80~90年代の音楽界 …中でも一部の若者の心を掴み、日本の「ポップミュージック」を牽引した音楽ジャンル・渋谷系。
代表的なミュージシャンといえば、
爽やかで洋風なギターポップで日本の「ネオアコ」をリードした「フリッパーズ・ギター」や、オシャレでありつつもどこか中毒性の高いポップスで、後世へ多大な影響を与えた「ピチカート・ファイヴ」などが挙げられます。
このジャンルの特徴といえば、ジャズやファンクなどのいわゆる「ブラックミュージック」の要素を取り入れた「オシャレで甘いポップス」だと思います。
近年再注目されている「シティポップ」との共通点も多いですね。
…というか、そこら辺の明確な住み分けってされてないんですよね。
イメージとしては渋谷系の方が「明るい、爽やか」な感じがします。
昼や夜に聴きたいのがシティポップ、朝に聴きたいのが渋谷系…といいますか。
まぁでも、曖昧で適当なところも渋谷系の魅力のひとつです。ラフな感じがいいんですよ。
ぶっちゃけ…「新しい!」「楽しい!」「おしゃれ!」と思えば、全て渋谷系です(極論)。
また、渋谷系の特徴のひとつに、「サブカル感」というものがあると思います。ちょっとマニアックというか、オタク気質というか…
オシャレで特徴的な音楽性はある種「電波」的な魅力を持ち合わせることがあるんです。ピチカート・ファイヴなんかは特にそうですね。
2000年代以降、「渋谷系」というワードが音楽界で用いられることは少なくなりました。
…が、決して渋谷系の音楽がなくなったというわけではありません!!
というかむしろ、渋谷系は形を変えながらも日本の若者たちの心を掴み続けています!
さらには、シティポップ同様…令和に入ってからというもの「アイドル」や「アニソン」 …サブカル音楽における渋谷色が色濃くなってきています。
そんなわけで、今回は2000年代以降を代表する「渋谷系アイドル」を7組ご紹介いたします。
これを見れば、いかに渋谷系が現在のJ-POPに多大な影響を与えているかがよくわかるのではないでしょうか?
①Perfume
一組目は、2000年代を代表する国民的…というか、もはや世界的アイドルグループ・Perfume。
AKBなんかに比べると「アイドル感」は薄く、どちらかというと「アーティスト」という言葉の方がしっくりくるかもしれません。
このグループの魅力といえば、3人が織りなすアーティスティックな世界観と、「近未来」を感じさせる特徴的な楽曲ですよね。
楽曲を手掛けるプロデューサーの中田ヤスタカさんは、渋谷系をベースに、EDMやHip-Hopの要素を取り入れ、ワールドワイドな音楽を構築しました。まさに「2000年代以降の渋谷系」を代表する存在です。
Perfumeがなぜアイドルっぽくないかというと、やっぱりこう…スタイリッシュな感じがするからだと思うんですよね。
同時期のAKB48とか少し前のモーニング娘。なんかは、「あどけなさ」とか「少女らしさ」「初々しさ」みたいなものをひとつの売りとしていたと思うんですよ。
「応援したくなる」みたいなファンがたくさんいて、一緒に成長していくのが醍醐味といった感じでしょうか?
モー娘なんかは特にそうですよね。「ASAYAN」でオーディションをやっていましたし。
一方のPerfumeはというと、2007年リリースの「ポリリズム」で一気に知名度を上げ、TV出演もグンと増えたと思いますが…出てきた時から結構「完成されている」感じがありましたよね。
動きもビシッとしていて、みんな大人っぽい。「女子が憧れるアイドル」という印象でした。
このポジショニングはKARAや少女時代をはじめとした韓国アイドルにも共通する部分がありますね。最近だと、BLACKPINKやPRIKILなどでしょうか?
個人的にはPerfumeのヒットがなければこの路線のアイドルたち(日韓問わず)がここまで流行することはなかったんじゃないかなぁなんて思ったりもします。
それだけ「Perfumeの登場」は音楽界にとって大きな出来事だったんです。
そんなPerfumeでオススメのアルバムは、やはり2008年の『GAME』でしょう。代表曲「ポリリズム」をはじめ当時の人気ナンバーが多数収録されています。
個人的には「マカロニ」が大好きで…という話はコチラの記事をご覧になってください。
②きゃりーぱみゅぱみゅ
お次に紹介するのは、これまた中田ヤスタカさんプロデュースのアーティスト・きゃりーぱみゅぱみゅ。
彼らしさ溢れる「近未来」なエレクトロミュージックが光りますが、Perfumeに比べると少しカジュアルな雰囲気です。
おもちゃ箱をひっくり返したような少しゴチャゴチャとした世界観は「きゃりーわーるど」なんて呼ばれていますね。
中毒性が高い楽曲が多く、いわゆる「電波系」な雰囲気もあります。この辺はピチカートの小西康陽さんや音楽家・宮川彬良さんを彷彿とさせますね。
また、きゃりーといえばその個性的なファッションでも注目を集めました。音楽とファッションの両面から若者カルチャ―を牽引するのも「渋谷系」らしさだと思います。オザケンとかね。
きゃりーの楽曲って、タイトルとか歌詞とか…ちょっとオフザケな感じがするじゃないですか?
遊び心があるといいましょうか。
それもあって、ちょっとチープなイメージを持ってる方も少なくないと思うんですよね(私もそうでした)。
でも、数年前にあらためて全曲聴き直してみたんですよ(サブスクって便利!)。
さすがはヤスタカさん… どれもこれもめちゃくちゃオシャレじゃないですか!!
聴き馴染みやすさとか、盛り上がりとか電波とか…きゃりーぱみゅぱみゅが持つ「ポップさ」の中にしっかりと洗練されたオシャレな音楽が存在しているんですよ。
「ファッションモンスター」とか超キレッキレですからね…カッコいい。
だからあんなに大衆的でありながら、唯一無二の個性があるんだなぁ、と感心させられました。
オシャレでスタイリッシュなのに、カジュアルなところがやっぱり魅力的ですよね。だからこそ若者にも支持されるんでしょう。この辺は渋谷系カルチャ―全体に言えることかもしれません。
Perfumeときゃりー、
中田ヤスタカは渋谷系だけでなく、日本における「フューチャーベース」をリードする存在ですよね。
フューチャーベースはその名の通り近未来を感じさせる音楽で、EDM(エレクトロニックダンスミュージック)の1ジャンルなのですが、けっこう渋谷系とは親和性が高いです。
近年急速に拡大するEDM需要も、もしかしたら中田ヤスタカがもたらしたのかも???
③Negicco
2003年から地元・新潟を中心に活動を続けるアイドルグループ「Negicco」。
そのキャリアや人気、知名度から「ご当地アイドル」や「ローカルアイドル」の先駆け的な存在です。
いわゆる「ご当地アイドル」は、地元のPRを目的として活動している、地元密着型のローカルタレントであることが多いですが、Negiccoに関しては全国区の知名度を誇る大物アイドルですね。
「ご当地アイドルが全国に進出する」というモデルの代表例でもあります。
また、20年近い歴史を持ち、メンバー全員が結婚してなおアイドルを続けているという特徴もあります。なんか、いいですよね。
アイドルとしての枠組みを超えた愛され方だと思います。素晴らしいグループですね。
さて、そんなNegiccoですが音楽の面で見ても、非常に優れたアイドルです。
プロデューサーのconnieさんは、「渋谷系」のファンでNegiccoの楽曲にもそれが良く表れています。
そのため、Negiccoは新潟のみならず全国の渋谷系愛好家から支持されるようになり、
ピチカート・ファイヴの小西康陽さんや、オリジナル・ラヴの田島貴男さんなどの渋谷系アーティストが楽曲を提供したりしています。
また、メンバーのKaedeさんのソロプロジェクトには、曽我部恵一さんや、TRICERATOPSの和田唱さんなどのロックミュージシャンが参加し、ロックファンの間でも支持されています。
音楽が高い評価を得るということは、それだけメンバーの技量やセンスがハイレベルであるということです。人気にも納得ですね。
④フィロソフィーのダンス
前述のPerfumeや、韓国アイドルのブレイク…さらには欅坂46(現・櫻坂46)などの登場により、若者を中心に「スタイリッシュなアイドル」が人気を集めるようになりました。
「同性が憧れるアイドル」というのが2010年以降のひとつの特徴だと思います。ジャニーズ好きの男子とかも昔より「当たり前」になってきた気がします。
特に女性アイドルは、可愛らしさよりもカッコイイ、大人っぽいなどの要素が重視されている気がします。BiSHとか、BABY METALとかね。
そんな中、今アイドル業界で人気を伸ばしつつあるのがアイドルグループ「フィロソフィーのダンス」です。
変わったグループ名ですよね。
私は、この名前を初めて聴いたとき「コンテンポラリーダンス」みたいに音楽ジャンルや踊りの種類だと思っていました。
こういったグループ名っぽくないグループって増えた気がします。「助詞」が入るとか、文章っぽくなってるとか。
「SEKAI NO OWARI(元・世界の終わり)」あたりが先駆けなのかなぁという気がします。
「神様、僕は気づいてしまった」とか、もはや曲名なのかアーティスト名なのかわからないものもありますよね。
そんなフィロソフィーのダンスの特徴といえば、唯一無二の音楽性です。
とにかくカッコいい。
ファンクやソウルミュージックの要素を取り入れたダンスロックが魅力的です。ちょっとアメリカンな香りがします。
力強い歌声が、サウンドによくマッチしています。ちょっぴりディープな世界観がクセになるんですよね。
2020年には、満を持してメジャーデビュー。
更には、2021年末にアニメーション映画『フラ・フラダンス』の主題歌も担当し、話題を集めた彼女たち。
今後の活動にも期待です。
⑤DIALOGUE+
社会現象にもなった言わずと知れたコンテンツ「ラブライブ!」。
この登場を機に、声優がアイドル業を行うという文化が一般的になりました。アイドルになるために声優養成学校に通ったり、オーディションを受けるという方も少なくないようです。
歌も上手くて、顔も可愛い、さらにはダンスもできる…など、もはや「声優」であることを忘れてしまいそうなほどマルチな能力が問われる存在です。
「バンドリ」なんかは楽器も演奏しますからね…
さて、そんな大人気の「声優アイドル業界」で、今最も注目されているのが「DIALOGUE+(ダイアローグ)」ではないでしょうか?
DIALOGUE+は8人組の女性声優アイドルグループです。
プロデューサーは、「シュガーソングとビターステップ」で一世を風靡した人気バンド・UNISON SQUARE GARDENのベーシスト・田淵智也さん。
ポップ且つテクニカルな音楽は渋谷系にも通じる部分があり、ロックファンのみならず渋谷系愛好家からも絶大な支持を誇るバンドですよね~。
そんなユニゾンの音楽性をよりポップでアイドルらしく変化させたのが、DIALOGUE+の音楽ではないでしょうか?
オシャレで複雑で、可愛らしい…
これは近年のアニソンと渋谷系に共通した要素だと思います。緻密でオシャレなアニソンって増えましたよね。
このムーブメントを牽引したのが、アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」や「化物語シリーズ」の音楽を担当した作曲家・神前暁さんだと思います。
彼をはじめとして、田中秀和さんや広川恵一さんなど… 音楽プロデュースグループ「MONACA」の面々が以降のアニメ業界を盛り上げました。
「神前暁ファン」や「秀和推し」といった、作曲家にハマるというアニソンファンも少なくありません。
DIALOGUE+には、上述の田中さん広川さんといった人気アニソンメーカーが参加しているんですよね。
そのため、アイドル好き、声優好き、アニメ好き、作曲家好きなど…様々な入口からのファンが多いのが特徴です。
「アニソン」や「声優アイドル」の新しい盛り上がり方といった感じがします。
2021年にリリースした1stフルアルバムがオリコン6位にランクインするなど注目度の高さをうかがえます。
これから、彼女たちメンバー、そして作曲家たちがどのような世界を見せてくれるのか楽しみです。
⑥さよならポニーテール
次に紹介するのは、音楽グループ「さよならポニーテール」。
素性を明かさない活動スタイルが人気のミステリアス集団ですね。
2011年のデビュー以来、幾度かのメンバーチェンジを繰り返し、2022年4月現在は5人のボーカルと、数人のソングライター(+α)により構成されています。
正直なところ、何人グループなのかもイマイチよくわからない…なんとも不思議なグループです。
そして、彼女らを「アイドル」の括りで紹介することに対しての是非も微妙なところ…
とはいえアイドル専門の音楽レーベル「T-Palette Records」に所属しているため(上述のNegiccoも)、一応アイドルとして紹介させていただきます。
彼ら、彼女らの音楽の特徴としては、スピッツや小沢健二を彷彿とさせる爽やかなギターポップと、ブラックミュージックの要素を取り入れたオシャレなシティポップ、ファンクミュージックの融合…まさに、渋谷系!といった感じです。
初期の頃は「ネオアコ」色強めな、バンドサウンド中心でしたが、近年はHip-Hop…いわゆる「チル」な感じの音楽が増えてきた気がします。
この辺の変遷は、渋谷系と呼ばれるアーティストに結構よく見られるムーブメントなんですよね。
Awesome City Clubとか、never young beachとか…
個人的には初期の楽曲が好きだったりします。中でもデビュー作『魔法のメロディ』は名盤ですね。
「ナタリー」や「放課後黄昏交差点」など、とにかく名曲づくし!
とにかくメロディーが綺麗なんですよね。Aメロ→Bメロ→サビの流れがどれも素晴らしい。
個性豊かなボーカルが織りなす、音域の広さが魅力ですね。ちょっとあのメロディーラインは1人だと歌えない気がします。
「さよポニにしかできない音楽」というのを早い段階で見出している気がします。メンバーのプロデュース力に脱帽です。
「もっと有名になって欲しい!」と思うファンの方も少なくないはずです…が、知る人ぞ知るな活動を続けていって欲しい気もしたり…
YOASOBIやヨルシカなど、近年話題のミュージシャンにも通づるものを感じます。その辺の音楽が好きな方は是非一度お聴きになってみてはいかがでしょうか?
⑦RYUTist
最後に紹介するのは、アイドルグループ「RYUTist」。
Negicco同様、新潟を拠点に活動しているローカルアイドルです。凄いですね、新潟。
新潟の愛称「柳都(りゅうと)」からとられたんだとか。
2011年の結成以降、新潟ローカルのCMにも多数出演するタレント的な一面もあります。
「地元密着」といった感じがしていいですよね~
さて、そんなRYUTistですが、音楽のレベルが高い!
王道アイドルなサウンドが良いですね。J-POPらしい、日本らしい音楽性です。
とにかく参加アーティストたちが豪華なんですよね。
ももクロやアニメ・アーケードゲーム『プリティーシリーズ』などへの楽曲提供で知られるKOJI obaさんをはじめ、永井ルイさん(i☆Ris、イヤホンズ‥)、The Pen Friend Clubなどなど…
中でも、2018年に渋谷系の重要バンド・Cymbalsのベーシスト兼プロデューサーの沖井礼二さんが参加したことが話題になりました。というか「TWEEDEES」ですね。
沖井さんといえば、田中秀和さんら多くのアニソン作曲家に多大な影響を与え、自身も数多くのアイドルソング、アニメソングを手掛ける名手ですね。渋谷系アニソンの生みの親と言ったところでしょうか?
以降、Kan Sanoさんやパソコン音楽クラブなど近年の音楽界をリードする名ミュージシャンが彼女たちの音楽を支えています。
いまいちピンと来ない方も多いと思いますが、凄いことなんですよ?
これを実現したのは間違いなくRYUTistメンバーの高いポテンシャルでしょうね。彼女たちの歌の力があるからこそ成り立っているのは言うまでもありません。
新潟ローカルからスタートしたとはいえ、もはや全国区の人気を誇ります。
フレッシュさとスタイリッシュさをどちらも持ち合わせた絶妙なラインなんですよね。
このポジショニングは渋谷系との相性が良い気がします。Negiccoなんかもそうかもしれません。
そんなわけで、渋谷系や日本のアイドルソング、アニメソングなど…とにかく日本が誇るJ-POPを全面的に押し出した名アイドルです。ご当地アイドル、侮るなかれ。
まとめ
今回は「渋谷系」を感じられるアイドルを7組紹介しました。
渋谷系というのは非常にあいまいな音楽ジャンルです。人によっては「これは渋谷系じゃない気がする…」と思った方もいらっしゃるかと思いますが、その辺はご愛嬌ということで…
何度かブログ内では書いているのですが、2000年以降のアイドルソングやアニメソングは、本当に渋谷系の影響を強く感じます。ヒャダインさんや神前暁さんなんかもそうです。
基本的に、メインストリームはよりオシャレな方向へと進んでいる気がするんですよね、ここ十数年は。
ロックもそうですよね。ゲスの極み乙女。だったり、サカナクションだったりKing Gnuだったり…
そして、従来のポップで可愛らしいアイドルソングをオシャレ化した結果が今の渋谷風スタイルなんだと思っています。時代が渋谷系(ピチカート)に追いついたというか、流行が巡り巡ったというか…
近年のシティポップブームによる影響もあると思います。あとはボカロですね。
とにかく様々な要素が奇跡的に交わりあって、現在のポップスシーンが出来上がっているのだと思います。そう考えるとロマンティックですよね!
今後はどんなアイドルグループが登場するのでしょうか? 楽しみです。
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