッシュさとは一味違う、独特な輝きを放っている。
しかし、AKBが1曲も入らないとは…
30. トワイライト / GOING UNDER GROUND
ストリングスを取り入れたロックミュージックは、数多く存在するが、
彼らの奏でるロックンロールは、唯一無二の魅力がある。
シンプルで力強いエイトビートに乗せた、無骨なギターサウンド。
その王道感の強いロックンロールに、ノスタルジーとオリジナリティを与えているのが
鋭くも温かいストリングスの響きだろう。
その壮大なアレンジに乗せた、壮大な歌詞がまた美しい。
いや… 壮大なようでいて、そこに登場人物は二人しか存在しない。
バンプの「カルマ」でも話したが、銀杏BOYZや、MONGOL800など、
この時期のロックには「セカイ」系を思わせる歌詞が目立つ…気がする…
29. 全力少年 / スキマスイッチ
2000年代のJ-POPにおいてスキマスイッチの存在は非常に大きい
…少なくとも私はそう思っている。
歌謡的でありながら、ブラックミュージックの要素もあり、その上アコギが鳴っていたり
ブラスが居たり、壮大なオーケストラだったり…
とにかく、あらゆる音を取り入れたフリーダムな音楽性は、J-POPとしか形容せざるを得ない。
ピアノのしっとりとしたフレーズから、ブラスとストリングスが鳴り響くこのイントロは、
まさしくJ-POP!!
90年代のJ-POPの代表を槇原敬之だとすると、2000年代はスキマスイッチではなかろうか?
MUSIC MAGAZINEは少々「売れ線」に冷たい気がしてしまう…
28. 或る街の群青 / ASIAN KUNG-FU GENERATION
『君繋ファイブエム』でロックシーンに舞い込んだアジカン。
ナンバーガールを彷彿とさせる焦燥的なギターロックを響かせていた彼ら。
続く『ソルファ』のマスターピース感、『ファンクラブ』での芸術性の高さ。
それらを経た彼らがリリースした9thシングル「或る街の群青」。
美しく繊細なイントロにはアート性を感じるが、サビで一気に開放されるエネルギーは初期ともまた違った強さを感じられる。
泥臭くも爽やかなギターサウンドが、光だって闇だって、全てを包み込んでくれる。
この曲を選んだライターとはアツい抱擁を交わしたい。
27. サウダージ / ポルノグラフィティ
ラテン音楽を取り入れた歌謡曲… と表現すると、意外とピンと来ないこの曲。
それだけポルノグラフィティの「サウダージ」は極めて日本人らしい音楽である。
マイナー調で、ちょっぴり偏屈なメロディーライン。
しかしどうだろう…岡野昭仁がコレを歌うと、圧倒的な真っ直ぐさを感じる。
彼の歌声にこんなにマッチする曲が作れるものか…
「アゲハ蝶」「メリッサ」等のヒット曲を手掛けた名手・本間昭光には脱帽だ。
ラテンということもあり、間奏では(おそらく)サンポーニャのような管楽器が使われていたりする。
やり過ぎなくらいのラテン色だがそれに負けないポルノグラフィティのJ-POP魂を感じる一曲。
26. ロックンロール / くるり
「くるりらしい曲」と訊かれると頭を抱えてしまうものだが、
このロックンロールは、まさしく「くるりのロックンロール」と言えるだろう。
エレクトロ期がパタリと終わり再びギターロックにシフトチェンジした『アンテナ』。
そのロックアルバムの中でひと際輝いているのがこの曲だ。
Gt.大村達身、Dr.クリストファー・マグワイアという、ギターロック黄金期のメンバーが生み出した
狂おしいほどストレートなロックンロール。
ひたすら繰り返されるギターリフと、力強いビートは、何度聴いても心が燃え上がる。
雑誌の方でもランクインもしていたし…やっぱりこれ、名曲だよなぁ。
25位~
雑誌では各人が25曲を選出する、という企画だったので
ここから先は、私が選ぶとしたら…そんな意味を込めた選出となる。
この25曲に限定して言うと、うち23曲がランクインしていたわけだが、その順位に関しては本誌とは随分と異なる結果となっている。
25. CHE.R.RY / YUI
歌詞やサウンド、全てから「平成」を感じられる…平成J-POPの金字塔。
宇多田の「Automatic」にも言えることだが、「電話」を題材にしたラブソングは時代の色が顕著に表れて面白い。
最近だとあいみょんのLINEリリックビデオもその類だと思う(もはや最近ではない)。
ギターを持った少女…そのみずみずしいフレッシュな姿は今でも印象的だ。
洗練された煌びやかなバンドサウンドと、そこに乗せたカジュアルで愛おしい歌詞。
デジタルなスタイリッシュさと、素朴な世界観が何とも平成らしい。
ケータイ小説のような質感だ。
雑誌のランキングでも堂々の15位。
24. 愛をこめて花束を / Superfly
90年代の終わりから2000年代にかけてあらゆる「歌姫」が登場した。
それぞれが個性を光らせていたわけだが、圧倒的なパワーを放っていたのがSuperflyである。
太く力強いその歌声は、ロックシンガーという言葉が良く似合う。
だが彼女の本当の魅力は、その真っ直ぐな歌声の中にある揺らぎだと思う。
それをいかんなく発揮しているのが名バラード「愛をこめて花束を」。
バラードでありながら、最高にハッピーで最高にパワフル。
なのだけど、その真っ直ぐな言葉の節々に感じるつつましやかな愛おしさ。
何度聴いてもグッとくる。
正直この曲がランクインしなかったことには驚いた。
23. マツケンサンバⅡ / 松平健
「J-POP」という音楽を、海外の人に教えるとしたらこの曲を上げるかもしれない。
これほどまでに、日本的な魅力を感じる音楽はないだろう。いや、サンバとか言ってるけど。
それは決して、ちょんまげ×着物のビジュアルに限ったことではない。
近年ではあらゆる意味を込めて日本の諸文化を「クールジャパン」と称したりするが、
これもまた「クールジャパン」だろうか。
あらゆる楽器が流れるように登場しハーモニーを生み出す世界は、クラシカルなオーケストラのようでもあり、突飛な電波系ミュージックでもある。
ピチカートファイブが作り上げた「サブカルミュージック」に、より斬新な、それでいて普遍的な「楽しさ」をもたらしたような一曲だ。
日本人が一番踊れる音楽は… ひょっとするとこれかもしれない。
雑誌のライターたちもこれには天晴れ。
22. ワダツミの木 / 元ちとせ
マツケンサンバⅡがサブカル的で現代的な日本の姿だとすると、
クラシカルで伝統的な日本文化を取り入れたこの曲もまた日本らしい音楽と言えるだろう。
日本の歌謡曲が、古の民謡から発展したものだとすれば、
この「ワダツミの木」という曲は、時代を遡る存在なようにも思えるが、決してそうではない。
オルタナティブなアレンジ、クリアでありながら深みのあるサウンド…
歌謡曲が日本独自の進化を重ね「J-POP」として確立された上にこそ、この曲は成り立つと言えるだろう。
この曲の放つ神秘は、20年以上経った今も決して濁ることは無い。
21. もってけ!セーラーふく / 泉こなた、柊かがみ、柊つかさ、高良みゆき
近年は、YouTubeやTikTokといったプラットフォームから新しい音楽が流行することが多く、
音楽にマッチした魅力的な「映像」や「話題性」というのがより重要視されるようになった。
ネットで話題になるというのは今でこそ当たり前だが、15年も前になるとそれは、一辺のサブカルチャーに過ぎなかった。
そんなサブカルチャーの世界で大流行を喫したのがアニメ『らき☆すた』である。
主題歌である「もってけ!セーラーふく」は、その「電波」具合と、楽曲の完成度の高さから大きな話題を呼んだが、
その衝撃はアニメ業界のみにとどまらず。
ぶっ飛んでいながらキャッチーな歌詞と、カオスなようで普遍的な魅力を放つ音楽が
後世に与えた影響は凄まじい。
MUSIC MAGAZINEも絶賛の一曲。
20~11位
20. ゆらゆら帝国で考え中 / ゆらゆら帝国
この曲を最初に聴いたときの衝撃は今でも忘れない。
音楽というか叫びというか、とにかくフラストレーション大爆発。
しかし、衝撃こそ受けたものの、全くもって嫌悪感は存在しなかった。
むしろ妙な安心感を覚えたもの。
尖っているようでいて、「この曲を聴いて好きにならない人はいないのではないか?」とすら思ってしまうような、キャッチーさがこの曲にはある。
バラエティ番組のテーマソングになったことも、要因ではあるのだろうが
この曲がオリコンチャートインし、メインストリームとなったのは妙に納得できてしまう…
だが、それがどこから来るものなのかはイマイチわからない…そんなつかみどころの無さも「ゆらゆら帝国」らしい。
19. ロコローション / ORANGE RANGE
平成のミクスチャーロックの代表格、ORANGE RANGE。
ハードロックのような轟音ギターを鳴らしたかと思ったら、ヒップホップのようなリズミカルなリリック…
煌びやかなJ-POPのアレンジ…でもやっぱりロック…!!…?
結構全貌を掴むのが難しいロックバンドである… そもそもロックバンドなのか?
このフリーダムな姿勢こそが広く愛される所以だろう。
そして、歌謡曲としてみても一級品である。
特にBメロの美しさには目を見張るものがある。
そしてもう一つ… この際どい歌詞がお茶の間で流れまくっていたと思うと、今さらながら衝撃である。
雑誌でも幅広い選者から票を集めた。
18. 気まぐれロマンティック / いきものがかり
スキマスイッチと並んで、2000年代のJ-POPの中心にいたのが「いきものがかり」だろう。
キャッチーなメロディーと、複雑でドラマチックなコード進行。
日本独自の歌謡曲を、さらに独自に進化させたこの音楽性は、非常に日本的。
そして、これが日本ではスタンダードなものとなっている。
エネルギッシュでハッピーなイントロと、最初から最後まで躍動感にあふれた爽快なメロディー。
特にサビへと駆け上がるようなBメロが気持ちいい。いきものがかりを聴くと「Bメロ」の重要性に気づかされる。
Bメロというもの自体がJ-POP独自のものと言えるかもしれない。
スキマ同様、この手の企画では過小評価されがちな、いきものがかり。
今さら語る必要もない、ということなのかもしれないが…
17. スターゲイザー / スピッツ
あらゆるリスナーから高い評価を得ている、日本を代表するバンド・スピッツ。
2000年代の代表曲といえば、この「スターゲイザー」だろう。
サビから始まる展開は、令和っぽさを感じるが、サウンドやアレンジは間違いなく2000年代のそれである。
だがしかし、スピッツの音楽に「時代」を持ち出して語るのは野暮というものだ。
Bメロの重要性を語った直後に言うことではないが、この曲の「Aメロ→サビ」という展開は、素晴らしい。このたった数十秒の間にスピッツというバンドのあらゆる良さが詰まっている。
スピッツの音楽は時代を問わない普遍的な魅力を放っているが、この短い展開の中にさえ感じられる「スピッツらしさ」が真の魅力だろう。
贔屓し過ぎたかとも思ったが、雑誌でも堂々のランクイン。良かった。
16. サンボマスター / 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
2000年代といえば、ハイスタから続く青春パンクブームだ。
その代表格でありながら、他とは違った魅力を醸し出していたのがサンボマスター。
彼らがやっているのは紛れもないパンクロックなのだけど、
泥臭く叫ぶ、ロックンロールなのだけど… 極めて繊細でソウルフルだ。
言ってしまえば、オシャレでさえある。
代表曲であるこの曲もまた、一言では言い表せない複雑な魅力がある。
かつて甲本ヒロトは、パンクロックは「やさしいから好き」と歌っていたが、
サンボマスターのロックは本当に、心から優しく温かい。
普通であれば「クサイ」とすら感じてしまうような真っ直ぐすぎる言葉も、彼らが歌うとしっかり心に響いてくるものだ。
15. YUMEGIWA LAST BOY / スーパーカー
今でこそサカナクションやバンプがいるが、2000年代初頭においては、
ロックに電子音を取り入れるというのが最先端のトレンドだった。
そのエレクトロ・ロックの路線で高い評価を得たのが、くるりとスーパーカーだったのだと思う。
シングル曲「Strobolights」で近未来的な音楽性をいち早く見出し、新時代を築いたかと思うと、
この「YUMEGIWA LAST BOY」ではそれをよりアップグレードさせた。
近未来サウンドのダンスチューンというと、Perfumeを彷彿とさせるが、
この曲のリリースは、「ポリリズム」大ヒットよりも、実に6年も前のことである。
サカナクションはじめ現在のミクスチャーロックシーンに与えた影響は大きい。
予想はしていたが、やはり雑誌でも高い支持を得ていた。
14. POP STAR / 平井堅
この曲は、非常に「ポップ」な楽曲である。
「ポップ」というのが「ポピュラー」という意味だとすれば、それは大衆的で普遍的であるということだ。
それは「王道」とも言えるかもしれない。
この曲の王道さたるや… 王道感のあるコード進行に乗せた、王道感のあるメロディーライン。
時代を象徴するかのような、時流を掴んだ王道感のあるアレンジメント…
ここまで王道な音楽だと、没個性的に感じられたり、退屈さを感じる様な気もするが…
そのすべてを「平井堅」という稀代のボーカリストが、滑らかに彩っている。
この曲に「POP STAR」というタイトルをつける潔さも好きだ。
なんて書きながらも、この曲がランクインしたことには正直驚いた。
13. シャングリラ / チャットモンチー
「ガールズバンド」という言葉が浸透したのは90年代だったろうか。
プリプリをはじめ、そう呼ばれるバンドはいくつも存在したが、どうしてもアイドルじみた押され方をすることが多い気がした(少年ナイフのような存在もあったが)。
2000年代以降の音楽シーンでも「ガールズバンド」という言葉が持ち出されることは多々あるが、
その言葉の持つ意味は「チャットモンチー」の登場によって大きく変わったように思う。
重厚感のある高圧的な骨太ギターサウンド… そこに乗せたボーカルは、可愛らしい・カッコいいなんて形容詞を跳ね除けるような等身大の純真さがあった。
ベースの低音響くキラーフレーズから始まるこの4つ打ちビートは、世の中の少年少女をロックに目覚めさせるきっかけの鼓動となった。
日本のロックシーンの伝説的な一曲。雑誌でも堂々のBEST10入り。
12. traveling / 宇多田ヒカル
宇多田ヒカルのアルバムにおいて、2作目『Distance』と3作目『DEEP REVER』の間には、流れを感じつつも絶対的な変化が感じられる。
その変化を色濃く物語っているのが9thシングル「traveling」だ。
『平家物語』の一部を引用した歌詞は、どこか悲観的な印象。
今となっては、平成という不況の時代に寄り添ったような言葉に、ノスタルジーを感じる。
それでいて、楽曲のノリの良さもまた、平成のポップスといった具合。
MVもゴキゲン極まりないものだった。
サウンドとか、言葉のはめ方とか、「斬新な音楽性」を評価されることが多い彼女だが、
そんな斬新さが時代とともにニュースタンダードになった。
それでも現在まで彼女が唯一無二の存在であり続けるのは、根幹にある圧倒的な音楽センスと歌唱力によるものだろう。
11. Drop / Cornelius
1997年にリリースされた『Fantasma』が、日本のエレクトロミュージックシーンを次世代へと押し上げたCornelius。
後に彼に影響を受け、スーパーカーやくるりはエレクトロ路線を進むことになったわけだが…
Corneliusは早くもその音楽性をネクストステージへと進展させていった。
2001年リリースの本作は、よりサウンドの心地よさ、立体感をクリアに押し上げ、
エレクトロとバンドサウンドの融合を、よりスマートに実現した印象だ。
この辺には、この時期の目まぐるしい技術の進歩を痛感するが、
彼のセンスにようやく音響技術が追い付いた…という表現がしっくりくるかもしれない。
アルバム企画では高い評価を受けたCorneliusだったが、曲単位のランキングでは意外と低い79位。
今回の企画は楽曲の芸術性だけが評価のポイントではない。
10~1位
10. 天体観測 / BUMP OF CHICKEN
2000年代のいわゆる「邦ロック」シーンのトップスター・BUMP OF CHICKEN。
邦ロックという言葉も、この時期のバンドブームの中で浸透した言葉な気がする。
そんなバンプの代表曲であり、彼らの存在を世間に知らしめたのがこの「天体観測」だ。
難解なようでキャッチーなイントロのフレーズは、既に彼らの個性が遺憾なく発揮されている。
楽曲のアレンジ自体に大きな起伏はみられないが、Vo.藤原基央の描くストーリーが情景の豊かさを彩ってくれる。
折り重なるギターサウンドに乗せた、クッキリとした歌声や歌詞は、驚くほどに耳に残る。
彼もまた日本語ロックの在り方を大きく変えた人物の一人だろう。
雑誌でもTOP20入りを果たした、2000年代の名曲。
9. サヨナラCOLOR / SUPER BUTTER DOG
世の中には数多くの「さよなら」を歌った曲が存在するが、ここまでも温かく前向きなものはかつてあっただろうか。
スネ毛やウーロン茶について歌い、
なんとなくコミカルな印象が強かったSUPER BUTTER DOG。
テクニカルで本格的なファンクサウンドから来るギャップがむしろ一層の面白さを演出していた気すらしてしまう。
そんな彼らが作った純粋で、真っ直ぐなラヴソング。
洗練された無駄のない美しいバンドサウンドに乗せた、クリアでウェットに富んだホットなボーカル。
今聴いても全く古臭さを感じない、普遍的なメロディーとメッセージがこの曲には存在している。
雑誌の方では73位という結果だったが、コレを選んだ選者はみな、上位に選出していた印象。
8. 群青日和 / 東京事変
90年代の終わりに、音楽シーンを揺るがした、ひとりの少女。
孤高の存在と思われた彼女だが、2000年代に結成した東京事変では見事な「バンドミュージック」を響かせた。
彼女の才能やオーラを包み込む…どころか喰ってかかるような野性的エネルギーを持った音楽集団。
現在のメンバー編成が印象強いが、この時期のこのメンバーが鳴らす「群青日和」のオリジナル感はやはり桁違いだ。いや、当たり前だけど。
「新宿は豪雨」という、東京事変の幕開けにあまりにも相応し過ぎるフレーズ。
これだけの音の重なりでありながら、洗練された印象を受けるのは卓越した技術と、やっぱり負けじと輝く彼女の存在感あってのものだろう。
雑誌では24位とまずまずの結果。
7. キャノンボール / 中村一義
「中村一義」名義でありながら実質「100s」のデビューシングル。
個人的には東京事変にも引けを取らないハイセンスなクリエイター集団だと思っている。
6人の個性的なミュージシャンがそれぞれのエネルギーをぶつけ合いながら、ひとつの音楽を作り上げる様は目を見張るものがある。
シンプルなエイトビートに乗せた、シンプルだが刺激的なメロディーと歌詞。
そしてそれを彩る鮮やかだがスッキリとしたアンサンブル。
多くを語らずとも伝わることはある、といったこの曲のメッセージを音楽そのもので体現したアート性にも感服だ。
開放感のあるスペシャルなロックチューンは、ソロ時代とはまた違った魅力にあふれる一作だ。
前述の群青日和と、キャノンボールは同じ方がコメントを書いているのだけど
…このライターさんとは気が合いそうだ。
6. めくれたオレンジ / 東京スカパラダイスオーケストラ
スカパラの「歌モノ」シリーズの第一作となったこの曲。
歌っているのはオリジナル・ラブの田島貴男。
ファンキーな楽曲にマッチしたファンキーなボーカリスト。
90年代の「接吻」や「サンシャイン・ロマンス」でわかりきっていたことだが、ブラスを中心としたサウンドとの親和性の高さに改めて驚く。
音楽的な意味でも、彼をゲストに迎えたのは当然とも言えるが…
そんな想像をはるかに超える素晴らしい楽曲だ。
都会の色気を放つ彼らだが、こういった野性的なワイルドな姿もしっくり来るのだから面白い。
お互いの魅力を高め合う、奇跡のコラボレーションだ。
5. ばらの花 / くるり
この曲を初めて聴いたとき、「自分はこういう音楽が好きなんだ」と気づかされた。
当時はオルタナティブロックという言葉も知らなかったし、くるりの曲も大して知らなかったのだけど、この「ばらの花」に対しては何か特別なものを感じた。
淡々と流れるメロディーやフレーズが、スッと耳に入っては脳に溶けてゆく…
この独特な感覚の、音楽の虜になってしまったものだ。
「ジンジャーエール」という具体的なワードを中心にしつつも、文学的な淡さを併せ持った歌詞の世界観も素晴らしい。
スタイリッシュでありながら、どこかぼんやりとしたウェットなロックによくマッチしている。
雑誌でも堂々の4位… 納得の位置づけ。
4. 若者のすべて / フジファブリック
新時代のロックスターとして、アジカンやバンプとともにJ-ロックの担い手となりつつあったフジファブリック。
そんな彼らが作り上げた一つの到達点。
音楽的にどこがすごい、とかこの楽曲をロジカルに紐解こうとすると極めて難しい。
この曲には言葉では形容し難い、得も言われぬ強さと、弱さに溢れている。
ただ一つ言うとしたら、この音楽に「若者のすべて」というタイトルをつけたことに、まずは拍手。
「桜の季節」「銀河」「茜色の夕日」と、雑誌では計4曲の名が挙がっていたが、
この曲のみがBEST100入りという結果。
名曲は多くあれど、それだけこの曲の持つ意味は大きなものなのだろう。
3. 世界に一つだけの花 / SMAP
「もし、J-POPが存在しない世界に一曲だけ持ち込むとしたら」この曲を選ぶかもしれない。
90年代にポピュラーミュージックのスタンダードとなった槇原敬之と、国民的アイドル・SMAPによる楽曲。
今回の記事にはたびたび「普遍的」というワードが登場しているわけだが、音楽の普遍的な魅力をここまで表した楽曲はなかなか無い気がする。
この曲の魅力は、なんというかその…「可逆性」にあると思う。
あらゆる要素をパッケージしたこの曲さえあれば、それ以前の音楽を逆算的に想像することができる。
本当に、J-POPの教科書のような一曲だ。
ハイクオリティなグッドミュージック…とは言えないかもしれないが、ポピュラー⇒親しみやすさという点でいくと確かな名曲だろう。
この楽曲が持つメッセージとともにいつまでも語り継がれて欲しい音楽だ。
2. ポリリズム / Perfume
世界にひとつだけの花が普遍的な魅力を持った音楽だとすると、ポリリズムはその「独創性」に魅力を感じる一曲だ。
勿論、この曲には、ネオ渋谷系と呼ばれるような音楽的背景があっただろうし、決して音楽界に突如現れた「未来のうた」というわけではない。
90年代の、2000年代初頭の音楽の流れはありつつも、2008年という瞬間にしか存在しえなかった曲だと私は思う。
ただ、流れを組んだ上にある…のではなく、再構築したような新しさがある。
この楽曲の持つ「近未来感」は15年経った今でも変わらない。
中田ヤスタカの作り上げた方程式は、あまりにも繊細で不可逆なものだろう。
2000年代の象徴とも呼べるこの楽曲。
雑誌では1位を獲得。誰もが納得だろう。
1. エイリアンズ / キリンジ
2000年代初頭に、この星に降り立った稀代の名曲「エイリアンズ」。
日本語のことばの響きを最大限に生かした、日本的で美しいメロディーがとにかく素晴らしい。
冨田ラボこと富田恵一さんによる複雑な音の重なりや、あまりにも妖艶で優美な歌詞に
普通であれば難解さを感じてしまうだろう。
ただ、この曲は全てが滑らかで何一つとして突っかかりがない。
これは決して、つまらないということではなく、
あまりにも綺麗に磨き上げられた、一ミリのゆがみ冴えない水晶玉のように、ずっと見ていたくなるような、魅惑的な美しさを持っているのだ。
数多くのミュージシャンがカヴァーを行っていて、どれも素晴らしい。
だが、やっぱりオリジナルを聴くたびに、これはキリンジの音楽だな、と痛感する。
「普遍性」と「独創性」を持ち合わせた名曲は、雑誌では2位という結果に。
「2000年代」というくくりで捉えるとやはりポリリズムに王座は譲るべきだったか。
総評
以上が、私が選ぶ2000年代J-POPベスト50だ。
この50曲をまとめる前に、
まずは、もととなった『MUSIC MAGAZINE』のランキング結果について少し語ろう。
動画でも述べたが個人的にはかなり「納得」の結果だった。
巷では「あゆが1曲も入っていない」とか「ミスチルがいない」とかアレコレ意見が出ているが、
それこそがこの企画の肝であり、魅力なのだと思う。
だって、2000年代アルバム企画で「ゆらゆら帝国」と「Cornelius」でTOP3を埋めた雑誌なのだから。
単に売れた曲を順番に並べるだけの結果になっていたら、それはもはやこの雑誌の企画としてやることではない。
「MUSIC MAGAZINE」というフィルターを通して2000年代の音楽シーンをまとめたものと言えるだろう。
音楽においてこの「フィルター」というものは極めて重要だ。
音楽のような芸術にそもそも順位なんてものは存在しない。
リスナーそれぞれが違った価値観で、違った目線で鑑賞するからこそ面白いのだ。
各人の個別の選出も全て記載されており、それを見ると…
ロックばかり選んでいる人もいれば、当時ハマっていた曲を集めた人もいて…
ある人にとっては、アイドルの時代だったし、ラップの時代だったし、ロックの時代だった。
ただこれだけのフィルターがありながらも、その多くをかいくぐった上位楽曲は流石のラインナップだ。38人の選者が集まれば自然と王道に近づいていく。
そんなわけで、雑誌の色は出つつも全体的には結構カジュアルな結果となったのではないだろうか。
これに比べ私の選んだ50曲はどうだろうか。
私一人のフィルターで覗いた世界なだけに、正直なところ偏りは大きいかもしれない…
まぁ、先に述べたようにそれが面白さなんだろうけど。
根本として、私は1999年生まれということもあり当時の音楽シーンを実際に肌で味わったわけではない。
具体的に言うと、浜崎あゆみや安室奈美恵の当時のスター性をあまりよく知らないのだ。
そもそも「いつ」の曲かということをほとんど重要視していない私にとって「流行」というのはあまりに縁遠い言葉だ。
それゆえ、雑誌では高評価だった「m-flo」や「RIP SLYME」のような存在もすっかり忘れてしまっていた。
私の選考基準は、何度も言うように「普遍的」な良さである。
そういうわけで、正直なところ「2000年代らしいランキング」にはあまりなっていないかもしれない。
ただし、ひとつ意識したことがあって、「2000年代に登場したミュージシャンをなるべく多く入れよう」というもの。
そんなわけで、ミスチルやGLAY、B’zといった面々は除かせてもらってしまった。
2000年代の楽曲も魅力的ではあるのだが…
そんな中でスピッツやスーパーカーを選んだのは、2000年代に入り音楽性がガラッと変わった(と私は感じている)からである。
それにしても…
動画でも話したが、オリコンチャート50位以内のシングル曲という前提条件が、かなり難しかった。
この制約すらなければ「サラウンド」(クラムボン)、「LOVEずっきゅん」(相対性理論)、「黄金の緑」(UA)は絶対に入れていただろう…
さて、いち素人が10時間もの時間を費やして書き上げたこの記事にどれだけの意味があるかはわからないが、少しでも何かを感じ取ってくれた方がいたとすれば本当に幸せなものだ。
少なくともここまで読んで下さっている方には本当に感謝してもしきれない。
みなさんがこれからも素晴らしい音楽に出会えることを願って。
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