2024年も数々の名曲が世に送り出されました。
米津玄師やBUMP OF CHICKENといったトップアーティストが新しいアルバムをリリースしたほか、
令和の音楽シーンを担っていくであろうニューカマーも渾身の一作を発表。
今回は、今年リリースされた楽曲(シングル、アルバム曲問わず)の中から
個人的に気に入ったもの、紹介したいものを10曲厳選。
要するに個人的な2024年ベストソングスを決定いたしました。
それではさっそくご紹介↓
1.ぬけがらの海 / 田中ヤコブ
ロックバンド「家主」のギターボーカル・田中ヤコブさん。
ソロ名義では4作目となるアルバム『ただようだけ』が2024年にリリースされました。
ギターのみならず、全てのパートを演奏し、レコーディングからMIXまでもを手掛ける職人です。
このスタイルや、音楽センスは90年代に登場し「天才」と謳われたシンガーソングライター・中村一義を彷彿させます。
さて、そんな4thアルバムから、「ぬけがらの海」を選出。
MVも制作されており、アルバムを象徴する楽曲となっています。
(アルバムside Aの1曲目ですね)
シンプルながら美しいピアノによる伴奏に乗せたのびやかでありながら繊細で緊張感の漂うメロディーとボーカル。
そこからドラムやギターが加わり一気に開放感のある壮大なアレンジへと切り替わる。
そして、なによりもそこに乗せたパワフルでエネルギーに満ちたコーラスワークが何とも印象的です。
なんとなくthe beatlesの「All I Need Is Love」を思い起こさせますね。
そこから先の、なんともつかみどころのないフワフワとしたメロディーラインと、流れるような展開も癖になる。
令和の時代に、ここまでも「人間臭い」音楽を、こうも飄々と、それでいて緻密にやってしまうとは。
バンドとしても2024年は、スピッツ主催イベント「豊洲サンセット2024」に出演するなど、
さらなる注目を集めた1年となりました。
バンドでも、ソロ活動でも今後の躍進が楽しみな逸材です。
2.地下鉄の揺れるリズムで(feat. 村上基) / スカート
2000年代以降、東京のインディーズシーンを牽引してきたシンガーソングライター・澤部渡。
そのソロプロジェクトである「スカート」が、今年新しいアルバム(全5曲)をリリースしました。
『Extended Dreams Vol.1』と題した本作は、5組のゲストを迎えた、スカート初のコラボアルバム。
adieu(上白石萌歌)や、パソコン音楽クラブといった現代のJ-POPシーンを担うアーティストが多数参加しています。
中でもひときわ目に(耳に?)止まったのが1曲目の「地下鉄の揺れるリズムで」という楽曲。
在日ファンクのメンバー・村上基さんをゲストに迎えた本楽曲は、
鮮やかなホーンセクションが心地良い、ポップなナンバー。
この曲の歌詞を見て、ピンと来る方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこれ…
ピチカート・ファイヴの楽曲「陽の当たる大通り」のインスパイアソングとなっています。
多幸感のあるサウンドが、まさに90年代の「渋谷系」!
2021年にはPUNPEEさんとのユニット曲「ODD TAXI」で、「ブギーバック」なノリを見せていただけに、今回のアプローチには、おもわずニヤリ。
スカート自体は「渋谷系」を全面的に押し出した活動はしていませんが、
それでも2010年代以降の渋谷系音楽に与えている影響は大きいと思います。
シンプルなバンドサウンドの楽曲が多いスカートですが、打ち込み系のダンスミュージックにも
こういった厚みのあるポップスサウンドにもマッチするのが改めてよくわかりました。
3.抱きしめて / 花譜&崎山蒼志
新時代の歌姫「花譜」さんと、令和の音楽シーンを牽引する天才・崎山蒼志。
2024年、この二つの才能がついに共演。
その名も「抱きしめて」。
この楽曲は花譜さんのコラボ企画の第二弾としてお披露目された楽曲です。
正直これまで花譜の音楽に触れてこなかった自分にとって、崎山蒼志とのコラボは、
「もう、聴くなら今しかない」と思わせてくれる非常に興味深いものでした。
崎山蒼志さんといえば、ネット番組に登場し披露した「五月雨」が注目を集め、
高校生にして早くも音楽業界の新星として第一線に君臨した天才。
近年では、『僕のヒーローアカデミア』や『呪術廻戦』といった人気アニメの主題歌も手掛けています。
シンプルなアコギの弾き語りから、切れのあるバンドサウンドの楽曲まで、ユニークなセンスをヒアkらせています。
本楽曲も崎山さんが作詞作曲を担当。
彼らしい、洗練されつつも野性味のあふれるエネルギーに満ちた楽曲となっています。
そしてそこに合わさった花譜さんの唯一無二の歌声。
彼女の歌声は独特な「耳ざわり」を持っています。
ウィスパー気味の繊細な声なのに、厚みが凄い。
charaさんやクラムボンの原田郁子さんのような魅力を感じました。
繊細で美しい音像に乗せた両者の温かみのあるボーカルが、心地よい空間を作り出しています。
4.相思相愛 / aiko
ここにきて、aikoです。
2024年の劇場版名探偵コナン『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の主題歌ですね。
一昨年はバンプのクロノスタシス、昨年はスピッツ・美しい鰭という…
なんといいますが、コナンのメインターゲット層が見えてくる選出なわけですが。
正直なところ、今まであまりaikoを聴いておらず、この曲を機に今のaikoに触れたという感じなのですが…
やっぱりすごいですね。
しょっぱなの「サビ」を聴いて、もう好きになりましたね。
あの繊細でポップなメロディーに、ストレートだけど奥行きのある歌詞が、もう
本当に、ため息が出たっていうか… サラッとこういうことしてきちゃうんだよなぁっていう。
アレンジは歌い方ではなく、「メロディー」で切なさを表現するというのは非常に難しいことだと思っています。
aikoさんのメロディーセンスであり、才ですよね
出だしの4小節は、本当にすべてが調和した完璧なものだと思います。
そこからの展開も、歯切れのよいリズムとポップなアレンジメントが、なんともキャッチーで美しい。
切ない感情を優しく包み込んでくれる感じがして、いいです。
これ聴いて、アルバム『残心残暑』の他の曲も聴いたわけですが、やっぱりaikoさんすごいですね。
前衛的な魅力、とかではなく、本当に「普遍的」な、良い音楽っていうのをずっとやられている感じがして。
5.マルゲリータ+アイナ・ジ・エンド / 米津玄師
お次は、米津玄師。
このお二人のコラボが見れるとは。
今のJ-POPシーンの頂点といっても過言ではないお二人だと思います。
毎度毎度、米津さんはユニークで、面白い曲を聴かせてくれるわけですが、
2024年、新しいアルバム『LOST CORNER』がリリースされましたね。
リリース日にフルで聴いて、
一番最初に好きになったのがこの「マルゲリータ」でした。
米津さんならではの、ちょっとした不気味さっていうかダークファンタジーな雰囲気がありつつ、
全体的にスッキリとしてサラッとした印象。
4つ打ちのビートで、けっこう淡々と進んでいく感じがして。
展開なんかもシンプル。普通に1番があって、2番があってみたいな。
なんかそれが良かったですね。
米津さんらしい、ちょっと偏屈なメロディーと、ジャンルレスなアレンジが
コンパクトにすっきりまとまっている感じがして。
3分間に米津さんのポップスメーカーとしての凄さが集結してますね。
また、こういうシンプルな曲だからこそ、お二人のボーカルの魅力が光りますね。
アイナ・ジ・エンドさんの声、いいですよね。
2021年の年間ベストに「BLUE SOUL」を選んでいたため、企画始まってから2度目の選出です。
彼女の声って、すごく多面的というか。色んな色を持っていて
冷たさの中に情熱もあって、無機質なようで表情豊かで
それがバラードだけじゃなく、こういうダンスミュージック的な軽快な音楽とマッチするんですよね。
すごく、令和的な声というか。
ちゃんみな、Awichなんかも似た系統の声質な気がします。
こういった声がひとつのトレンドなんじゃないでしょうか。
特別賞 Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts
ここで、後半5曲を紹介する前に番外編。
今年一番注目を集めた楽曲といえば、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」でしょう。
若者を中心にYouTubeのショート動画やTikTokといった媒体で大ヒットしたのは言わずもがな、
その人気はその枠を飛び出し、老若男女、多くの人が一度は耳にした楽曲ではないでしょうか。
私自身は、はじめてCreepy Nutsを聴いたのは2017年の「メジャーデビュー指南」だったと思います。
タイトル通りメジャーデビューしたタイミングでリリースされた楽曲ですね。
もちろん、ヒップホップ好きにとってはそれ以前から注目を集めていたスターだったと思いますが、
メジャーデビューした当時もまだまだ、「ヒップホップ界から面白いアーティストがデビューした」くらいの認識でした。
少なくとも、こんなにも「国民的アーティスト」になる日が来るとは…
ヒップホップがここまで市民権を得たのは、黎明期の90年代(スチャダラパーやライムスターなど)から今に至るまで、はじめてのことなのでは?なんて思ったり。
これは、EDMやチルアウト系のトラックなど、打ち込み系の音楽が浸透し、邦楽と洋楽の隔たりが取り払われつつある現代ならではのものなのではないでしょうか?
実際、Bling-Bang-Bang-Bornは日本のみならず海外でも多くの支持を得ています。
先ほど少し話題に挙げた、ちゃんみなやAwich、はたまたPUNPEEなど、日本のヒップホップはより色鮮やかなものとなっています。
Creepy Nutsはじめ、今後もヒップホップシーンがどのような流行を見せるのか、楽しみです。
6.真夏のジャイガンティック / Cody・Lee(李)
後半戦の開幕、6曲目は、Cody・Lee(李)の「真夏のジャイガンティック」。
令和のバンドシーンに現れた大注目ロックバンドですね。
2020年にファーストアルバムをリリースしたのち、2022年にメジャーデビュー。
メロディーやサウンドがとにかくポップ。
まだまだ「良いメロディー」で勝負できることを証明してくれた気がします。
ファンクやディスコミュージックっぽいこともしていて今っぽさもしっかり存在。
東京事変とかヒゲダンとかが好きな人は、きっと気に入っていただけることでしょう。
さて、今回選出した本曲は、ファンクやソウルを織り交ぜた、爽やかなロックポップといった感じ。
そして、思いっきりシティポップ。
10年近く続いたシティポップブームに、個人的にピリオドを打つなら
この曲かな、といった感じがしました。
80年代のシティポップのノリを取り入れつつ、令和的なスッキリとしたサウンドが響く。
そこに乗せた歌詞は、歌謡的でありつつも、サラリとしていてスタイリッシュ。
リバイバルではなく、しっかり「今の音楽」として機能している、魅惑のグッドミュージックです。
7.夕日ロック / Weekday Sleepers
どういうきっかけかはわからないけど、今年出会ったアーティスト。
調べてみたところ、どうやらソロの方らしい。そうなんだ…
謎多きミュージシャン、Weekday Sleeperの2024年リリースアルバム『海に石を投げろ』。
ヘビーでオルタナティブなギターロック。
サウンドだけで行くと「ゆら帝」とか「ブッチャーズ」を思わせるが
歌詞があまりにもストレートで妙ちきりん。
いや、これも「ゆら帝」っぽいのか?でも違うんだよなぁ…
その中から「夕日のロック」をピックアップ。
本当に難しい言葉を一切使わない…というか稚拙な感じもするが
歌っている内容は、どこか哲学的というか、味があるな、と。
ビブラートの効いたサイケデリックなギターに乗せた、低めのボーカルがクセになる。
声がかなり好き。最近だとグソクムズの「たなかえいぞを」さんなんかが当てはまると思うけど、
フォークミュージシャン的な声質。
これ以上具体的な説明をすることは僕の語彙力では残念ながらできません…
メロディーも輪郭がぼやっとしていて、独特。
スピッツの『名前を付けてやる』、『インディゴ地平線』的な浮遊感もあったり。
とにかく90~2000年代初頭のロックが好きなら一度聴いてみて欲しい楽曲、アルバムでした。
8.恋は水色 / おとぎ話
イントロのサイケなギターソロが痛快な一曲。
2000年に結成された隠れた名バンド・おとぎ話。
彼らが2024年にリリースしたアルバム『HELL』より、「恋は水色」を選出。
サイケデリックなサウンドとべたついたボーカルが、独特な空気を放っています。
基本的にはポップな曲なのに、とにかくベタッとしていてクセが強い。
うーん、80年代のシティポップやアイドルポップを踏襲しているのだけど、
どういうわけか爽やかさが感じられない…?
シティポップの「キラキラ感」の中に得も言われぬ「アングラ感」が存在している感じがしますね。
かなりギラついたポップスだと思います。メロディーはキャッチーなんだけどなぁ。
そう考えるとフリッパーズ・ギターの雰囲気もあったり。
(『CAMERA TALK』とかって結構ギラついてますよね)
そして、そんな音楽のとりこになってしまいました。
聴く人によっては、むしろ新しいんじゃないですかね?
これもまた「令和らしい」音楽なのかもしれない…
他の楽曲もキャッチーなのに個性的で面白いものばかり。
2024年オススメのアルバムです。
9.strawberry / BUMP OF CHICKEN
バンプの5年ぶりのフルアルバム『Iris』。
この5年間に発表された楽曲が収録されているため、ベストアルバムのような印象。
コンセプトよりもバラエティを楽しむ作品、といった感じがしました。
サウンド的には、ここ数枚に比べると全体的にバンド色が強い印象。
『COSMONAUT』辺りを思い起こさせるアレンジでしょうか。
5年ぶりのリリースでしたが、デビュー当初から続く「バンプらしさ」みたいなものはしっかり健在でした。
うん、かなり良かった!!!
さて、その中で最も印象に残ったのが「strawberry」。
ミドルテンポの楽曲で、近年のバンプらしい爽やかでありながら味わい深いポップス。
エレクトロなビートに合わせた、クリーンで幻想的なギターがなんともバンプっぽい。
そして、そこに乗せた藤原さんのスッキリとしたボーカルがスッと耳に入ってくる。
この曲は本当に聴き心地が良いですね。
そして、メロディーや歌詞の載せ方もシンプルで聴きやすい。
メロディーラインという点で行くと、歴代バンプの中でもかなり好きな部類かもしれません。
オルゴールなんかにしても映える、非常にきれいなメロディーだと思います(とくにサビ)。
10.行っちゃった / 長谷川白紙
間違いなく今年イチバン度肝を抜かれた楽曲。
鬼才・長谷川白紙さんですね。
2018年の『草木萌動』リリースを機に、音楽ファンの間で話題(ザワザワ)を集めたミュージシャン。
ジャズやエレクトロミュージックを基軸にしながらも独自の世界観を生み出してきた新星。
2019年には、渾身のキラーチューン「あなただけ」が、TV番組「関ジャム(現:EIGHT JAM)」にて紹介されるなど、さらなる注目を集めました。
そんな長谷川白紙が2024年、ついに新しいアルバムをリリース。
その名も『魔法学校』。
このアルバムをリードするように発表されたのが1曲目に収録されている「行っちゃった」。
これまでもたびたび取り入れてきた「ブレイクコア」の要素をさらに進化させ、
より先鋭的な楽曲に仕上がっています。
最初にYouTubeで聴いたときは「スマホがおかしくなった」と本気で思いました笑
歌詞も正直理解不能で、完全に置いてけぼりにされてしまう…
しかし、それでいて、ところどころ耳に残るワードがあったりメロディーがあったり…
一度聴いただけでも断片的に脳裏に焼き付く中毒性があります。
そして何度も聴いているうちに少しずつ全体像が見え、見え切ったところで結局「???」が浮かぶというね。
とにかく一度、聴いてみてください。
まとめ
というわけで、以上2024年の個人的ベストソングスでした。
個人的な話にはなってしまいますが、
2024年は、ついに「シティポップリバイバル」が収束に向かった年だったな、という気がしています。
ブームが廃れた、とかそういうわけではなく、むしろずっと続いているのですが、
それが「リバイバル」ではなく、「ニュースタンダード」になったといった印象。
「懐かしさ」でも「新しさ」でもなく「普遍的」なものになったという感じですかね…
その象徴になったのが「真夏のジャイガンティック」でしたね。僕的には。
また、バンプやaikoなどの大人気アーティスト(もはやベテランの域?)の魅力を再認識できた年でもありました。
長く愛されるアーティスト、音楽というのはやっぱり普遍的な魅力と確かな腕があるということなのでしょう。
変わらない魅力と、時代に寄り添うプロフェッショナルな姿勢がかっこいい。
みなさんもご自身のベストソングを選びながら、1年間を振り返ってみてはいかがでしょうか。
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