以前「J-POPの名盤30枚」という記事で個人的に素晴らしいと思う音楽アルバムを30枚厳選して紹介させていただきました。

コチラの記事ですね

この記事では、自分が好きなことはもちろん、J-POP…つまり「ポピュラーミュージック」であることを前提に比較的知名度の高い作品を選出させていただきました

しかし!

音楽というのは知名度が高い=良いモノとは限りません。
世の中には「隠れた名曲」と呼ばれるものや「もっと売れるべき」と言われるミュージシャンが沢山居るのです。

「あえてメジャーシーンには行かない」とか、そういうスタンスのアーティストも存在します。

そんなわけで!
前回の記事では紹介しきれなかった、あるいは、知名度を考慮して外した作品を前後編の2回に分けて大公開!!

全編である今回は、2000年以降にリリースされた作品から9枚をピックアップ

※前回の記事も併せて、アーティストかぶりが発生しないように選出
※シングル・ベスト盤等を除くアルバムが対象

1.サカナクション『834.194』(2019)

1枚目…というか31枚目はコチラ。

北海道を代表するロックバンド・サカナクションから7thアルバム『834.194』

「30選」の方でも「サカナクションを入れたい」と思っていたのですが、そちらでは選ばず。

理由としては、サカナクションのアルバムから1枚を選ぶのが難しかったから。

正直同じような理由で外したアーティストは結構います。そういったアーティストを中心にコチラでは紹介することになりそうです。

さて、数あるサカナクションの名盤の中から『834.194』を選んだ理由は、ポピュラーミュージックとしての面と、ロックバンドとしての両面を最も感じられる1枚だと思ったからです。

サカナクションは、メロディー重視の「歌モノ」ポップスと、サウンド重視のロックミュージック、この二つの両立がひとつの売りだと思います。

本作は2枚組アルバムで、1枚目には『忘れられないの』『新宝島』といったキャッチーな歌謡曲が、2枚目は「ナイロンの糸」などいわゆるチル系の曲を中心に収録されています。

新宝島の存在感たるや…でも、他の楽曲も負けず劣らず。このアルバムは、強い
個人的オススメは「陽炎」ですね。ハードなサウンドが痺れます。

サカナクションの「ミクスチャー・ロック」を思う存分楽しめる1枚だと思います。

次作『アダプト』も凄まじかったですね。サカナクションは進化が止まらない!!

2.SEKAI NO OWARI『ENTERTAINMENT』(2012)

続いて紹介するのは、サカナクションと同じく2000年代を代表するバンド「セカオワ」ことSEKAI NO OWARIより『ENTERTAINMENT』

セカオワも是非!との想いから、ついに選出。私たち世代(1999年生まれ)にとって、やっぱりセカオワは青春…というか「あの頃」を連想させるバンドです。

セカオワの音楽性に関しては正直賛否両論ある気もしますが(あれはそもそもバンドと呼べるのかとか)、個人的には、そりゃもう偉大なミュージシャンですよ。だっていまだに「セカオワ」っぽいバンドがいないじゃないですか。

圧倒的な「らしさ」を確立したアーティストはやっぱり素晴らしいですよ。

そんな彼らから今回は『ENTERTAINMENT』を。

正直1番好きなのは1作前の『EARTH』、一番有名なのは次作『tree』。
だからこそコチラを選びました。

世間一般の「ファンタジックでキャッチーで踊れる”セカオワ”」と、私の好きな「フワフワどんよりした”世界の終わり”」の両方を味わえる!

いきものがかり『My song Your song』のときにもお話しましたが、「転換期」を感じられるアルバムが好きなんです。なんか、葛藤とか苦労を感じられて。

オススメ楽曲は「不死鳥」

セカオワならではのファンタジックな視点で書かれたラブ・ロマンス。
そして、アレンジがオシャレ。セカオワにしては結構ロック色が強い曲です。

ベスト盤といっても過言ではない、非常にカラフルな1枚です。

3.相対性理論『シフォン主義』(2008)

サカナクション・セカオワ等、2000年代のミクスチャーロックを語る上で欠かせないのが相対性理論

相対性理論は、ボーカル・やくしまるえつこを中心に結成されたロックバンド。

甘くミステリアスな歌声と、煌びやかなギターサウンド、独創的なアレンジがなんともクセになるバンドですね。

(やくしまるえつこさんの歌唱についてはコチラの記事でも紹介しています。)

彼らの音楽は個性的であるがゆえに、非常に中毒性が高いんですよね。一度ハマったら抜け出せない危うさがあります。

そんな相対性理論から、1stアルバム『シフォン主義』を選出。

収録曲はわずか5曲

ただ、この5曲の持つエネルギー、というか攻撃力が驚くほどに高い。

開幕「スマトラ警備隊」の刺激的なイントロ。次曲「LOVEずっきゅん」の圧倒的なサビのメロディー…
とにかく密度が高い

楽器が多いとか、攻撃的なサウンドとか、そういうわけではないのですが、余白までもが「相対性理論」らしい

個人的には3曲目の「夏の黄金比」がお気に入り。比較的早いテンポで全体的に流れるように進んでいくのに、ボーカル(とコーラス)だけが非常に静的。
彼らの音楽には時空を歪ます力があります。

フルアルバムではない、ということを考慮して本編での紹介は断念…
とはいえ、J-POP史に残る名作であることに変わりはありません。

4.東京事変『スポーツ』(2010)

2000年代以降のロックに多大な影響を与えた伝説的バンド・東京事変。

各メンバーが作詞作曲、さらには音楽プロデューサーやライブプレイヤーとして活動する彼らにしかできない、多種多様で独創的な世界観は、圧巻ですね。

そんな東京事変からは4thアルバム『スポーツ』を選出。

名作ぞろいの作品群の中でも「スポーツが至高」と評価するファンが多い気がします。
とりあえずスポーツを聴いとけ、みたいな。

これには私も共感ですね。

東京事変のことをいまいち知らない、という人に勧めるとしたら『スポーツ』ですね。

正直、一般的には「群青日和」とか「透明人間」とか、曲はわかるけどアルバムは聴いたことがないみたいな人が多いと思うんですよね、東京事変って。

名前は知ってるけど、そんなに凄い人達なの?そもそもどんなバンドなの?みたいな。

それにお答えするのがこの『スポーツ』というアルバムなのかな、と。

最も彼らの凄さが、彼らの魅力がわかりやすく表れている作品だと思います。

それまでの自由な作品づくりはそのままに「スポーツ」というひとつのテーマの上で繰り広げられる「統一感」が良いんですよね。
それに伴って結構サウンドやアレンジでは挑戦的な部分もあって。

とにかく緻密で繊細な音楽なのに、非常に耳馴染みがよく、親しみやすい。

私がよく口にする「大衆」と「マニアック」のバランスが絶妙
だから、ファンからの支持はもちろん、はじめての人にも勧めたい作品なんです。

オススメは「閃光少女」です。3分間に詰められたエネルギーが気持ちいい!!

5.くるり『TEAM ROCK』(2004)

1997年にデビューしてから、日本のロックシーンを支え続ける名バンド・くるり。

「くるり」という名前を聞いたことがある方は少なくないはず。

でも、よくあるのが「くるりって何歌ってる人?」

そう、バンド名に比べ楽曲の知名度がやや劣る。
いわゆる「代表曲」が無い…というか、そういうバンドです。

そもそもくるりは時期によってメンバー編成がコロコロ変わったり、音楽性が大幅に変わったり、と変化の絶えないバンド。

「くるりらしさ」みたいなものが、あまりないんですよね。
そこが「くるりらしさ」だったりもするんですけど。

そんなわけで、くるりのアルバムから1枚を選ぶのって難しいんですよ。それはくるりのある一面でしかないので。

でもせっかくなら!ということで今回は3rd『TEAM ROCK』を選出。

このアルバムは、くるり…というか当時のJ-ROCKを象徴するような作品かな、と思います。

同時期にデビューした、SUPER CAR中村一義といった面々が挑戦した「エレクトロ×バンドサウンド」という方向性。若い世代のみならずスピッツやミスチルといった当時すでに売れていたバンド達も巻き込んだムーヴメントとなっていました。

その動きの中で生まれたのが「ワンダーフォーゲル」「ばらの花」…そしてそれらが収録されたこの『TEAM ROCK』です。

ノリの良いビートなのにどこか静的だったり、独特の時空のゆがみを感じる作品ですね。
キャッチーなようで、ひねくれている感じ。

好き嫌いが分かれる音楽ですが、後のミクスチャーロックにも繋がる存在感ある一枚です。

6.RADWIMPS『RADWIMPS4~おかずのごはん~』(2006)

2000年代のJ-ロックを代表するバンドのひとつ、RADWIMPS

近年では、『君の名は。』をはじめとした映画監督・新海誠とのタッグが話題になっていますね。

ラップやハードロック、ポストパンク的なアプローチなど、くるりにも引けを取らないバラエティ豊かな楽曲群が人気のRADWIMPS。

新海作品でも、爽快なギターロックからピアノを中心とした壮大なバラードまで、多種多様な楽曲が使われています。

作品を重ねるたび、バンドの新しい姿をたくさん見せてくれる…まさにミクスチャーロック!

日本のミクスチャーロックを牽引する彼らのアルバムからは『RADWIMPS4~おかずのごはん~』を紹介。

ラッドをあまり知らない人からすると、「そんな昔から居るの?」と思われるかもしれません。

でも、「この頃が一番好き!」「このアルバムから入りました!」みたいな方が多いんじゃないでしょうか。

代表曲「ふたりごと」「有心論」をはじめ彩り豊かな楽曲の数々。
多岐にわたるRADWIMPSの魅力を詰め込んだ、ベスト盤のような1枚です。

ラッドらしいサウンドメイクに乗せた、ボーカル・野田さんの繊細でユニークな歌詞が光ります。
ジャンルを超えた多様な音楽が魅力のバンドではありますが、そこには確かに「ラッドらしさ」があるんですよね。

このアルバムを聴くと「あぁ、ラッドって良いな…」と思えるんですよね~

はじめてRADWIMPSに触れる人にはもちろんオススメですが、ファンからの人気も高い、間違いなしの名盤ですね。

7.Cymbals『That’s Entertainment』(2000)

1980年代の後半に登場し、日本のサブカル界を牽引した「渋谷系」ムーヴメント。

その流行が縮小された90年代以降も「渋谷系」は形を変えながら音楽界を盛り上げ続けています。

中でも90年代後半に登場し、その後の世代にも大きな影響を与えたのがCymbals(シンバルズ)というバンド。

これまで紹介したアーティストに比べるとややマイナーかもしれません。
でもいいんです。そういったバンドにこそ焦点を当てていきたい!

フリッパーズギターやピチカートファイヴの流れを汲みながらも、ジュディマリなど、当時のパワーポップバンドのエッセンスを取り込んだ「ポスト渋谷系」の代表格として、(一部の音楽ファンの間で)人気を集めました。

アルバムを数枚リリースしたのちバンドは解散。現在、メンバーはそれぞれソロでご活躍なされています。

ブラックミュージックの要素を取り入れた複雑なコード進行。そこに乗せたキャッチーで可愛らしいメロディー。パンキッシュなサウンド…

これらの要素は2000年代以降、アニソンやアイドルソングといったサブカル音楽に色濃く受け継がれています。

Negiccoとかね。

そんなCymbalsからは1stアルバム『That’s Entertainment』を選出。

RALLYやMy Brave Faceといった人気曲を収録。
オシャレだけど、ちょっぴりお茶目な独特の世界観が光ります。

8.さよならポニーテール『魔法のメロディ』(2011)

Cymbalsの登場から更に後、「”音楽”と”魔法”」をテーマに掲げ登場したのが、音楽グループ・さよならポニーテール

結成以来、リアルでのライブは行わず、ネット上での活動を中心に行っています。

デビューして10年以上経った今もその素性はまったく明かされていません
謎の多いグループです。

が、そのハイレベルな楽曲と唯一無二の世界観は間違いなくホンモノ!

「渋谷系」を彷彿とさせるフォーキーでノスタルジックなサウンドと、打ち込みや多種多様な楽器を用いたポップなアレンジが、独特な味わいを生み出しています。

ボーカルメンバーの甘くフワフワとした歌声も心地よいですね。
まさに「魔法」のような幻想。

そんな「さよポニ」からはデビュー作『魔法のメロディ』を選出。

さよポ二の中では比較的素朴なアレンジが多い初期作。彼女たちの魅力がストレートに伝わるアルバムです。

シティポップの要素を取り入れつつも、スタイリッシュすぎない歌謡曲のような安心感があります。
なによりもメロディーが美しい!

おすすめは「ナタリー」という曲。
多人数のボーカルならではの、起伏の激しい、けれども心地よいメロディーがなんとも味わい深い。
「AC部」が手掛けるユニークなアニメーションもクセになります。

ネット発の音楽集団。10年以上前からそのスタンスを守り続ける…時代の先取りといった感じがしますよね!

9.星野源『POP VIRUS』(2018)

今回最後に紹介するのは、星野源の『POP VIRUS』

「SUN」で大衆からの注目を得て以降、社会現象にもなった「逃げ恥」主題歌「恋」をはじめ数多くの人気曲をリリース。まさに国民的ミュージシャンですね~

そんな星野源の代表作ともいえるのが『POP VIRUS』です。

「恋」「アイデア」「Famili Song」といった人気曲をはじめ、彼のクリエイティブな感性が光る多種多様な楽曲が収録されています。

長岡亮介やカースケさんといったおなじみのメンバーをはじめ、玉田豊夢、STUTS、Snail’s House…といった一流ミュージシャンがレコーディングに参加。

なんと、レジェンド・山下達郎もコーラスで参加しているんですよね。豪華な顔ぶれです。

前作『YELLOW DANCER』から、ブラックミュージックの要素を更に強めた今作は、大衆性の中に彼の持つディープでマニアックな音楽センスが色濃く表れています。

ポップでキャッチーなアレンジ。誰もが口ずさめるメロディー。
けれども、一癖も二癖もある星野源ワールド。

聴けば聴くほどその魅力に引きずり込まれる…まさにPOP VIRUS。

オススメは、朝ドラ「半分、青い」の主題歌「アイデア」。

軽快なリズムの、なんともキャッチーなポップスですが、一筋縄ではいかない意欲的なアレンジが特徴的です。
何度聴いても飽きさせない、アイデアに満ちた一曲です。

おわりに

いかがだったでしょうか

東京事変やRADWIMPSなど、「なんで本編で選ばなかったんだ」というような大人気バンドから、Cymbalsやさよならポニーテールといったサブカル色強めのミュージシャンまで、けっこう幅広い選出ができたと思います。

とはいったものの、なんとなくバンドが多くなってしまいましたね…これは私の好みの問題です。ご了承ください。

最近で言うと…ヒゲダンやVaundyも迷ったんですけどね。藤井風とか。

良い作品が沢山ありますが、今後の躍進に期待を込めて今回は見送りました。

もちろんこれまでに紹介したミュージシャンも、素晴らしい音楽を届けてくれることでしょう。
楽しみが止まりません。

そんなわけで、J-POPの個人的名盤・追加20枚…前編でした。

次回は2000年以前のアルバムから11枚を紹介。お楽しみに。