CD全盛期の90年代の邦楽シーン。
90年代初頭の渋谷系ムーブメントをはじめ、ヒップホップ、R&Bなど…新ジャンルの流行や、
80年代から続くバンドブームの継続など、より幅広い音楽が注目されるようになりました。
今回は1990年代にリリースされた日本の音楽アルバムの中から、
個人的に感銘を受けた作品を20枚選出して紹介していきます。
各作品についてはYouTubeでも話をしていますので良ければコチラもご覧ください。
それでは早速発表していきましょう。
- 20. SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADICCT / ナンバーガール(1999)
- 19. SICKS / THE YELLOW MONKEY(1997)
- 18. 5TH WHEEL 2 THE COACH / スチャダラパー(1995)
- 17. BOSSA NOVA 2001 / PIZZICATO FIVE(1993)
- 16.ギヤ・ブルーズ / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(1998)
- 15. A / 電気グルーヴ(1997)
- 14. STICK OUT / THE BLUE HEARTS(1993)
- 13. スリーアウトチェンジ / SUPERCAR(1998)
- 12.金字塔 / 中村一義(1997)
- 11.東京 / サニーデイ・サービス(1996)
- 10.無罪モラトリアム / 椎名林檎(1999)
- 9. ペーパードライヴァーズミュージック/ キリンジ(1998)
- 8. 家庭教師 / 岡村靖幸(1990)
- 7. 空中キャンプ / Fishmans(1996)
- 6. DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER -ヘッド博士の世界塔- / FLIPPER’S GUITAR(1991)
- 5. FANTASMA / Cornelius(1997)
- 4. MAKING THE ROAD / Hi-STANDARD(1999)
- 3. LIFE / 小沢健二(1994)
- 2. First Love / 宇多田ヒカル(1999)
- 1. ハチミツ / スピッツ(1995)
- まとめ
20. SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADICCT / ナンバーガール(1999)
97年デビュー、福岡県のロックバンド・ナンバーガールの1stアルバム。
鋭いギターサウンドに乗せた、衝動的なボーカルは、90年代後半のJ-オルタナティブロックの象徴的存在。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONやART-SCHOOLなど、2000年代以降の邦楽ロックシーンのみならず、星野源など幅広いジャンルのミュージシャンに多大な影響を与えました。
尖ったギターや、高圧的なドラム、少しくぐもったボーカルなど独特なサウンドが、唯一無二の世界観を演出しています。
当時から存在してはいた「オルタナティブロック」という言葉を、
ひとつの形として示したようなバンドだと思います。
日本のオルタナティブロックといえば、ナンバーガール!
という方も少なくないのではないでしょうか。
代表曲「透明少女」をはじめ、初期の人気曲が多数収録されています。
19. SICKS / THE YELLOW MONKEY(1997)
吉井和哉さん率いる「イエモン」ことTHE YELLOW MONKEYの6thアルバム。
90年代といえば、80年代から続く「バンドブーム」の流れを組み、
ミスチル、B’z、GLAYなどの”国民的ロックバンド”が数多く登場しました。
当時はCDの売れ行きもすさまじかったですからね。
イエモンも彼らと同世代(結成時期で言うと、スピッツと同期なんですよね)のバンドで、
テレビ番組、CMのタイアップや注目を集めました。
5作目のアルバム『FOUR SEASONS』で初のオリコンチャート1位を記録し、
それを受けて制作された6作目のアルバムが今回選出した『SICKS』。
前作同様ロンドンでレコーディングされたアルバムで、とにかくサウンドへのこだわりがすごい。
ギターの音作りや、ドラムの広がり、ベースのダイナミックさなど、どこをとってもカッコいい。
硬派なロックンロールを貫く姿もまた、カッコいい。
当時の人気から考えると、結構攻めている作品だと思います。
とはいえこれだけのセールスやチャート記録を残したというのは、間違いなくイエモンのセンスの賜物でしょうね。
18. 5TH WHEEL 2 THE COACH / スチャダラパー(1995)
90年代といえば、バンドブーム、渋谷系と並んで新しい音楽として浸透していったのが「HIP-HOP」。
中でも日本語のリリックを主軸にした楽曲が流行しました。
日本語ラップの先駆者とも言われるいとうせいこう、キミドリ、RHYMESTARなどと並んでこのブームを支えたのがスチャダラパー。
当時(今でも?)、アンダーグラウンドなイメージの強かったHIP-HOPを、
独特なゆるい空気感と、身近で馴染み深いテーマで表現した彼らの音楽は瞬く間に話題を集めました。
94年には渋谷系の王子様こと小沢健二とのコラボ曲「今夜はブギーバック」が大ヒット。
その翌年にリリースされたのが『5TH WHEEL 2 THE COACH』。
奥行きのある心地よいサウンドメイクと、BOSE、ANI両者のリアリティーある掛け合いが小気味よい。
収録曲「サマージャム’95」が醸し出すダラダラとした蒸し暑い空気感は、まさにニッポンの夏!
夏になると聴きたくなる一曲です。
「ノーベルやんちゃDE賞」「南極問題」といったコミカルな曲も面白い。これぞスチャダラパー。
17. BOSSA NOVA 2001 / PIZZICATO FIVE(1993)
80年代後半から、日本のポップス界に新しい風をなびかせた名バンド・PIZZICATO FIVE(ピチカート・ファイヴ)。
90年代を席巻した「渋谷系」の中心として、ムーヴメントを引っ張っていました。
中でも注目を集めたのがこの『BOSSA NOVA 2001』。
CMにも起用された代表曲「スウィート・ソウル・レビュー」など、挑戦的でありながらキャッチーな楽曲が目立ちます。
ピチカートと並んで渋谷系を牽引した「フリッパーズ・ギター」のメンバー・小山田圭吾さんがプロデュースを担当したことも話題を呼びました。
多幸感あるゴキゲンな音楽は、神前暁やヒャダイン、沖井礼二といった2000年代以降のアイドルソング、アニソンに多大な影響を与えていると思います。
いわゆる「電波系」音楽のはしりって、ひょっとしたらピチカート・ファイヴなんじゃないかと思ったり…
ただし、ピチカート・ファイヴは一部の楽曲しかサブスクで配信されていないため、アルバムを通しですべて聴くためにはCDでの購入が必須となっています。
視聴難易度の高い作品ですが、そのレア感も含めてオススメの1枚です。
いつかサブスクでも聴くことが出来れば嬉しいですね!
16.ギヤ・ブルーズ / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(1998)
90年代のJ-ROCKシーンにおいて忘れてはいけないのが、ミッシェルの存在。
ロックの大衆化が進む中、常に硬派な姿勢を貫いていたのが彼らの音楽。
中でも『ギヤ・ブルーズ』はソリッドなギターの轟音と、挑発的なボーカルがギラギラとした世界を作り上げています。
「スモーキン・ビリー」のギターの音とか凄まじいですからね。エンジン音かと思った。
ギターの重厚感、ベースの奔放さ、ドラムの力強さ…4人とは思えない音の広がりを持っています。
無駄な音が全くないのに常にパワフル。
バンドの醍醐味って感じ。
ハードな音楽でありながら、意外と取っ付きやすいのも魅力の一つ。
メロディーがキャッチーでポップなんですよね。
なんとなく海外色の強いロックのイメージがありますが、彼らの音楽性は日本ならではのものだと思います。日本語詞が映えるロックンロールですね。
15. A / 電気グルーヴ(1997)
渋谷系、HIP-HOPなど、90年代はサブカル的な側面の強い音楽が、大衆の支持を得始める時代でもあったと思います。
その代表的な存在が電気グルーヴではないでしょうか。
初期こそはHIP-HOP的なアプローチが目立ってはいましたが、90年代中ごろからはより純粋で骨太なエレクトロミュージックを創造していきます。
奇抜なパフォーマンスや、お茶目な歌詞など、コミカルな印象の強いグループですが、クオリティの追求に余念がないアーティスト性を持ち合わせています。
中でも「まりん」こと砂原良徳さんが所属していた最後のアルバム『A』はその両面を引き立てたアルバムで、セールスの面でもグループ最大を記録しています。
1曲目から7分を超える大作「かっこいいジャンパー」、今度はハードなテクノ「VOLCANIC DRUMBEATS」と、終始くせ者揃いなラインナップ。
しかし、「ガリガリ君」でのコミカルな歌詞やキャッチーなフレーズがポップさも演出。
中でも大ヒット曲「Shangri-La」では歌謡的な要素を取り入れた美しい歌モノテクノを披露。
テクノという音楽ジャンルをあらゆる方面から形にした、どこか癖になる1枚です。
当たり前ですが、電気グルーヴにしかできない音楽、といった感じがします。
14. STICK OUT / THE BLUE HEARTS(1993)
伝説的ロックバンド・THE BLUE HEARTS。
バンドの中心である甲本ヒロト、真島昌利の両人が書く真っ直ぐなメロディーと、心に響く歌詞。
日本におけるパンクロックの形を気づき上げたパイオニアのような存在です。
85年に結成して以来、「リンダリンダ」や「TRAIN-TRAIN」、「青空」などのヒット曲を生み出しました。
ユニコーンやBOOWYと並び、80年代から続く「バンドブーム」の中心的存在ですね。
そんなブルーハーツが93年にリリースしたのが、この『STICK OUT』。
同バンドの後期を代表するアルバムで、代表曲「1000のバイオリン」や人気曲「月の爆撃機」など、キャッチーでポップな楽曲が目立ちます。
90年代に入り、新世代の名バンドが次々と登場する中で、オリコンチャート1位を記録するなど、
王者の風格を感じさせる作品ですね。
ブルーハーツならSTICK OUTが一番好き!というファンの方も多いはず!
また、同93年には『DUG OUT』というアルバムがリリースされました。
STICK OUTとは対照的な作品で、しっとりとした楽曲が目立ちます。
併せて聴いていただきたい1枚ですね。
ブルーハーツの楽曲は、サブスクでは配信されていないため、現在はCDでの視聴がほぼ必須となっています。
店頭にはなかなか並ばない作品なので、オンラインショップでの購入がオススメですよ。
13. スリーアウトチェンジ / SUPERCAR(1998)
ナンバーガールやくるりと同じ97年にデビューし、日本のロック界に新たな風を持ち込んだバンド・SUPERCAR(スーパーカー)。
デビュー当時から、メンバー全員が10代という新星でありながら、
ギタリスト・石渡惇治の書く等身大の歌詞と、バンドの持つどこか青臭い雰囲気に「青春」を感じさせる唯一無二の存在となっていました。
初期の頃は、シューゲイズの要素を取り入れたくぐもったサウンドと、ポップでありながら哀愁漂うメロディーが特徴的でした。
この時期を象徴するのが、1stアルバム『スリーアウトチェンジ』。
デビュー曲「cream soda」や、2ndシングル「Lucky」など初期の代表曲をはじめ、珠玉の19曲が収録され、70分を超える超大作となっています。
中村弘二とフルカワミキによるツインボーカル体制を取っており、毛色の違う二人の歌声が、バンドの音楽をより彩り豊かなものにしています。
後期の洗練された楽曲群も魅力的ですが、初期の粗削りながら味わい深い楽曲も素敵ですよね。
またSUPERCARは、
99年には第一回RISING SUN ROCK FESTIVALに、2000年には第一回SUMMER SONICに出演するなど、現代でも続く音楽フェスの黎明期を支えた存在でもあります。
2000年代以降のバンドにも多大な影響を与えた、J-ロックシーンの名手です。
12.金字塔 / 中村一義(1997)
前述のSUPERCARと同じく「97の世代」として日本の音楽シーンに登場したシンガーソングライター・中村一義。
独特な言語感覚の歌詞と、裏声を多用した独特な歌唱法、ビートルズを彷彿させながらも斬新な音楽性…
あらゆる面でこれまでの音楽から独立した個性を発揮した天才ミュージシャンです。
そんな彼のファーストアルバムが『金字塔』。
フォークでありロックであり、歌謡曲でもあり…
使用している楽器も多岐にわたり、バラエティに富んだ楽曲群。
また、この作品はいわゆる「宅録」により、彼がほぼ一人で作り上げた作品で、中村一義というアーティストの強いこだわりを味わうことが出来ます。
デビューすぐに発表されたアルバムでありながら、まさに「金字塔」。
ま、2000年代以降の作品もどれも素晴らしいですが。
環境音や「語り」を多用した、アート志向の作品でありながら、歌モノでは溢れんばかりのポップさを発揮し、全編通してみるとキャッチーな一枚となっていますよ。
デビュー曲「犬や猫」、壮大なラブソング「永遠なるもの」など初期の名曲が収録されています。
11.東京 / サニーデイ・サービス(1996)
渋谷系の登場から少しあと、ムーブメントのフォーク的側面を支えたのが、92年に結成されたバンド・サニーデイ・サービス。
95年にリリースされた1stアルバム『若者たち』が、はっぴいえんどをはじめとする70年代の邦楽ロックの流れを組んだ新時代の音楽として話題に。
同年に代表曲「青春狂走曲」「恋におちたら」のシングル2作をリリースし、音楽ファンを中心に人気を拡大していきました。
そして翌年に発表されたのが、バンド自身の代表作ともいえるアルバム『東京』。
華やかな90年代のメインストリームとは少し離れた、素朴でどこか空虚なサウンドが印象的。
前作のフォーク路線をより洗練させた一枚です。
小編成のバンドサウンドに乗せた、日本語の繊細かつキャッチーな歌詞と、心地よいメロディーが光ります。曽我部さんの作るメロディー、好きなんですよね。
90年代後半は、ホフディランやフィッシュマンズ、かせきさいだぁといった、渋谷系の流れを組みながらも新しい音楽が次々と生まれていきましたが、サニーデイはその代表的な存在とも言えるでしょう。
音楽の純粋な美しさを凝縮した、時代を超えた名作です。
ここまでが前半戦。
みなさんの好きな作品はありましたか?
ここから先はTOP10の発表です。
あの作品は何位にランクインしているのでしょうか…??
10.無罪モラトリアム / 椎名林檎(1999)
90年代の終わりに登場し、邦楽シーンに大きな衝撃を与えた存在、シンガーソングライター・椎名林檎。
ロックでありポップであり、フォークであり、ジャズでもある…唯一無二の感性とセンスで瞬く間に注目を集めた存在ですね。
そんな彼女が99年にリリースした1stアルバムが『無罪モラトリアム』。
本作のプロデュースを務め、後に彼女とともに「東京事変」を結成することになる、”師匠”こと亀田誠治曰く、
この作品を作ることになった時点で、『無罪モラトリアム』と次作『勝訴ストリップ』収録曲のデモがほぼ出来上がっていたようで。
1stアルバムは椎名林檎が10代の頃に書いた楽曲の中から抜擢された珠玉の11曲が収録されており、第一作でありながらベスト盤のような存在。
それもあってか、ジャンルや方向性も様々な曲がごちゃまぜに配置されており、なんでもあり。
このバラエティに富んだアルバムはまさに彼女の音楽性そのものとでもいいますか、ミクスチャーロックを体現した存在な気がします。
「歌舞伎町の女王」「丸の内サディスティック」「ここでキスして。」といった初期の代表曲が多数収録されているため、これから椎名林檎を聴くという方にもオススメの一作です。
9. ペーパードライヴァーズミュージック/ キリンジ(1998)
渋谷系の流行により、ジャズやソウルミュージックの要素を取り入れたポップスが次々と現れた90年代。UAとか、MISIAとかね。
そんな中、より洗練された「グッドミュージック」的な路線を切り開いたのが、キリンジ。
実の兄弟である2人が生み出す、文学的な歌詞と、繊細で美しいメロディーの数々。
キリンジといえば、2000年リリースの「エイリアンズ」が、後に多くのミュージシャンにカバーされる、邦楽史に残る名曲として語られがちですが…
それ以前にもいい曲たくさんありますよ!…と、言いたい!!。
彼らのフレッシュな才能が惜しげもなく発揮されたのが1stアルバム『ペーパードライヴァーズミュージック』。
渋谷系…というよりかは、80年代のシティポップ的な要素も強い、どこか懐かしい雰囲気を醸し出した一枚。
シティポップというとドライブミュージック的なイメージが強いですが、「ペーパードライバーのための音楽」というややシニカルなタイトルが、なんかキリンジっぽい。
サウンド面でも、歌モノとしてみても、緻密なこだわりが詰まっていて、聴くたびに新たな発見がある、何度でも楽しみたい一作です。
ノリの良いポップな曲からしっとりとした聴かせる曲まで、本当に飽きの来ないアルバムですよ。
8. 家庭教師 / 岡村靖幸(1990)
90年代は渋谷系やHIP-HOPといったサブカルミュージックの裏で…というか表で、B’zや大黒摩季、WANDSといったビーイング系のミュージシャンが活躍していた時代でもありました。
織田哲郎をはじめとしたポップスメイカーによって、よりダイナミックなサウンドとアレンジが次々と生み出され、日本の歌謡シーンはJ-POPと呼ばれるものに変化していきます。
90年代には独特な「90年代サウンド」みたいなものがありますよね。
しかし、この「90年代サウンド」を1990年に既に実現していたミュージシャンがいました。
シンガーソングライター・岡村靖幸は、楽曲制作からプロデュースまでを自分自身でこなす「セルフプロデュース」の形で当時音楽界に刺激を与えた存在です。
ネットが浸透し、誰でも楽曲を投稿できる現代ではスタンダードな「セルフプロデュース」ですが、当時としては結構珍しい。バンドならともかくね。
彼がリリースしたアルバム『家庭教師』には、挑戦的なサウンドアプローチが見られ、90年代初頭とは思えない、というか今聴いても斬新な印象を受けますね。
中でも、彼の代表曲でもある「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」では、煌びやかなアコースティックギターの音や、打ち込みのパーカッション、壮大なオーケストレーション…あらゆる音を詰め込んだ、J-POPならではのアレンジが光ります。
結構、現代のボカロやアニソンシーンのポップスセンスに近い感じがするんですよね。
30年以上前とは到底思えません…
星野源や大石昌良など2010年代以降のシンガーソングライターに与えた影響も大きいように感じます。
7. 空中キャンプ / Fishmans(1996)
2000年代以降のロックシーンを象徴する「ミクスチャー」の概念。
しかし、90年代にも既にその感覚は生まれていて、浸透しつつある状況にありました。
ジャズやソウル、ファンクの要素を取り入れた渋谷系、エレクトロミュージックを取り入れたくるりやスーパーカーをはじめとしたロックバンド達…
そして、レゲエやダンスミュージックの要素を取り入れ、ユラユラとした浮遊感のある新しいロックを体現したのがFishmans(フィッシュマンズ)です。
ロックにおいても歌謡曲的なアプローチが一般的であった90年代に、
メロディーや歌詞といった「歌」の要素を最低限までそぎ落とした新感覚の音楽は、音楽ファンを中心に話題を集めました。
サンプリングや打ち込みのトラックメイクなどHIP-HOP的な要素がありつつも、ギターによるリフやライブ感のあるベースラインなど、バンドとしてのアレンジも巧みなアレンジ。
それでいて、最小限のボーカルこそが、一番の魅力でもあったり…
なんか、さりげなく放たれるフレーズが妙に耳に残るんですよね。
フィッシュマンズ、そしてこの「空中キャンプ」に関しては2000年代(というか2010年代?)以降に再評価された音楽、といった印象がありますね。
如何せんリリースされた当時、私はまだ生まれていなかったので…
正直なところ、「誰もが口ずさめるポップでキャッチーな音楽」ではないため、当時は大衆的な支持は得ずらかったかもしれませんが、
EDMやHIP-HOPがより浸透した現代では、受け入れられやすいのかもしれないですね。
そういった意味でも、今だからこそ聴いて欲しい名作の1つです。
6. DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER -ヘッド博士の世界塔- / FLIPPER’S GUITAR(1991)
渋谷系ムーブメントの中心的存在で、象徴ともいえるのがFLIPPER’S GUITAR(フリッパーズ・ギター)。
短い活動期間でありながら、ブームの火付け役として大きな影響を与えました。
リリースしたアルバムはわずか3枚ですが、それぞれがそれぞれの魅力を放っています。
日本におけるネオアコの草分け的存在の1st。よりキャッチーなアプローチで日本語ポップスに新しい風をもたらした2nd。
そしてラストアルバムの『DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER -ヘッド博士の世界塔-』です。
ポピュラーミュージックとしてのフリッパーズ人気を、あざ笑うかのような、
退廃的で空虚な、それでいてエネルギッシュでヘビーなアルバム。
こう説明すると、どういうこと??という感じがしますが、これは聴けばわかる、としか言いようがない。
全9曲、再生時間は約1時間という、ボリューミーな楽曲群…
あまりの情報量の多さに、なんというか…気軽に聴けない大物感があるんですよね。
「なんかとんでもない物を聴いているぞ!」という感覚に囚われます。
この感覚はヘッド博士にしか無い、唯一無二のものなんじゃないかなぁ…
とはいえポップスセンスも光る作品で、「GROOVE TUBE」や「GOING ZERO」では軽快なメロディーが歌われています。
サンプリングの要素を多用した作品で、ビーチボーイズをはじめとした数多くの音楽を散りばめています。この辺は当時の文化的な背景が見て取れますね。
このようなスタイルも相まって、サブスクでの配信はおそらく不可能とも言われる作品。
今聴いても斬新な音楽性と、当時の流行を踏襲した、文化的にも価値のあるアプローチ。
是非CDを購入してでも聴いてみて欲しい一枚ですね。
ここからはいよいよTOP5の発表です
5. FANTASMA / Cornelius(1997)
Cornelius(コーネリアス)は、フリッパーズ・ギターのメンバー・小山田圭吾のソロプロジェクト。
フリッパーズの音楽性を踏襲しながらも、独自の路線を歩み始めた彼が97年にリリースしたのが、代表作ともいえる3rdアルバム『Fantasma』。
「ネオアコ」的なギターポップに、エレクトロミュージックの要素を融合し、より実験的な音楽性を体現した一枚です。
今では「ASMR」で使われることが多いバイノーラルマイクを、レコーディングに使っており、立体的な音響が斬新なサウンドやアレンジを助長しています。
初めてイヤホンで聴いたときは大変驚きました。耳が…ぞわぞわするっ笑
1曲目に収録されている「Mic Check」なんかはそれを全面的にアピールした楽曲ですね。
小山田さんがウロウロしながらレコーディングしている姿が脳裏に浮かんできます。
リバーブやディレイなどの空間づくりにも注力していて、本当に音が生き生きしているんですよね。
音と音の距離感が作り出す、余白すらも形がくっきりとしています。
そしてそんな立体的なオケに乗せた無機質でありながら耳馴染みの良い歌声。
エレクトロの要素が目立ちますが、彼のギタープレイやボーカルも光る一枚ですね。
4. MAKING THE ROAD / Hi-STANDARD(1999)
フェスブームの中心的存在で、90年代における次世代のロックスター、「ハイスタ」ことHi-STANDARD。
モンパチ、エルレ、10-FEETといった、2000年代以降の「メロコア」ブームの草分け的存在ですね。
そんなハイスタが99年にリリースしたのが名作『MAKING THE ROAD』。
3ピースでありながら、厚みのある音楽。
「ベースボーカルの3ピースバンド」というスタイルも、メロコアのアイコンという印象。
最近だとWANIMAとかもそうですよね(←言うほど最近か?)。
ベース、ギター、ドラム…これでいいんだよ!!と言わんばかりの演奏が潔い。
あらゆる新ジャンルが登場した90年代の音楽シーンの最後に、こう…真っ直ぐなロックンロールをぶつけた感じがありますね。圧倒的なヒーロー感。
中でも収録曲「STAY GOLD」は、日本のパンクシーンにおけるマスターピース的存在。
STAY GOLDという、どストレートに前向きなタイトルも良い。
全20曲、46分という疾走感も素晴らしい。短いながらどの曲も印象的で、聴いていて楽しいんですよね~。
このアルバムを聴いて音楽を始めたバンドマンは数知れず。邦楽ロックの名作です。
なんか小難しい音楽が続いちゃってるな…という理由でこの順位にしたのはここだけの話。
いよいよTOP3の発表!!
3. LIFE / 小沢健二(1994)
フリッパーズ・ギター解散後も渋谷系の中心人物として、音楽シーンを盛り上げた「オザケン」こと小沢健二。
解散からおよそ1年後の93年にシングル「天気読み」でソロとしてデビューし、
94年にはスチャダラパーとのコラボ楽曲「今夜はブギーバック」が大ヒット(今回二度目の登場)。
楽曲のヒットを受け翌94年にリリースされた2ndアルバムが『LIFE』。
上述の「今夜はブギーバック」や、代表曲「ラブリー」「ぼくらが旅に出る理由」といったキャッチーな楽曲が並びます。
月並みな表現ですが、いわゆる「全曲シングルでもおかしくない」といった具合。
ストレートに恋愛について歌った曲が目立ち、その甘い歌詞や甘い歌声、甘いルックスの虜になった方も多いはず…?
ソウルやダンスミュージックのノリに合わせた軽快なリズムの歌詞は、90年代後半のR&Bの到来にも影響を与えるなど、日本の歌謡曲の在り方を変えたアプローチともとれるでしょう。
ブラックミュージックと歌謡曲の融合という、渋谷系が挑戦した新しい音楽は、このLIFEを持って一つの到達点に辿り着いたといった感じがします。
MUSIC MAGAZINEの90年代邦楽アルバムランキングで1位を取ったのも納得です。
2. First Love / 宇多田ヒカル(1999)
90年代最後に登場した音楽の中で、椎名林檎と並んで大きな注目を集めたのがシンガーソングライター・宇多田ヒカル。
彼女の功績に関してはもはや語るまでもない気もしますが…
宇多田ヒカルは98年にシングル「Automatic/time will tell」をリリース。
その1stシングルがダブルミリオンを達成するなど、10代でデビューした後、すぐさま音楽シーンの第一線へと駆け登った超新星です。
それまでも存在してはいましたが、それほど一般的ではなかった「R&B」というジャンルを、J-POPとして再構築した音楽性はまさに新時代の音楽といったところ。
トラックの繊細なサウンドメイクも心地よく、25年経った今聴いても全然古臭い感じがしないんですよね。そりゃあリリース当時は衝撃だったことでしょう…
J-POPは宇多田ヒカル以前、以降で分けられるなんて言われたりもしますが、
そういった意味では今回のランキングに入れるのは少しズルい気もする…
サウンドやアレンジの凄さはもちろん、日本語詞へのアプローチも斬新でした。
リズムに対する言葉の当てはめ方がとにかく気持ちいい。
それでいて、口語的で情景が目に浮かぶ具体的な内容。
なんというか、言葉ひとつひとつの選び方が非常にハイセンスなんですよね。
音楽にもストーリーにも沿った、ちょうどいい言葉が終始並んでいる感じ。本当にスキが無い。
90年代の音楽という感じはあまりしあまりしませんが、それこそがこの作品の凄さを物語っている気がします、
平成を代表する名作『First Love』が第2位…
それじゃあ一体1位は何なんだ…?!
1. ハチミツ / スピッツ(1995)
というわけで1位に選んだのは、スピッツの『ハチミツ』。
90年代のバンドブームを支えた、今なお第一線で活躍し続けている大人気ロックバンド・スピッツ。
当時の流行であるパンクロックや、渋谷系などの影響を受けながらも独自の路線で日本のロックシーンを走り続ける存在。
バンドサウンドに乗せた、美しいメロディーラインは、まさに「ロック歌謡」と言った感じ。
スピッツの曲はとにかく誰でも口ずさめるようなキャッチーなメロディーが魅力のひとつ。
とにかく…「歌」としての音楽づくりへの並々ならぬこだわりが見て取れます。
その最たるものが『ハチミツ』に収録されている「ロビンソン」でしょう。
印象的なイントロから始まる、ノリの良い軽快なリズムに乗せた、伸びやかでストレートなメロディーライン。
時代問わず、J-POPを象徴する楽曲です。
それから、90年代J-ロックの名手・笹路正徳さんによるプロデュースの力も大きいでしょうね。
ポップさを露骨に体現した「Crispy!」、フォーキーなサウンドで独特の世界観を描いた「空の飛び方」、これら前2作でのタッグを経て目指すべき音がハッキリした、そんな印象を受けます。
全編通じてポップでありながら、どの楽曲も奥深さが凄まじい。本当に隙が無いんですよね…
長いキャリアを持つスピッツの、数ある名盤の中でも一線を画す存在、『ハチミツ』。
当時を知らない若者にも、当時聴いていたリスナーにも、今改めて魅力を味わってほしい一枚です。
まとめ
今回は90年代にリリースされたアルバムの中から、厳選した20枚をランキング形式で紹介してまいりました。
みなさんの好きな作品はランクインしていましたか??
アレが無い!コレが無い! は、承知しています。自分でも思ってますから。
一応さまざまなジャンルを偏りなく選んだつもりですが…
ロックが多くなってしまったのはご愛嬌ということで。
もちろんですが、これ以外にも素晴らしいアルバムはたくさん存在します。
う~ん…本当であれば、あと30枚は紹介したいところ!!
90年代に限らず、音楽というのは星の数ほど存在していて、それぞれ人によって聴いていた音楽も違うはずなんですよね。
みなさんも、当時を思い出しながら、自分なりの20選を選んでみてはいかがでしょうか?
それでは、みなさんの音楽ライフがより素晴らしいものになりますように。
今回の企画の参考にした本↓
ライター50人が選んだ、100枚のアルバムが紹介されています。
「そう来たか」という感じの、結構面白いランキングになっていますよ。
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