2025年も日本の音楽界ではさまざまな出来事がありました。
後世に多大な影響を与えたベテランロックバンドthe pillowsが解散したほか、
2000年代を席巻したPerfumeが「コールドスリープ」を宣言。
一方でSuchmosが活動を再開したり、山下達郎がFUJIROCKに出演したり。
紅白歌合戦には、20年以上のキャリアを持つハンバートハンバートが初出演しましたね。
そんな2025年にリリースされた楽曲の中から、
「この曲好きだな」「この曲面白い!」
と思ったものをセレクトしました。
題して「J-POP個人的ベスト10」。
大きな話題を集めた楽曲から、新進気鋭のアーティストまで、幅広く取り上げたつもりです。
邦楽ヘビーリスナーが選ぶ2025年の名曲はコレだ!
(過去の音楽セレクト記事はコチラから↓)
1.怪獣 / サカナクション
テレビアニメ『チ。 —地球の運動について—』の主題歌として書き下ろされた一曲。
原作漫画は「マンガ大賞」や「このマンガがすごい!」で上位にランクインし、絶大な支持を集めてきた作品です。待望のアニメ化に加え、サカナクションが主題歌を担当するというニュースは、発表当時大きな話題を呼びました。
シングルとしては、2022年の「ショック!」以来、約3年ぶりのリリースとなります。
フロントマンである山口一郎さんの休養期間を経て、本作はまさにサカナクションの新たな門出を象徴する一曲として、音楽ファンから熱い視線を浴びました。
実際に楽曲を耳にした際、最初に感じたあのワクワク感は忘れられません。先の展開が全く読めない構成でありながら、押し寄せるメロディーのすべてが心地よく響きます。
特筆すべきは、そのスピード感でしょう。サカナクション史上最もテンポが速いBPM180で制作されており、それが聴き手のさらなる高揚感を煽ります。
山口さんが作るメロディーには、ポップでありながら歌謡曲の王道とは一線を画す斬新さが宿っています。
この曲では、最初から最後まで中毒性の高いフレーズが続き、「まだまだメロディーで勝負できるんだ」という彼らの気概を強く感じさせました。
サウンド面のクオリティも、相変わらず群を抜いています。音の作り込みは非常に緻密ですが、決して耳障りなゴチャつきはなく、驚くほどスッキリとまとめられていました。
この絶妙なバランス感覚こそ、山口さんをはじめとするサカナクションという職人集団だからこそ成せる技ではないでしょうか。新曲を発表するたびに未知の音楽体験を提示してくれる彼らには、もはや凄まじい貫禄すら漂っています。
2.まじで、サヨナラべぃべぃ / Vaundy
是枝裕和監督の短編映画『ラストシーン』のテーマソングとして書き下ろされた楽曲。
同世代の方ならイントロを聴いた瞬間に「おっ?!」と反応してしまったはず。
どこか2000年代のフォークロックを彷彿とさせる、クリアな音像と淡い空気感。
特定のアーティストに似ているわけではありませんが、MONKEY MAJIKやサニーデイ・サービス、あるいは初期のいきものがかりといった、あの時代の音楽たちが持つ手触りを感じます。
渋谷系やネオアコのような気だるさを纏いつつ、より無骨に仕上げたような印象です。
平成のフォークやロックを通過してきた世代にとっては、直感的に「好きだ」と思わされる魅力が詰まっています。
一方で、タイトルや歌詞選びのセンスは極めて「令和」的である点が面白いところです。懐かしいメロディーと現代的な感性が同居しており、今この時代にVaundyさんが手掛けるからこそ生まれた名曲だと言えるでしょう。
「踊り子」で往年のダンスミュージックを再解釈したかと思えば、「恋風邪にのせて」では90年代風のJ-POPを披露するなど、彼はあらゆるジャンルを自分のものにしてしまいます。
単なる模倣ではなく、必ず「新しさ」を盛り込んで現代のポップスへと昇華させるセンスは、まさに職人技です。
3.巡ループ / Perfume
Perfumeといえば、結成25周年、デビュー20周年という大きな節目である2025年をもって「コールドスリープ(活動休止)」に入ることが発表されましたね。
デビュー以降、躍進していく姿をリアルタイムで見てきた世代としては、感慨深い思いがあります。
そんな彼女たちが活動休止前のラストイヤーにリリースしたのが、ドラマ『ちはやふる-めぐり-』の主題歌でもある本作。
これまで近未来を象徴するアイコンとして音楽シーンを牽引してきた彼女たちですが、この「巡ループ」からはどこか「懐かしさ」というテーマが伝わってきます。
特に印象的なのが、Aメロのメロディーラインです。
プロデューサーの中田ヤスタカさんが手掛ける楽曲は、短いフレーズを繰り返すことでダンスミュージック特有のノリを生む構成が多いのですが、今回は打って変わって流麗な「歌謡曲」や「演歌」を彷彿とさせるメロディーが綴られています。
ゆったりとしたテンポと、しっとりとした歌い方も相まって、これまでのPerfumeのイメージを覆すような斬新さを感じました。
デビュー当時は賛否両論あった「機械的なボーカル」も、今や唯一無二の個性として定着しています。その完成されたスタイルの先で、あえてこうした新しい姿を見せてくれたことに驚きを隠せません。
一方で、サビに入るとお馴染みの「ヤスタカ節」が鮮やかに炸裂します。メロディー、サウンド、ビートのすべてがPerfumeであり、中田ヤスタカそのもの。
紅白歌合戦でのパフォーマンスも記憶に新しいですが、熱烈なファンならずとも、胸に熱いものが込み上げてくるような説得力がありました。まさに、彼女たちの集大成にふさわしい珠玉の一曲と言えるでしょう。
4.もののけはいないよ / 古山菜の花
2025年で最も衝撃を受けたと言っても過言ではない一曲。
彼女はYouTubeのオーディション企画「音楽進化論」の第2弾で優勝を飾ったシンガーソングライターです。
歌や演奏の素晴らしさはもちろんのこと、特筆すべきは「古山菜の花」というアーティストとしての総合的なデザイン性の高さです。
このビジュアルで、この歌詞を、この声で歌う。その世界観とキャラクター像が完璧に合致しており、歌い出しの瞬間から彼女の世界へと一気に引き込まれてしまいます。
グループに比べて個のキャラクターが重要視されるシンガーソングライターにおいて、彼女のセルフプロデュース能力は群を抜いていると感じました。どこまでが素顔で、どこからが演出なのか。その境界線を感じさせない独特のオーラが、聴き手を惹きつけて止みません。
楽曲そのものに目を向けると、「令和のたま」というキャッチコピーにも深く納得させられます。「たま」の中でも特に知久寿焼さんの系譜を継ぐ音楽性だと言えるでしょう。
ミステリアスな風貌やメロディーラインに知久さんの面影を感じつつも、彼女は決して単なる模倣には留まりません。
影響を昇華させ、しっかりと「古山菜の花」の音楽として成立させています。不気味さのなかに漂う彼女特有の愛嬌も、大きな魅力のひとつです。
ちなみに、オーディション後には知久寿焼さん本人との共演も果たしています。お二人でこの楽曲を演奏する貴重な映像も公開されていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
5.Our Broken Promises / No Buses
「Our Broken Promises」
タイトルの意味を紐解くと、「果たされなかった約束」といったニュアンスでしょうか。
現代のロックシーンにおいて、No Busesは極めて重要なバンドの一つと言えるでしょう。
NOT WONKやHomecomingsなどと並び、世代を代表する存在です。
実はデビュー当初から密かに注目していたバンド… いや注目していたロックファンは多いけど。
デビュー当初はガレージ・ロックのような荒々しい側面が目立ちましたが、近年はより洗練されたサウンドへと進化を遂げています。
本作が収録されているアルバム『NB2』は、3人体制となってから初めて発表された作品です。まさに新章の幕開けを彩る一枚であり、その内容は非常に意欲的、かつ実験的な試みに満ちています。
中でもひときわ印象に残ったのが、この「Our Broken Promises」でした。エネルギッシュなギターが鳴り響くイントロから、流れるように紡がれる繊細な日本語詞に、思わず心を打たれます。
特筆すべきは、その日本語の聞かせ方です。
発音や譜割りが、いわゆる「歌謡曲」のルールとは一線を画しています。
R&B的なアプローチとも、英語風の日本語とも異なる、自然体な異国感というか…
日本語詞に新たな可能性を提示したような、「こんな表現もアリなんだ」という驚きを与えてくれました。
正直、派手さやキャッチーさを前面に出した「華のある」楽曲ではありません。
しかし、良質なメロディーと漂う空気感には、言葉で表しがたい確かな魅力が宿っています。
初めてくるりの「ばらの花」を聴いたときのような、じんわりと「日本のロックはいいな」と思わせてくれる名曲でした。
リリース以降何度も聴いていますが、本当に飽きの来ない楽曲です。個人的には1位の最有力候補かも…
6.アンチソーダにいわせれば / The Otals
日本にロックが登場して以降、メインストリームの影に隠れて細く長く続いてきたのが「シューゲイズ」という文化。
スピッツだったり、スーパーカーだったり、2000年代以降はきのこ帝国がいたり…
轟音に包まれる心地よさを求めたミュージシャン、リスナーは絶えません。
そんな「シューゲイズ」ですが、令和のロックシーンではひとつのトレンドとなっています。
露骨なバンプ・リスペクトな流れは終焉を迎え、一周回ってくるりやスーパーカーの影響が色濃くなってきている気がします。
中でも、2021年に登場した「The Otals」は「世界一とっつきやすいシューゲイザー」を掲げ、音楽シーンに新たな風を巻き起こしました。
男女のツインボーカルは、それこそスーパーカーを彷彿させますが、
メロディーやコードワークには、平成のアイドルのような景気の良さを感じます。
そんなThe Otalsが2025年の7月にリリースしたのが「アンチソーダにいわせれば」。
轟音ギターの暑苦しさと、疾走感溢れる爽やかなビート、みずみずしいボーカル…ひと夏の思い出を閉じ込めたような世界観。これぞThe Otalsの真骨頂!
あとはやっぱり歌詞が良い!
タイトルからも分かる通り、言葉選びがユニークで面白いんですよ
今後どんな音楽を作ってくれるのか期待が高まります。今年の夏も楽しみだ。
7.metro / kurayamisaka
令和のシューゲイズ・ブームで忘れてはいけないのが「kurayamisaka」の存在。
デビュー以降SNSを中心に話題を集め、2024年にはフジロックにルーキー枠として出演。
迎えた2025年にはメインステージで楽曲を披露しました。
今最も注目されているロックバンド、と言っても過言ではないかもしれませんね。
2025年には初のフルアルバム『kurayamisaka yori ai wo komete』をリリース。
すげーんだ、これが。
重厚感のある壮大な表題曲や、
スーパーカーやナンバーガールを思わせる気だるげなロックナンバー「sekisei inko」といった名曲だらけの珠玉のアルバムですが、中でも気に入ったのが「metro」という曲。
重くゆったりとした楽曲が多い中で、鋭く光る疾走感がたまらない。
ソリッドなギターサウンドが緊張感を生む一方、伸びやかなボーカルが同時に心地よさも感じさせてくれる。
ミクスチャー文化が台頭した現代のロックシーンに燦然と輝くストレートなロックチューンです。
たまらないですね。最高!!
8.サンフェーデッド / 篠澤広(初星学園)
轟音のギターロックが続きます。
シューゲイズの波は「アイマス」にまで到来!
アイドル育成SM「学園アイドルマスター」に登場するメインキャラクター・篠澤広は、新時代のアイドル像として音楽界を賑わせています。
その真骨頂とも言えるのが2025年にリリースされた「サンフェーデッド」でしょう。
楽曲を手掛けたのは、令和を代表する最先端アーティスト・長谷川白紙。
大阪万博の開会セレモニーの音楽を担当するなど、幅広い活動をなされていますね。
2024年リリースのアルバム『魔法学校』もすごかった!2024年のアルバム企画でも紹介しましたね。
ピアノやキーボードをメインとしたエレクトロやジャズを得意とする長谷川さんですが、
今回はなんとギターロック!
くぐもったサウンドに乗せた、不安定なメロディーと、哲学的な歌詞。
キャッチーさのキャの字もない楽曲に、何だこれは?!と驚いたのも事実。
しかし、気づいた頃には、緻密に構築された音の数々と「篠澤広」の世界観の虜に。
長谷川白紙の音楽は「何だこれ?」ではじまり「何だこれ!」へと変化していく、圧倒的な魔力がありますね。
理解不能なようでいて、要所要所では「引っかかり」となる要素が入っていて、妙に耳に残るんですよ。なんか気になる、っていうか。
それは細かく刻まれたブレイクビーツだったり、突飛な展開だったり、不協和音であったり。
あるいは篠澤広の歌声だったり、ミステリアスな面影だったり。
アイドル事変とはまさにこのこと(←作品が違う)。
9.YOU / 家主
はい、ロックが続きます。「幅広く取り上げた」というのは何だったのでしょうか。
令和のロックシーンを牽引するバンド・家主からの選出です。
昨年はボーカル・田中ヤコブさんのソロ楽曲を選んだので、そういう意味では2年連続となります。
家主のロックも、かなり独特なものでして…はっきりとしたルーツを感じさせないんですよね。
バンプでもないし、ナンバーガールでもないし、ハイスタとかではもちろんないし…
強いて言えば、くるりとか中村一義、スピッツなのかなぁという気もしますが。
でも間違いなく「日本のロック」なんですよ。懐かしい感じがするし。
2023年リリースのアルバム『石のような自由』がとにかく素晴らしくて、もう家主のロックは完成したな、といった印象があったのですが…この「YOU」を聴いてびっくり。
こんなにもストレートな楽曲なのに、こんなにも新鮮な気分を味わえるなんて。
家主の十八番である「ミラクル転調」がさらなる高揚をもたらし、得も言われぬ多幸感に包まれます。
あと、シンプルに演奏が良いよねエネルギッシュで。
ステイ・ゴールド、フォーエバーヤングの精神を体現したような一曲です。
10.最大公約数 / SEKAI NO OWARI
2025年にメジャーデビュー20周年を迎えたRADWIMPS。
それを記念してリリースされたのがトリビュートアルバム『Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-』。
米津玄師、YOASOBI、Mrs.Green Appleといった錚々たるメンバーが、RADWIMPSの名曲たちをカバーしています。それにしてもすごいメンツだ…よく集まったね。
どれも、原曲の良さを残しつつ、個性を発揮した名カバーとなっていますが、中でもお気に入りなのがセカオワの「最大公約数」。
あの時期(ラッド3,4あたり)のRADWIMPSが好きとか、セカオワドンピシャ世代とかもありますが、単純に曲の仕上がりとして一番好みでした。
僕は「カバー曲」が大好きな人間で、結構「原曲崩壊」系のアレンジもOKなタイプなのですが…
それでも重要視しているのが「原曲を聴きたくなるか&アーティストの良さが出ているか」なのです。
その点、セカオワの最大公約数は「原曲も聴きたくなるし、セカオワも聴きたくなる」という完璧な采配。
野田洋次郎の描く「等身大ファンタジー」な歌詞を、Fukaseの少年然とした等身大な歌声と、セカオワのファンタジックなサウンドで再構築するという…
名作になることが確立されたキャスティングですね。そしてやはり名作でした。
なんか、あの頃(Treeとか)のセカオワが帰ってきた!ってアレンジも良かったですね。
同世代大歓喜の仕上がりだと思います。
Vaundyの前前前世も、ヒロジのおしゃかしゃまも、最高だったね。
DISH//の携帯電話とかも、オリジナルか?ってくらい似合ってたし。
今回の企画の趣旨からは少し逸れてしまいますが、それでも良すぎたので選出させていただきました。
まとめ
2025年の個人的キーワードは「メロディー」と「シューゲイズ」!
次世代のロックサウンドとして、令和シューゲイズに注目が集まりつつも、
メロディーの可能性で勝負した名曲が生まれるなど、
「リズム」が重要視される現代シーンにおいて、新たな道が見えてきた感じがします。
インディーズのみならず、サカナクション、Vaundy、中田ヤスタカといった時代を確立したスターが新たなことに挑戦していくというのも「スゴイ」としか言いようがありません。
2020年代も後半に差し掛かり、2018年以降「令和の音楽」として一括りにされがちだった音楽のトレンドも、新たなステージに到達した気がします。
ここから先、どのような変遷を辿っていくのか…楽しみですね!



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