『日常』『CITY』を手掛ける人気漫画家・あらゐけいいち。
彼の最新作『雨宮さん』がついに単行本化!
前回の記事では単行本1巻の1話から8話の内容の解説&レビューをおこないました。
今回はその続き、後編として9話以降の内容を記事にしていきたいと思います。
それでは早速、いってみよう!
9.イソギンチャクフェア
後編一発目は、「イソギンチャクフェア」。
雨宮さんが、文房具店で「イソギンチャクフェア」を満喫…しようとするお話。
あのイソギンチャクフェアですね。みなさんお好きでしょう。
「キュー」ってやつ。
500円お買い上げごとに1回イソギンチャクに手を突っ込むことができるキャンペーンとのことですが…
そもそもイソギンチャクに手を突っ込むのって、そんなにあるあるなんですか?
そして、気持ちいいんですか…?
水族館のタッチプールとかで体験できるんですかね。今度やってみたいと思います。
さて、イソギンチャクのために50000円をつぎ込んだ雨宮さん。爆買いですね。
消しゴム(MONO)やら、鉛筆やら、サクラの「クーピー」やら…
懐かしいですね、クーピー。クレヨンを細くしたようなやつなんですけど、ちょっとマイナーかもしれません…
クレヨンほどワイルドじゃないし、色鉛筆ほどスマートじゃない。
なんというか、ポケモンの進化途中の姿のような愛おしさがあります、ヌマクローみたいな。
あとは「竹尺」ですね。30センチの。小学生の頃使ってたなぁ…
そういえば「物差し」と「定規」の違いって、メモリのスタート位置の違いなんでしたっけ…?
いや、あんまり適当なことは言わないでおこう。
それにしても50000円ですか…文房具店で、ですよ?
万年筆とか買ったんですかね… あとは、なんだ。なんか、高い…紙?
ひょっとすると物価が我々の住む日本と違う?「島円」(濠ドルみたいな)なのかもしれない…
ちなみに、「キュー」はできませんでした。死んでいたので。
さてさて、登場したのはカマドクロ。カマドクロの仕業だったんですね。
彼によって召喚された怪物によって、雨宮さんは窮地に立たされますが、持ち前の好奇心で見事に回避。
ついでにカマドクロも撃退し、ハッピーエンド。
あ、ついでに「なーも」も仲間にしました。
この、次から次へと転がるストーリーはCITY以降のあらゐ先生のスタンダードですね。
とにかく絵面が楽しい!
10.秘密結社①
海に浮かぶ、もう一つの「島」。
和洋入り混じった「ハ◯ルの動く城」のような大きなお城?が建っています。
そこに居るのは、学生服を着てMacをカタカタする「後輩」と、モコモコパジャマに身を包んだ「先輩」。
これは…悪役の予感。
『CITY』でいうところの「CapsLock高校」のような感じでしょうか。悪役というより「敵」?
どうでもいいのですが、この「先輩」…可愛いですよね。性別不明ですが。
どうやらカマドクロを仕える集団らしいですね。彼らの上には「親方様」と「姫様」がいるようです。
まだまだ謎の多い存在です。今後に期待。
さて、一方の雨宮さんは、喫茶店(キッチン 赤ん坊)で「プリン・ア・ラ・モウド」を堪能中…
店主は「あいつ」。
そして、「あいつ」に対し「チーズを数える」ことを熱く語る、自称考好学者「ラブ追夫」が登場。
6p(ろっぴー)チーズ…確かに良い響きですよね。
このラブ追夫…実は物語のキーマンとなるのでは…と、密かな期待を寄せています。
彼のセリフ「ここは人々が交差する喫茶店」…
あらゐ作品では、人々の直接的・間接的な「交わり」が物語を大きく動かすことがありますからね。
ちなみに「あいつ」には刺さらなかったようです。
11.ホーランドロップ①
続いては、雨宮さんの級友「ホーランドロップ」のお話。
英語のタイトル(?)は「Similar」。『雨宮さん』では毎回サブタイトルの横に英語のタイトルのようなものが書いてあるんですよね。コチラに注目するのも、結構面白い。
「Similar」…つまり「似ている」ということですよね。
これについてはひとまず置いておいて…
教室での一幕。
ひょんなことから仲間になった「なーも」に一目惚れのホーランドロップ。
なーもに対し「ガバッ」を繰り出しますが、対するなーもはご立腹な様子…
なんとなく、なーもはホーランドロップのことを警戒している感じがしますよね。
ホーランドロップの前では終始フキゲン顔ですし。
それでもめげないホーランドロップ。
放課後もなーもと仲良くなろうと接近しますが、またも巨大ゲンコツを食らいます。
怒ることも気を落とすこともなく、前向きな姿勢…この強かさ、推せる。
警戒心が強いのか、ホーランドロップに対してだけこのような態度を取っているのか…なーもの心境はわかりませんが、二人が仲良くなる未来に期待です。いや、ずっとこのままでもいいかも…
転校してきたばかりの雨宮さんに対し「色々聞いてね。」と声をかけるホーランドロップ(名前長い)。
もしかしたら、世話好きなタイプなのかもしれません。
雨宮さんが特別、ということではなく、誰とでも仲良くなれるタイプなんでしょう。
だって、いい子だもん。
こうなってくると他の級友との絡みも気になりますね。
しかしメドゥーサといい、クラスメイトは優しい人(人…?)が多いなぁ。
この二人の絡み、なんとなく『CITY』のまつり&えっちゃんを思い出します。
なんかこう、息ピッタリでのんきな感じ。
キレのあるギャグに定評のあるあらゐ先生ですが、こういったゆるい絡みこそが彼の作品の真骨頂だと思っています。特に、最近はね。
結局のところ、何が「似ている」のかというと、おそらく「雨宮さん」と「ホーランドロップ」のことなんだと思います。
人には言いづらい「フェティシズム」「趣味」を持つ二人、性格や好みもなんとなく似たもの同士って感じですよね。
ちなみにホーランドロップには、言ったら「お嫁に行けなくなっちゃう」趣味があるようです。
12.秘密結社②
もう一つの島にある「秘密結社」のお話。
下駄の「歯」が付いた長靴(靴下?)を履いて、「先輩」にニードロップをかましながら登場したのは「姫様」。
前回「先輩」と「後輩」の会話の中に出てきた人物ですね。
彼女のペットである「フェンリル」が行方不明になりご立腹の様子。
そして、「先輩」は壬生(みぶ)という名前らしいです。髪は赤かったんですね。
「後輩」こと塩谷少将も登場。彼は現場監督…というか実働部隊をまとめるリーダー的なポジションのようです。課長ポジション?
畳敷きにPCデスクが並べられた「塩谷ラボ」を拠点に忙しなく働いています。ロッテの「いちごつみ」を咥えながら…懐かしい!!
お菓子を咥えながら仕事、というと『ジェネラルルージュの凱旋』の速水先生を思い出します。チュッパチャップス…これ、わかる人いるのかな…
部下たちの捜索により、ついにフェンリルの居場所を特定!
そう、フェンリルとは「なーも」のことだったんです!
なーも…そんな名前だったのか…
ちなみに「フェンリル」は北欧神話に登場する怪物の名前です。オオカミみたいな。
さてさて、なぜ「なーも」ことフェンリルは居なくなってしまったのか。
その答えはそう…
壬生中将がカマドクロを召喚する際フェンリルを巻き込んでしまったから。
当の本人・壬生もそのことに気づいたようですが、バレるとマズいのでなかったことに。
どうなるフェンリル、どうなる壬生!
13.ホーランドロップ②
雨宮さんのクラスメイト・ホーランドロップがまたもや大活躍するお話。
ホーランドロップ推しですね。
なーも(フェンリル)と仲良くなるべく、今度は雨宮ハウスまでやってきました。
もぐらに躓いて(どういう状況だ)、「はひゃん。」なホーランドロップ。
その衝撃でうっかり「しっぽ」が出てきてしまいます。
必死に隠してきたつもりの彼女でしたが、雨宮さんには既にバレバレ。
まぁ、「ホーランドロップ」って名前だしね。
というか、雨宮さんも気になっていますが、このしっぽどうなってるんですかね?
生えてるんですよね?
ちなみに制服のスカートにはスリットが入っていて、そこからしっぽを出しているみたいです。
いやいや、じゃあ隠す気ないじゃん。
しっぽがバレてしまったように、雨宮さんもまた、「悦音」を目撃されてしまいます。
悦音、とは「気持ち良い音をただ出すだけの業者」です。
ししおどしや将棋盤を持参して、良い音を出してくれるらしいです(5話「音の世界」参照)。
カマドクロの懸賞金を使い「悦音」を雇っているご様子。ちょっと気になる。
ちなみにホーランドロップは悦音のことを「引っ越し屋さん」と勘違いしています。バレずに済んでよかったね。
さてさて、なーもと仲良くなるためにホーランドロップが取り出したのは…「スタ丼」!
あれ、美味しいですよね。たまに無性に食べたくなります。彼女曰く「嫌いな人いない」らしいです。
そして最後のページ!
ついに、耳が!!可愛すぎる!!
ホーランドロップは可愛いです。あざとい。
あらゐ作品では珍しく、露骨に「可愛い」を前面に押し出した、”狙った”感じのキャラクターです。
こういうこともしてくるんだなぁ、あらゐ先生。
まぁ、みんな可愛いんだけどね。
14.アイアンメイデン
さて、物騒なタイトルのお話。
「秘密結社②」で、姫様が召喚した「拷問シリーズ」のアイアンメイデン。
このアイアンメイデンは動きます。ジェットの速さで。
「ビック死」「ギシギ死」「舞血混稀留(ぶちこまれる)」「無死」「故側死(こそばし)」「恥頭火死(はずかし)」
6アウトで、人生ゲームセットの拷問マシーンです。ああ、恐ろしや。
壬生により拷問の説明がなされているわけですが、彼は経験者なのでしょうか…
雨宮さんを発見し、襲い掛かるアイアンメイデン。
ところがどっこい、彼女の「ありがとー」により爆破。
雨宮さんの勝利に終わったのでした。これってバトル漫画だっけ?
15.ウィッカーマンと”ケンタウロス”
続いて姫様が召喚したのは「拷問シリーズ」第二弾、ウィッカーマン。
このウィッカーマン、動きます。ワープで。
捕まったら最期、檻の中で無の一生を過ごすことに(壬生談)…ああ、恐ろしや。
襲い掛かる、ウィッカーマン。捕まる雨宮さん…
ところがどっこい、今度は「許す。」で、見事撃退!
なんとなく、わかってきましたね。この「力」が今後のカギとなるのでしょうか?
立て続けにやられ、ご立腹な姫様が次に召喚したのは、「逆のケンタウロス」。
馬の身体に、人の脚が生えた生き物です。
逆、というか…もはやケンタウロスじゃない、というか…
召喚を力を使いすぎた姫様。疲労のあまり変なやつを召喚してしまったようです。
タイトルの「ケンタウロス」も鏡文字になっていますよ。
ちなみにこのケンタウロス、喋ります。わりと達者に。
このあとこいつは、なーもにやっつけられます。展開が早い。
全ての策が失敗に終わり、大混乱の壬生&塩谷。
土壇場でカマドクロを召喚しようとしますが、呼び寄せたのは「いかめし」。
いい匂いを残して、二人(と姫様)は撤退するのでした。
いかめし、食べたいね。
16.好き
1巻の最終話。
「私は私の好きなことが好きだ。」
雨宮さんのこのセリフが、作品の全てを物語っている気がします。
自分の「好き」を大切にしたい。大切にして欲しい。
これは、彼女の…そしてあらゐ先生の心の叫びなのではないでしょうか。
幸せの日々を過ごすためには、大事なことだと思うんですよ、「自己肯定」って。
社会というのはどこか せまっ苦しくて、退屈に思えることも。
同調圧力とか、期待とか、責任とか…
ときには、そんな煩わしいしがらみから、解放されることが必要です。
そのためにはやっぱり、自分の好きに正直になる。これに尽きます。
好きなことをして、好きなものを食べて、そして、自分を好きになる。
雨宮さんは、自らの生きざまを通じて「自己肯定」の大切さを教えてくれているのだと思います。
変な自分でも、自分は自分だ、と。
さて、ちょっとイイコト(?)を言ってしまったので、気を取り直して中身を見ていきます!
まず「昼間のお風呂」!いいよね!
てか、雨宮ハウスのお風呂、いいな~。タイル張りのお風呂ってなんか憧れるんですよね。
そして、「コーヒーオレオレ」!
今思えば、確かに…コーヒー牛乳を牛乳で割ってるわけですからね。
さすがにお猪口で飲んだことは無かったなぁ…
さらに、「カステラのおつくり」!
カステラは、あらゐ先生のお気に入りのモチーフらしいです。
(あらゐけいいち展でそう言及されていました)
さらには「ロッピー」「ディカプリオ」「スリジャヤワルダナプラコッテ」…
みなさんは、好きな響きの言葉、ありますか?
私は、「パニーニ」「ポメラニアン」「二条城(にじょうじょう)」なんかが好きです。
はい、そんなしょうもない話をして終わります。
まとめ
前後編の「まとめ」です。
うーん、結構好きかも。
『日常』や『CITY』は、とにかく「楽しい」を描いた作品だったと思うのですが、今作はちょっと趣旨が違うのかな、と。
もちろん楽しいんですけど、なんというか…
「喜怒哀楽」で言うと、「喜」なんですよね。
「嬉しい」とか「幸せ」とか「癒し」とか…とにかくそんな「喜」を、雨宮さんを通じて描いている、そんな感じです。
伝わりますかね、この微妙なニュアンス。
分かりやすく言うと「笑顔」の種類が違うんですよね。
面白おかしくて笑う顔と、嬉しくてほころぶ笑顔。
これは登場人物だけでなく、読者にも言えることで…
とにかく、この『雨宮さん』には、『日常』『CITY』を経た今の彼だからこそ描ける、「楽しい」とは別次元の面白さが詰め込まれているのです。
よりマニアックに、だけども、うんとうんとポップに。
「なんか好き!」は、やめられない、とまらない!
そんな雨宮さんが、大好きです。
これからも彼女の「好き」から目が離せませんね。
単行本はコチラ!
あの『日常』が再始動!コチラも是非
1~10巻はコチラ!!
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