今回は前回の続きとして、私の好きな女性ボーカルを5人紹介したいと思います。

前回の記事「男性編」はコチラから

「男性編」同様、「バンドの構成要素としてのボーカル」をテーマに選ばせていただきました。

それでは早速!

女性編① 土岐麻子(Cymbals)

一人目に紹介するのは、”シティポップの女王”・土岐麻子(ときあさこ)さん

バンド・Cymbals(シンバルズ)の元ボーカルです。

解散後はソロアーティストとして、ご活躍されていますね。

「バンドのボーカル」がテーマなのでシンバルズ時代のお話をしたいのですが、いかんせんYouTubeにはMVが上がっていないんですよね。解散しているので無理もありませんが。

Cymbals(シンバルズ)は、ポスト渋谷系と称される3ピースバンドです。
1997年結成、1999年にデビュー、2004年に解散…と活動期間は非常に短いですがコアな人気をほこる知る人ぞ知る名バンドです。

シティポップの派生ジャンルではありますが、その特徴はとにかく明るいところ!
ベーシスト・沖井礼二さんの作るオシャレかつポップでパンキッシュなサウンドが癖になります。

それを完成させるのが、土岐麻子さんのボーカルです。オシャレなサウンドによく合う、透き通っていて美しい声。
そして、ちょっぴりお茶目で愛嬌のある歌い方がズルいです

彼女の声なくしてシンバルズの音楽は完成しない、まさに奇跡のコラボレーションです。

そして、彼女の凄さはその歌唱力。ささやくような癒しボイスで、縦横無尽に五線譜を駆け回ります
とにかく難しいんですよ。シンバルズのボーカルは。

オシャレで落ち着いた雰囲気でありながら勢いのある演奏。その一見矛盾するような音楽が彼女、そしてシンバルズの特徴です。絶妙なバランスが素晴らしい。

声の透明感や、包み込むような温かさ、芯のある強さ… まさに「歌姫」と呼ぶのにふさわしい。

彼女の魅力を味わえる、オススメの楽曲は「午前8時の脱走計画」です。
ノリが良く、茶目っ気ある歌い方に酔いしれましょう。

彼女と言えば、2021年3月にカバーアルバム『HOME TOWN ~Cover Songs~』をリリースしました。

スピッツ「楓」や、くるり「ジュビリー」、桑田佳祐「白い恋人達」など…J-POPの名曲たちを、シティポップの女王が歌います。お笑い芸人のバカリズムさんがゲストボーカルで参加していることでも話題になりました。

彼女の良さ、原曲の良さが最大限に引き出された名盤です。

女性編② フルカワミキ(SUPERCAR)

次に紹介するのが、伝説のロックバンド・SUPERCAR(スーパーカー)のベーシスト・フルカワミキ(古川美季)さん

SUPERCARは、1997年にデビューした4人組・ロックバンドです。
同年にデビューした、ナンバーガール・くるり・中村一義らとともに「’97の世代」と称され、日本のオルタナティブロックを牽引しました。

デビュー当時の平均年齢はなんと19歳!!若さ溢れる音楽が、同年代の心を強く打ちました。

2000年以降はエレクトロサウンドを取り入れた独自の路線により、「YUMEGIWA LAST BOY」「STROBOLIGHTS」などのヒット曲をリリースしますが、2005年に解散。

活動期間は短いですが、後世に与えた影響は大きく、解散から15年以上経った今でも語られる伝説のバンドです。

さて、そんなSUPERCARのベース・ボーカルが、「ミキちゃん」ことフルカワミキさん。
SUPERCARは彼女と中村弘二さんのツインボーカルスタイル。楽曲によってボーカルが異なるというのが特徴です。

バンドの特徴ともいえるのが、2人の気だるげな歌声です。ノイジーなオルタナティブロックに彼らの声が絶妙にマッチします。

中でも彼女の歌声は、とってもキュートなんですよね。若さがにじみ出た圧倒的な愛くるしさ

それに拍車をかけるのが、同バンドのギタリストで名作詞家・いしわたり淳治さんの歌詞。
素直な言葉を、ときには「~わよ」「~のね」といった表現で紡いでいます。

等身大で詩的な、ちょっぴり青臭い歌詞を、同世代の若者が歌う。なんだか現在の音楽シーンを感じさせますよね。

彼らの音楽、そして彼女の歌には、「飾らない」美しさが確かにあります。
キラキラ輝く音楽は世の中たくさん存在しますが、SUPERCARの音楽は素朴で、でもカッコよくて…

蒸し暑く閉ざされた部屋の窓を開けたときのような、そんな心地よさがあるのです。

ちなみに、彼女の声をベースとしたVOCALOIDが存在していたりします。

それが、SF-A2 開発コード mikiです。ご存知でしょうか?
正直言うとあまり知名度は高くないですよね…

とはいえ完成度は高く、彼女の特徴的な歌声が見事に再現されています。音域の広さも魅力ですね。

mikiを使った楽曲もYouTubeなどで多くアップされています。興味のある方は、是非きいてみて下さい。

女性編③ やくしまるえつこ(相対性理論)

3人目は、相対性理論やくしまるえつこさん

相対性理論とは、アインシュタインのアレではなく、バンドのことです

2006年に結成され、メンバーチェンジがありながらも現在まで活動を続けています。

代表曲に「LOVEずっきゅん」、バラエティ番組『突然ですが占ってもいいですか?』でも使われている「マイハートハードピンチ」などがあります。

「マイハートハードピンチ」が収録されたアルバム『シンクロニシティーン』はオリコンチャートで3位を記録しました。名曲ぞろいです。

さて、そんな相対性理論の中心的メンバーなのが、やくしまるえつこさんです。

彼女は「ティカ・α」名義で作詞作曲をする他、朗読やナレーション、イラストなど多岐にわたる活動を行っているマルチなアーティストです。

ボーカルとしての特徴は、なんといっても、その「声質」ですね。

高く、ささやくようなウィスパーボイス。彼女の声は、個性的…というか独特な味があります。

優しい声ではあるものの、どこか無機質で、冷たい。
非常にミステリアスなんですよね。

ミステリアスというのは、その歌声だけでなく、メディア露出が極めて少ないバンド自身の特徴でもあります。
とにかくバックボーンを感じさせない、謎に満ちた音楽集団が作る謎に満ちた音楽。その世界観の虜になる方は少なくありません。

またバンドのサウンドや、彼女の詞と良くマッチしているんですよね。

「相対性理論」や「やくしまるえつこ」の歌詞って、正直意味が分からないんですよね。
それを彼女が、淡々と歌う。すると、「意味なんてのはないのかもしれない」と思わされてしまいます。

フワフワしたサウンドや世界観に、ついつい頭もフワフワしてしまう…
可愛らしい花には毒があるのです。

女性編④ 中村由利(GARNET CROW)

4人目は、GARNET CROWの元ボーカル・中村由利(なかむらゆり)さん

GARNET CROW(ガーネットクロウ)は、1999年に結成された4人組バンド。

その一番の特徴ともいえるのが、それぞれが様々なアーティストの楽曲制作に携わっている「クリエイター集団」であるということ。自身の楽曲もメンバー自らが編曲まで行うスタイルが基本です。

ジャンルとしては、ルーツをネオアコに持つオシャレなバンドサウンドが軸にありますが、その幅の広さも魅力的です。

2013年にバンドは解散。しかし、2020年にはデビュー20周年を記念して様々な企画が行われるなど、今なおその人気は続いています。

GARNET CROWと言えば国民的アニメ『名探偵コナン』への楽曲提供で知られていますね。
「夏の幻」や「Mysterious Eyes」「Over Drive」など、全11曲を担当しました。
※GARNET CROWの所属事務所ビーイングのアーティストが担当するというのはもはや伝統ですね。

そんなGARNET CROWの魅力はやはり、作曲担当でありボーカルの「ゆりっぺ」こと中村由利さんの「歌声」にあるでしょう。

彼女の声は、とにかく美しい。そしてカッコ良い。

音域は比較的低く、その落ち着いた雰囲気がノスタルジックで大人びた楽曲とよくマッチしています

また、彼女は歌い方にちょっとクセがあります。独特なアクセントの置き方や絶妙なリズム感…

それが、ポップでイケイケなダンスミュージックをより印象的にしたり…

バラードではささやくように優しく歌ったり、とにかく彼女は楽曲に合った、というか沿った歌い方をするのが上手いなぁと感じます。メロディーやオケとの相性というか、距離感が丁度良いです

また、AZUKI七さんの歌詞が持つ独特な世界観とも相性が非常に良い気がします。

GARNET CROWはその調和のとれた音楽が心地よい。奇跡の芸術ですね。

女性編⑤ 中野ミホ(Drop’s)

女性編ラストを飾るのは、ロックバンド・Drop’sのボーカル、中野ミホさん

Drop’sは、2009年に結成された北海道出身のガールズバンドです。

ガールズバンドと言えば、ポップでキャッチーなバンドが多い印象ですが(プリプリとか、SHISHAMOとか)、こちらのDrop’sの魅力は、その渋さ

ブルースやロックンロールをルーツに持つ硬派なイメージがかえって新鮮に感じられます。
また、詩的で哀愁漂う歌詞も雰囲気があって素敵です。

その硬派で重々しいサウンドをリードするのが、ボーカルの中野ミホさんです。

バンドの持つロックな雰囲気に相応しい、パワフルでクールな歌声が痺れます。

彼女の歌の魅力と言えば、その声でしょう。

どっしりとして、深みのある低音。そして、割れるような鋭く刺さるような強い高音。
この二つを活かしたハリのある歌が素晴らしい

また、エッジボイスを用いた語りかけるような歌い方も、歌詞やブルースの魅力を引き立てます。

力強く、心の底から響き渡るソウルフルな歌声に思わず、引き込まれてしまうのです。

余談ですが、Superflyさんも同タイプのボーカリストと言えると思います。
Drop’sも結成当時は、Superflyのコピーをやっていたそうですよ。

パワフルでカッコイイ、伸びやかな歌声ですよね。本当に、ウットリしてしまいます。

シンプルでスカスカなサウンド(これは、誉め言葉です)や、いい意味でガールズバンドらしくない渋すぎる雰囲気が、面白いです。
はじめて聴いたとき、「アリだ!」と思いました。

まとめ

いかがだったでしょうか。

男性編に比べると、マニアックで曲者揃いな気がしますね…
幅広い「魅力」を取り上げることが出来た点では、大満足しています。

何度も言うように「バンドで活きるボーカル」に焦点をあててやってみましたが、バンドの雰囲気や方向性によってその「声」が変わってくるのが面白いですね。

落ち着いた曲には落ち着きのある綺麗な歌声。力強いロックには、力強い歌声。

人には人の、楽曲には楽曲の、「合う声」というのがある気がします。

様々な視点から「歌声」を聴くことで、新たな魅力に気づけたり…

音楽の楽しみ方は、無限大です。