書きかけの小説を発掘した件

オリジナル小説

PCデータの整理をしているとき、書きかけの小説を発見しました。

最終更新の日付を見る限り、どうやら2年ほど前に書いたもののようです。お恥ずかしながら、当時のことを全く覚えていませんでした。本当にこれは自分が書いたものなのかと疑ったほどです。

途中で飽きてしまったのか、なにか書けなくなる理由があったのかはわかりませんが、当時の自分は執筆途中で投げ出してしまったようです…

今となっては、記憶にない以上(読み直してなんとなく思い出しつつもあります)続きを書くことは難しいですが、せっかくなのでここに掲載(供養)させていただきます。

以下、本文


 ――だれかの家の塀の隅、古い電柱のそば、痩せた垣根の匂いのもとに、小さな花が咲く。
花の命は短い、にもかかわらずその花は・・・・・・選んだ人生か、選ばれた人生か、かえることのできない運命を背負い、それでも花は咲く――

2-B 32番 舘犬 薺(タチイヌ ナズナ) その1

 私は自分に自信がない、何をやっても笑われる。それでも昔は、持ち前の妙な明るさで、気にすることもなくのんびり生きてきた。けれども、今は違う。昔のように明るく呑気には生きていけない。別に、不可能なわけではないのだろうが、呑気に振る舞うことを恐れているのだろう。そんな弱気な自分は今までよりも惨めに思えてくる。

 私は大都会の郊外に佇む高校に通う2年生、まあ、いわゆる「JK」というヤツだ。中学校の2年生くらいから高校生活に憧れを抱いていたわけだが、実際になってみると想像していたような華やかさはそこまでなく、むしろ自由気ままな中学生に戻りたいと思うようになった。格段に難しくなった勉強。特に、完全なる文系だった私にとって数学というものは何よりも辛い。こんなものなんの役に立つんだと、投げたしたこともあったが、周りの生徒の目を眺めては、なんだか自分も頑張らなければいけない気がしてくる。私の成績は常に下から数えるとすぐで、自分でもなぜこの中堅校に入ることができたのかが不思議なくらいだ。文系といえども別に国語や社会科が得意なわけではなく、単に理系教科が苦手なだけである。それでも、中学生時代の成績は真ん中くらいには留まっていた気がする。高校生になり格段に勉強量が減ったのは明らかだ。高校に入ってからはどうしても勉強する気にはなれなかった。私には夢がなくやりたいことも特にないので成績は悪くても良いと思っている。ただ、私に友達ができないのはこの性格と成績の悪さだということくらい自分でもわかる。高校生活を有意義なものにするのに友人はつきものだ。豊かな高校生活と将来のために勉強をするのか、否か。答えの見えきった問だったが、答えを出すことさえ面倒に感じてしまう。

 こんな私にも少ないながら友達はいる。通っていた中学校に近いこともあり高校には中学時代に同じクラスだった人が結構いる。そのなかには小学生のときから一緒の人もいた。明るく呑気だった小学生の私には友達と呼べる人が少なくなかった。かつての自分を知っている人は今の私に違和感を覚えながらも明るく接してくれる。その人たちは私の数少ない友達だ。そして、忘れてはいけない大切な人がもう一人いる。彼女は私の話をいつも真剣に聞いてくれる。私は放課のチャイムを聴きながら廊下を一人歩きはじめた。

高校事務員兼スクールカウンセラー 白詰 すみれ (シロツメ スミレ) その1

 私は、昨年この学校に配属された新米事務員だ。とはいえ、この学校には既にベテラン事務員が4人もいるので私の出る幕は少ない。幸い、カウンセラーの資格を取得していた私は4人の上司とたくさんの教員に仕事を教わりながら何かあればスクールカウンセラーとして生徒達の悩みを聞くことになった。しかし、思っていたより生徒達は大人に頼ろうとはしていないようだ。相談の依頼はほとんどなかった。

 社会人としての初めての職場となったこの学校にきて2年がたった今、事務員になりたてのときには考えられなかったが、いつしかカウンセリングが本業となっていた。というのも、昨年の秋、良いのか悪いのか常連客が出来てしまったのだ。その少女は相談を依頼してきたわけではなかった。ただ、廊下で見かけた彼女は誰かの助けを求めているように、私には見えた。彼女の寂しげな表情は引っ込み思案で暗かった学生時代の私のものによく似ていた。声をかけた私に、最初は戸惑いを隠せなかった彼女だったが、何度も話をするうちに本当に昔の自分と話しているように感じ、彼女もまた私に心を開くようになった。日々の生活について、人間関係、さらには関数を教えて欲しいとまで言ってきた。学生相手の仕事をしている以上、どの生徒も同等に接しなくてはいけないことくらいわかっているつもりだったのに、どうしても彼女は特別な気がしてしまった。彼女はほぼ毎日放課後に私のもとに来るようになっていた。そして、今日も……

16:07 1F 相談室

「こんにちは、今日も来たのね。」

「はい、先生。ここにいると気持ちが楽になるんです。」

「いつもの二人と帰らなくて良いの?あの二人今日は部活ないんじゃなかった?」

「それが、他の部と練習日が入れ替わったらしくて。それに家に帰ってもやることがないので。」

「なにもやることがないって……もう、テストも近いんだから……」

「それなら大丈夫です、今回は数学がそこそことれる気がするので。」

「ほんとに~?ならテスト楽しみにしてるわ。」

「あら、あなたの他に誰か来たみたい。」

「私は入ってもらっても良いですよ。暇潰しに来ただけですから。」

「それじゃあ……どうぞ。入ってください。」

「では、私はこの辺で、さようなら。」

「はい、舘犬さん、さようなら。」

「待たせちゃって悪いわね、あなたは……」

(今の人って確か同じクラスの……)

2-B 27番 菊川 華 (キクカワ ハナ) その1

 私の名前は菊川 華。都内の高校に通う普通の高校生。私は親の都合で小学6年生のときに東京に引っ越してきた。転校して直ぐ修学旅行に行くことになったし、最初はクラスメイトと距離があった。けれども直ぐに輪にはいることが出来た。私は東京という大都会に興味があったし、皆、私が住んでいた北海道に興味があったようだ。休み時間の話は絶えることがなかった。私はそのまま輪の中で卒業を迎えた。中学もほとんどの人と一緒だし、これからも何も心配は要らないと思ってた。

 ところが、春休み中、私は気づいてしまった。中学入学にあたって最初にして最大のピンチが訪れてしまう。私は制服が嫌だった。制服が嫌、というかスカートが嫌なのだ。私は個人の問題でスカートを履いたことがない。親も履かせないようにしていた。ところが中学の制服は濃いめの紺のブレザーに青っぽいリボン、そして、裾にグレーのラインが入ったスカートだ。私は親と相談した結果、ズボンを履くことにした。スカートが嫌いな女子は少なくないらしく他にもズボンを履いた女子生徒を入学式で見つけた。とはいえ、やはり周りの目は気になってしまう。口に出して馬鹿にするものはほとんどいなかったが、クラス内で浮いてしまったのは確かだ。私はただただあの日を恨んだ。それでも時間が経つにつれ周囲の人間たちは気にしなくなっていた。私は運動こそ出来なかったが勉強面でそれを補えた。そうして私は中学校生活も無事に終えた。

 中学を卒業して、私は家から少し離れた高校に入学した。私は週2で塾に通っていたし、その上、近くのライバル校が新校舎になったことで人が流れたことにより、何の心配もなく受験には合格した。今回もまた、ズボンとともに。

 そして現在、2年生になった私にはなりたい職業がある。親の話によると私は昔、警察官になりたかったらしいが運動ができない今、それは夢から幻になった。それでも誰かのためになりたいというおもいは変わらず、話すことが大好きな私はカウンセラーを天職だと思っている。私は今さらながら自分の学校にカウンセラーがいることを知り、その人の元でカウンセリングを学ぶことにした。


ここで執筆は止まっています。

一体この後どのような展開になる予定だったのか。今となってはわかりません…

いま新たに一から続きを書いてみるのも面白いかもしれませんね。

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