2023年6月2日より全国の映画館で上映の『劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro』

WOWWOWで公開された「優しいスピッツ」が映画館に帰ってきました。

当時、視聴することができていなかったので私は今回が初めての鑑賞。

ひとことでいえば、とにかく「新鮮」。

そして、「懐かしい」。

ライブとはまた違った良さがありました。これは面白い!

今回は『優しいスピッツ』について、セットリストに沿って感想を綴ってみようと思います。

0.『優しいスピッツ』とは

そもそも今回の作品について軽く紹介。

ことの発端は、2019年に放送されたNHK連続テレビ小説『なつぞら』
100作品目となるこの作品でテーマソングを担当したのが、スピッツでした。

「朝ドラの主題歌をスピッツが担当する」ことになるとは、ファンとしては衝撃のニュースでしたね。
(翌年のバンプの中々の衝撃でしたが)

『なつぞら』の舞台は、北海道・帯広

壮大な自然と心地よい夏の空気を感じさせる「優しいあの子」は、ドラマをより引き立てていましたね。

北海道出身の私にとって、この「スピッツ×北海道」というのはなんとも喜ばしいもので。
(「雪風」も北海道ソングだけどね)

放送当時、聖地・帯広市では『なつぞら』ムードが漂っていました。
町のいたるところで「優しいあの子」が流れていたものです。

そんなわけで、この曲が収録されたアルバム『見っけ』を引っ提げた全国ツアー「MIKKE」では、帯広市でのライブが予定されていました。

しかし!

2020年の「新型コロナウイルス」の流行を受け、ライブは中止に…

念願の「帯広ライブ」は、先送りとなってしまいました…

それを受け、企画されたのが今回の『優しいスピッツ』。

松居大悟氏を監督に迎え、2021年10月…ついに帯広市での演奏が実現したのでした。

舞台は、国指定の重要文化財「旧双葉幼稚園園舎」の遊技場。

八角形の部屋の中でひっそりと繰り広げられた、一夜限りのスペシャルライブ。

静かで、肌寒くて、温かい室内で…”優しいスピッツ”が始まるのでした。

1.つぐみ

最初の曲は、「つぐみ」!

2010年リリース『とげまる』に収録されている36thシングル

温かく、力強いイントロが特徴的な一曲。

この曲良いですよね~

爽やかで柔らかいのに、スタイリッシュ。

亀田誠治プロデュースの「2000年代以降スピッツ」の代表的な楽曲だと思います。

「春の歌」に匹敵するほどの「スピッツっぽい曲」じゃないかなぁなんて思ったり。

そして、この時期のスピッツは現在(2020年代)のスピッツとも一味違う。

「NEW MIKKE」のレビューでも書いた気がするのですが、最近のスピッツって鋭いんですよ。

主に三輪さんのギターサウンドの変化だと思うのですが、よりソリッドにクールになった気がするんです。

それに対して、『とげまる』『小さな生き物』あたりは、比較的「丸い」んですよね、音が。

ベースやドラムはハードで力強いのに、そこに乗せたギターは丸くて柔らかい

このバランスが当時の「スピッツらしさ」を生んでいた気がするんですよね…なんて。

そして、今回の「つぐみ」を聴いて思ったんです。

「あのときのスピッツだ!」

ライブでは、わりとどの曲も「今の音」で演奏されることが多いのですが、今回はちょっと違うぞ

サウンドメイクも当時の雰囲気。
そもそもレスポールだしね。

やっぱり、三輪さんはレスポールが似合うギタリストだなぁ。
(最新作では草野さんがレスポール弾いてるよね)

一曲目から、なんだか懐かしい気持ちに。

思えば、自分が初めて聴いたアルバムは『さざなみCD』『とげまる』『小さな生き物』の3枚だったんだよな~

2.冷たい頬

続く2曲目は、これまた三輪さんのレスポールが美しい音を奏でる名曲・「冷たい頬」。

『フェイクファー』収録の18thシングル。

スピッツの魅力のひとつは、やっぱり三輪さんのアルペジオだとおもうのですが…

冷たい頬のイントロのアルペジオ、良いですよね。

ポップで可愛らしくて、どこか寂し気で。

ひんやりとした心地よさ。

このイントロを聴くと、スピッツだなぁってなります。

「つぐみ」もそうだったんですけど、この会場とすごく良く合っていましたよね。

時代を感じる可愛らしい建物と、秋の帯広のノスタルジーな雰囲気。
澄んだ空気と、スピッツは…最高のアートだ。

北海道…とくに帯広は秋が短いんですよ。

9月くらいまで、残暑が続いて…10月の終わりには雪がチラつき始めて…

それまでの間のわずか1か月の「秋」が、私は大好きです。

「秋」というのは、なんとなく寂しさを感じる季節ではありますが、北海道にいるとより一層…
(特に雪が嫌いな人にとってはね)

そんなちょっぴりおセンチな気持ちに寄り添うようなアルペジオ。

やっぱり好きだな、この曲。

ベーシストの私にとって、もう一つ取り上げたいのが、やはり間奏のベースソロ。

ライブと違って1曲目からリラックスした様子のリーダー。
流れるようなソロが心地よかったですね。

『3050』の札幌公演で初めて生演奏を聴いてから「結構ライブが似合う曲だな」なんて思ってます。
盛り上がる曲じゃないけど、生で聴くとより刺さる曲。やわらかいけど。

3.ハヤテ

「久しぶりにやる曲」と言って披露されたのが「ハヤテ」。

イントロを聴いた瞬間「おお!」と思いました。

たしかに!ライブで聴いたことなかった!!

アルバム『インディゴ地平線』からの一曲ですが…

あのアルバムって、実はけっこう独特な作品ですよね。

チェリーなんかが収録されていることもあって、『ハチミツ』と並んで代表作として扱われることが多いですが…
実態は、決してポップとは言えない作風。

インディゴ地平線って、全体を通してどこかどんよりしているじゃないですか?

亀田スピッツではあまり考えられない、霞がかったような空気感。

中でも、ハヤテは…インディゴ地平線らしい楽曲だと思います。

ギターポップでありながら、浮遊感の強い独特な雰囲気。そして、それがクセになる。

スピッツを聴き始めの頃は、別にそんなに好きなアルバムではなかったんですけど
なんか、弱っちいし。

でも、何度も聴いているうちに、あるときスッと、耳に、心に馴染むようになっていた。

そんなアルバム、そんな曲です。

いい意味で「古い」スピッツを、今のスピッツが演奏してくれる。しかも、当時の雰囲気で。
こんなに喜ばしいことはありませんね。

この曲は、2本のギターとリズム隊が複雑に絡み合うことで、独特な色を出していると思うのですが、それが見事に繰り広げられていましたね。

やっぱり、スピッツの安定感は凄い。
そしてやっぱり、なんだかいつもよりリラックスしている気がする。

今日のスピッツは、いつもに増して「優しい」。

4.今

続く四曲目は、「今」

2000年の『ハヤブサ』収録曲。

この曲もなんとなく珍しい気がする…と思ったら、直後のMCで草野さんも同じことを仰っていました。

『ハヤブサ』…いいですよね。

90年代の「笹路スピッツ」とも、2000年代の「亀田スピッツ」とも違う独特な雰囲気。

スピッツくらいしかまともに音楽を聴いていなかった頃、「なんかピンと来ないな」とちょっぴり距離を置いていた自分が恥ずかしい。

スピッツをきっかけに、アジカンとかくるりとかスーパーカーとか…いろんなロックに触れてようやくその真の魅力に気付いた、そんな作品です。
このアルバムの良さを知ったとき、「ロックンローラー」になった気がしました。

そんなハヤブサのオープニングを飾るのが、「今」

疾走感のあるロックミュージック。そして、アコギ。

革新的だけど、ちゃんとスピッツなんだよなぁこの曲は。

草野さんがイントロを弾き始めた瞬間から、20年前のギラギラしたスピッツが表れていましたね。
…まぁ、当時のスピッツ知らないんですけど

2分間の短い時間に、スピッツのロックが詰まった曲ですよね。

草野さんのアコギのストローク、﨑山さんのパワフルなドラム、リーダーの躍動的なベース…
途中で三輪さんのギターソロもありますしね。

荒々しいけど、心地いい。なにも障るものがない。なんという爽快感

当たり前ですけど、スピッツにしかできないロックって感じが好きです。
エネルギッシュだけど、どこかサラッとしてる。

暑いけど、爽やかで… やっぱりいいよね。

5.HOLIDAY

5曲目も『ハヤブサ』からの一曲。

ロックな雰囲気漂うアルバムの中では、ひと際ポップな楽曲ですよね、HOLIDAY。

シャッフルビートの弾んだリズムが楽しい曲。とにかく可愛らしい。

コンパクトな、それでいて色鮮やかなアレンジが良い。

Aメロのアルペジオが好きです、可愛らしくて(それしか言ってない)。

あとは、ベースラインが素敵ですよね。楽しげな雰囲気が伝わってきて。
今回の演奏も田村さんらしい生き生きとしたプレイングが光っていました。

それから…キーボードが良いですねこの曲。

今まであんまりそこに注目して聴いていなかったのですが。

音源では気づかなかった魅力に気付けるのもライブの醍醐味ですよね。

しかし、珍しい曲が続きますね…

というか、こう考えると普段『ハヤブサ』の曲ってあんまりやってないんですね(8823を除く)。
たしかにあれはライブ向けじゃないもんなぁ、全体的に。

『醒めない』ツアーで「アカネ」を披露したときも、「リリース以来」みたいなことをおっしゃっていた気が…

でも、今回の2曲を聴いて思いました。もっとライブでやって欲しい!!

6.空も飛べるはず

「次の曲も何十年もやってないね」と三輪さん。

苦笑いするメンバー。

なんか、スピッツの会話って感じ。

続く6曲目は「空も飛べるはず」。代表曲ですね。

もちろんライブの定番曲です。

いつもライブの中盤少し前くらいで演奏しているイメージ。
これを聴くと「スピッツのライブに来たんだなぁ」と一息つけるんですよね。一旦冷静になれるというか。

「目をつぶっても弾ける」といっていた三輪さん。

当たり前ですが、世界で一番「空も飛べるはず」のギターを弾いてきた彼ですから…
今日の演奏はいつも以上に滑らかでした。脱力感

草野さんの歌い方も、ちょっとこなれた感がありました。ライブの時とはまた違った雰囲気。

気の抜けた、なのに洗練された… ベテランのなせる音楽でしたね。

なんとなく北海道を感じるという話題が出ていましたね。

草野さん「ドラマの舞台、長野だけど」

まぁ、正直これ以上言うことは無いです。

ずっと好きな、ずっと素敵な曲。

今回の演奏は、1曲1曲ゆったり進んでいます。

MC多め… そして、無の時間も長め。

わりと脈絡のない話をしたり、けっこう自由ですよね、スピッツのMCは。
もはやMCじゃなくて、雑談というか。

でも…その自然体な感じが好きなんですよ、スピッツファンは。みんなそうでしょ?

アマチュア時代にこのようなテンポ感でライブをやったことがあったそう。

草野さん「けっこう微妙だったんだよね…」

7.漣

スピッツ史上最もドラマチックなイントロ… だと思う。

7曲目は、2007年リリース『さざなみCD』より「漣」。

『さざなみCD』は、イントロが印象的な楽曲が多いですよね。
「桃」とか、「魔法のコトバ」とか。

イントロで個性を出すのは、J-POPの醍醐味というか…なんとも歌謡曲チックな感じがします。
筒美京平さんの作るイントロとか、素敵なのが多いじゃないですか。

この辺は、亀田誠治さんらしさでもあるのかな、とも。
彼の作る音楽は、「つかみ」が凝っているものが多い気がします。
東京事変の曲なんかもそうですが。

また、ストリングスのアレンジもいいですよね。

この時期のスピッツは、色鮮やかな盛り盛りのアレンジが特徴です。
『とげまる』で一気に雰囲気が変わったので、今となっては「懐かしい」音。

そんなわけで、三輪さんがイントロのフレーズを弾いた瞬間…グッとくるものがありました。

『さざなみCD』の記事でも書いたのですが、「夏」を感じさせる曲ですよね。

スピッツの描く「夏」っていいですよね。涼しげで

スイカに塩をふる、じゃないですけど…

風鈴だったり、下り坂の自転車だったり…
一瞬の涼しい風が、夏らしさを助長するというか…とにかくそんな音楽。

今回の演奏、アウトロが良かったですよね。

音源だとフェードアウトで終わるので、ライブ限定アレンジでした。

「スパイダー」とか「俺のすべて」も、ライブだと特殊アウトロになるんですよね。
あの特別感、たまらない!!

あとは、ドラム…とりわけハイハットが素敵でした。彼の繊細なプレイングにうっとりです。
ドラムがにぎやかな曲はそれだけで楽しい。

ここで『なつぞら』の話題に。

草野さんは「優しいあの子」制作時に、取材と称して十勝を訪れていたんですよね。

豚丼と「ますやパン」の名前が挙がっていましたね。

ますやパン…めちゃくちゃ美味しいんですよ。

なんというか…とにかく「パン」が美味しいんです。小麦の香りとか、ふんわりとした食感とか。

総菜パン、菓子パンともに種類が豊富なのも嬉しい。
ドアを開けたときの高揚感… パン屋って良いですよね。

全国ツアーの時もそうですが、MCでローカルな話題をしてくれると盛り上がりますよね。
あの感じ、好きです。

8.優しいあの子

そんなわけで、演奏されたのが「優しいあの子」

ついに帯広でこの曲を演奏することが実現しましたね。

ついに…というのも

『なつぞら』旋風を受け、2020年の「第92回選抜高等学校野球大会」では「21世紀枠」として、北海道帯広農業高等学校の出場が決定しました。
個人的には漫画『銀の匙』の影響も…?なんて思ったり。

吹奏楽部が「優しいあの子」の練習をしたり…初出場への期待高まる爽やかな初春…

なんと、「新型コロナウイルス」の影響で中止となってしまったんですよね
本当に悲しかったです。

流行はその後も収まらず、「MIKKE」ツアーの帯広公演も中止に。

今回の『優しいスピッツ』は、そのときのリベンジがひとつのテーマでもあり…

草野さん「絶対に演奏したい」

この曲自体は、「NEW MIKKE」の札幌公演で聴いたんですけど…
今回はいっそう来るものがありました。

リリース当時は、「随分とポップな曲だなぁ」なんて思っていたのですが。
構成もシンプルな曲ですし。

うーん…こんなに奥深い曲だったんだ

こういったシンプルな曲ほど、スッと伝わってくるものがありますよね。

壮大なイントロ、素朴な歌詞、美しいコーラス…

「ル~ル~ル~」を聴くたび、北海道の空気を感じられます。

故郷が、懐かしくなりました。まぁ、私の故郷は帯広じゃなくて札幌なんですけど…

9.夕焼け

日も傾き、空が黄金色に染まる頃…9曲目に演奏されたのは「夕焼け」

なんというか…渋い!

ナンバリングアルバムではなく、スペシャルアルバム『おるたな』からのセレクト。

正直言って、この曲…あんまりコレといった印象が無かったんですよね…
「良い曲だなぁ」くらいにしか思っていませんでした。

今回初めて、生演奏を聴いて(生で聴いたわけではないけど)思ったのが…

この曲… 面白い!!

面白い、というか非常にユニークな曲だなぁ、と。

まず、ドラム

スネアの音が、なんともタイト。
こんなに柔らかい曲なのに、こんなにキレのある音だったんだ。
そして、それが良いアクセントになっている。

お次は、ギター。

ギターも非常にクールで、キレッキレ
もっと、丸い音なイメージだった。

なんとも「おるたな」な感じ。
オルタナティブロックの鋭いサウンド…だけど柔らかい。そう、「おるたな」。

ギターソロの躍動感も凄い!

今までは「静」のイメージが強かったのですが、ライブで聴くと意外と「動」。
というか、シンプルなアレンジの中で静と動が繰り広げられている…なんとも不思議な曲。

印象がガラッと変わりました。もっとじっくり聴いてみよう…

窓から指す西日が幻想的でしたね。この辺は「映画チック」というか、映像作品としての面白さがよく感じられました。

ライブ映像とはまた違った魅力がありますね、『優しいスピッツ』は。

10.雪風

「優しいあの子」と並んで、北海道の風を感じさせてくれる曲。

北海道・富良野市を舞台にしたドラマ『不便な便利屋』のエンディングテーマ。
スピッツ初の「雪ソング」なんていう言われ方もしますね。

冷たくも温かい北海道の雪景色を感じさせる、ゆったりとしていて煌びやかなアルペジオ。

力強いベースとドラムが、北海道の壮大さを感じさせてくれます。

この曲…いいですよね。

2016年の「醒めない」ツアーの札幌公演で聴いて以来、もっと好きになった曲です。

ホールじゅうに鳴り響く伸びやかなサウンドが、とっても幻想的だったのを覚えています。

ちなみに、翌年の「3050」ツアーの札幌公演でもMC内で草野さんが弾き語ってくれたんですよね。
「北海道なのに、この曲セットリストに入れてなかったな」と。

メンバーにとっても、雪風は「北海道」の曲なんですね。

ゆったりとしているのに、力強い。

エネルギーに満ちた曲ですよね。ライブで聴くとなおのことです。

サビの澄んだ高音ボイスがグッと来る。
冬のツンとした冷たい風を感じます。まさに雪風。

この日のリラックスした空気から生まれる伸び伸びとした演奏が、より生き生きとした躍動感を生み出していました。

もしかすると演奏してくれるかな?、とは思っていましたが、いざ聴くとやっぱり嬉しい。

だいぶ日も傾いてきましたね。

11.大好物

ここで演奏されたのが、新曲「大好物」

クージーのキーボードから始まる、明るいナンバーですね。

なんと、レコーディングやリハーサル以外で演奏するのは初めてとのこと。

草野さんは「ぎこちない演奏…」と仰っていましたが、どうでしたかね?
音源とは違った良さが出ていたと思います。

でも確かに、今後の演奏でもっともっと魅力的なものになっていく気もする…?

今回、この曲を聴いて思ったのが

「ちゃんとスピッツのロックだな」

ということ。

「優しいあの子」同様…というか、それ以上に、
リリース当時は、この曲あんまりしっくりこなかったんですよね。

ひとつ前のシングルが「紫の夜を越えて」だったので。

イントロといい、サウンドメイクといい、
「ちょっとポップすぎない…?」と。

ですが、今回4人(+クージー)の演奏を聴いて、節々から「スピッツらしさ」を感じることができました。

﨑山さんのハリのあるドラムだったり、Aメロのギターだったり…

ライブで聴くと、しっくり来る。

三輪さんも言ってましたね
「はじめてだけどさ…結構しっくり来るよね」と。

12.未来コオロギ

ここからガラッと雰囲気が変わりました。

12曲目に披露されたのは『小さな生き物』より「未来コオロギ」

外もすっかり暗くなりました。

一気に緊張感のある空気が漂い、画面も1:1に

この構図、今っぽいですよね。

インスタなんかも1:1だし。
「Lemon」のMVも1:1ですよね、そういえば。

最後のトーク映像で、松居大悟監督が

この構図にすることによって「メンバーひとりひとりにフォーカスを当てることができる」

みたいなことを仰っていました。

今回の映像作品のテーマは「覗き見」

5人のセッションをコッソリ覗いているそんな感覚に陥れる演出が粋でした。

さて、未来コオロギ。

良いですよね~この張り詰めた感じ

『小さな生き物』を購入し、この1曲目を聴いて衝撃を受けました。
スピッツ、かっけぇぇ!!

この曲の醍醐味のひとつでもある鋭く甲高いハードなスネアが、今回の演奏でも再現されていましたね。

ロックでありながら、ちょっとダンスミュージックぽさもある…例えていうなら高橋幸宏さんのような…
どこか無機質な、独特なプレイング。

非常に粒だったサウンドですよね。ドラム以外も。

草野さんのミュートギターとか、キーボードとか。

「さらさら」といいこの時期のスピッツは非常にクールでした。

そして、最近も。

今のスピッツが演奏するとそのクールさがひと際感じられてよいですね。

13.ガーベラ

前曲「未来コオロギ」に続いて、またもクールな楽曲。

2002年リリース『三日月ロック』より「ガーベラ」

この曲…かなり好きな曲です。

あんまりスピッツぽくない気もしますが、そこも含めて。

なんといってもイントロから続く打ち込みのドラム。

途中から加わる﨑山さんの生ドラムもカッコいいですよね。

鋭いストロークと、三輪さんのギラギラとしたアルペジオがなんともロック。

『ハヤブサ』『三日月ロック』あたりのスピッツは、オルタナティブなアプローチが目立ちます。

スピッツというか、当時のロックシーン全体を見ても、ですね。

90年代の後半にくるりやナンバーガール、スーパーカーといったオルタナティブロックバンドが活躍し、2000年には彼らに影響を受けたバンドも数多く登場しました。

打ち込みサウンドを取り入れたミクスチャーなロックも、2000年代のトレンドですよね。

そんな中で生まれたのが「ガーベラ」。

90年代のスピッツでも、最近のスピッツでも味わえない、このハードでダークな雰囲気。

今回の演奏では、スピッツのいろいろな姿が観れて嬉しいですね。

時代の壁を越えた、そんなライブ。

14.名前をつけてやる

オルタナティブな雰囲気の曲が続きます。

来たる14曲目は2ndアルバム『名前をつけてやる』より、表題曲「名前をつけてやる」

草野さんが「ライド歌謡」と称するアルバム。

メロディーが光るポップな要素に、シューゲイズのノイジーなサウンドを合わせた独特の世界観ですよね。

「このアルバムが一番好き!」というスピッツファンも結構いるはず。

この曲も例外ではなく、ヘビーでサイケデリックなギターサウンドが鳴り響きます。

独特の跳ねるようなリズムも良いですよね。ちょっと気だるい、ダラっとしたリズム。

なんというか、聴けば聴くほど好きになる…いわゆる「スルメ曲」ってやつですよね。

なんか、こう…今のスピッツがライブで披露すると

荒々しさが薄れて、ちょっと都会的な感じになるのが面白いですね。

昔の曲を今のスピッツが演奏する、これもライブの醍醐味です。

スピッツの変わりゆく楽しさと、変わらない美しさが味わえる… 
うーん、やっぱりライブっていいものだなぁ。

ちょっと、「NEW MIKKE」のときの「プール」を思い出しましたね。

あの時のプール…良かったよなぁ。ホールに渦巻くフワフワとした空気が心地よかった。
音楽というのは「空気」を変えるんですよね。

たぶんあの瞬間、会場の温度も2,3度低くなっていたはず。

15.運命の人

軽快なドラムから始まる、最高のポップナンバー。

98年リリース『フェイクファー』収録の17thシングル「運命の人」

シングルよりもキーが半音高い、アルバムバージョン。

ライブでも定番の楽曲ですね。

この曲の見どころはたくさんありますが…

個人的に一番好きなのが、イントロとAメロのアコギ!!

「ヒバリのこころ」なんかもそうですが、草野さんのアコギプレイ…素敵ですよね。

圧倒的なリズム感と、躍動感。

草野さんはボーカリストであると同時に、一流のギタリストなんです。

あとはサビの三輪さんのギター。

なんともメロディアスなアレンジ。

サビのメロディーが結構ゆったりしているので、このギターのメロが華やかさを演出しているんですよね。なんともポップ!

それから、キーボード!!

この曲は結構キーボードが前に出ていますよね。90年代のスピッツらしい。

賑やかなアレンジが、とにかく楽しい。

ライブだと尚更ですね。なんて幸せな空間!

アウトロの余韻が残ったまま… これにてシークレットセッションは終了。

草野さん「どうもありがとう、スピッツでした」

さいごに

この後に、収録風景をバックに松居監督の解説と、メンバーとの対談が上映されました。

北海道のグルメを味わいながらのトーク…
是非、ノーカットで聴きたかった…!

草野さんも仰っていましたが、「映像作品」としてのバランスが美しかったですね。

ドラマチックな演出でありながら、自然な仕上がり。

ライブ映像とも、映画とも違った独特な面白さがありました。

あとは…メンバーの北海道への想いも聞くことができ、嬉しかったです。

珍しい会場でライブをやることの面白さも語っていたのが印象的でした。
アマチュア時代のライブの話もしてくれたし。

演奏はもちろん、こういった話を「盗み聞き」できたのは、ファンとして嬉しい限り。

今回は、MCでもアマチュア時代の話題があったり、懐かしい曲をやってくれたり…

30年以上にわたる、あらゆるスピッツを体感できる

一言でいえば「時間旅行」をしている気分でした。

スピッツの魅力を再認識できた、最高の100分。
まだ、体感していない方は、是非…映画館へ足を運んでほしいものです。

コチラも必見!

過去のインタビュー記事や写真を集めた書籍Part2。

2000年代以降のスピッツがまるわかりの、ファン必見の1冊です。

是非今回のセトリを聴きながら…

コチラは、『ひみつスタジオ』と同時販売の歌画本

全体的にファンタジックで可愛らしい歌詞が光る本アルバムの13曲に寄り添った13の物語。

junaida氏が描く、可愛くてちょっぴりフシギなイラストは、スピッツの世界観にもぴったりですよ!